『世界で一番かわいそうな私たち』に込めた想いと、これからの話。
書きたいことは本編に書くべきだと思うので、あとがきではふざけよう。という信条で日々、ふざけているわけですが、わざわざnoteを見て下さるのは作品に興味を持っている方だと思うので、色々と書いてみます。
『世界で一番かわいそうな私たち』も無事に完結しました。三部作でプロットを組んでいましたので、ラストシーンまで予定通りでしたし、書きたかったことは書き切っています。なので率直に言って「セカンドシーズンが読みたい」という声の多さに驚いています。まあ、僕があとがきに「本編の一年後を舞台に、セカンドシーズンが始まる可能性も無きにしも非ずです」と書いたからですけど……。
というわけで。セカンドシーズンについて考えていることも含めて、せかわたについて、つらつらと書いてみたいと思います。
本作には3つの表向きのテーマがありました。
1:綾崎史上最大スケールのミステリー
2:教師と生徒のミステリー
3:世界で一番かわいそうな夫婦
そして、最終巻で4番目、秘していた「小説家のこと」という最後のテーマが入ってくる構成になっていました。
何年も前から書きたいと言っていた通り、僕が一番書きたかったのは、3番の<夫婦の物語>です。なので最終巻を読んで頂けたら分かる通り、このシリーズで一番やりたかったことは既に書き切っています。「その後を! 夫婦のその後を!」という方もいると思いますが。僕は、かわいそうな夫婦を書きたかったし、書きましたので。
そして、1番も書き切っています。ただ、2番については、静鈴荘という舞台がある限り、幾らでも書けます。基本的にこのシリーズは、2番が主軸となって進んでいく物語でしたから。
講談社タイガで以前に書いた『君と時計』シリーズについては、100万部売れても続きが書けない物語でした。タイムリープがテーマだったので、あれで完璧に話が終わっていますから。
http://news.kodansha.co.jp/20160217_b01
ただ、『静鈴荘』シリーズについては、書こうと思えば続きを書けます。実際、あのエピローグの後、皆がどうなっていくかも決まっています。どのくらい決まっているかというと、セカンドシーズン大枠のあらすじは最終巻発売時点で8割方決まっていました。
あれ、じゃあ、書くの? と思われたかもしれませんが、そんなに単純な話にはならないのです。というのも、セカンドシーズンが始まるとしたら、次の主人公は詠葉になると思うからです。そして、詠葉が主人公になるのであれば、(ハッピーエンドかバッドエンドかは分からないけれど)彼女に対して100%納得出来る結末を用意してあげないといけません。
既にセカンドシーズンのストーリーは用意出来ています。しかし、今は<完璧な結末>を描けていません。なので、あとがきにはあんなことを書きましたが、正直なところ、セカンドシーズンは書くつもりがありませんでした。ただ、<教師と生徒のミステリー>は、10年間教職をやっていた僕が、これからも書くべき物語かなという気もしていました。
というのが、6月2日、サイン会前日までの話でした。
大阪でのサイン会には、担当編集と新幹線で向かうことになっていまして、新作のプロットも煮詰まっていたので、道中の話題にしようくらいの軽い気持ちで、その日、僕は8割完成していたセカンドシーズンのプロットを担当氏に送り、珍しく日付が変わる前に就寝しました。
ところが、身体が昼寝だと勘違いしてしまい、一時間くらいで目覚めてしまいます。まずい。まずいよ。明日はサイン会なのよ。寝なくては駄目! と思えば思うほど覚醒していき、担当さんに送ったプロットのことを考え始めてしまいました。そして……。
時々、あるんですけど。
て言うか、いつもこれが起きてくれれば苦労しないんですけど。
どう考えても、これしかないという完璧な結末が天啓のように下りてきてしまったんです。自分で言うと馬鹿みたいですけど、僕、ノーブルチルドレンシリーズの最終話(4巻『愛情』)って、完璧だと思うんです。ノーブルはもともと新人賞の投稿作で、その原稿をデビューしてから当時の担当編集に見せたところ、「悲し過ぎて何を楽しめばいいか分からない」と言われ、骨子から作り直しています。そして、あのラストシーンを思いついたからこそ、絶対、面白いじゃん! シリーズでやりたい! となった物語でした。
なんというか、あの時のアイデアと同じレベルで、もうこの結末しかないじゃん。これ以外、絶対ありえないじゃんと思うアイデアが浮かんでしまったので、深夜三時に起床して、そのままプロットを作り直し、担当編集に再送しました。(で、そのまま四時キックオフのチャンピオンズリーグを見てから、サイン会に出発しました)
翌日というか、同日ですけど、新幹線で担当さんと喋ったんです。
深夜のテンションで書いたものって、翌日見直すと、あれ……ってなることが多い上に、ライターズハイみたいになっていたので、これ、敏腕編集的にはどうなんだろうと、おそるおそる感想を聞いたんですけど。
「完全にこれしかないですね。むしろ綾崎さん、これ、1巻の時から考えていて、私に黙っていましたよね?」
と、まさかの疑いの目を向けられるという結果に終わりました。セカンドシーズンをやるとしたら、この結末しかない。というより、せかわたの続きを書くなら、これしかないという結末だったからかもしれません。
というわけで、今はそんな状態でいます。
大まかなあらすじと結末は完成していて。でも、物語を書き進めるために必要な<教師と生徒のミステリー>については、まだ、ざっくりとしたことしか考えていなくて。そもそも講談社の担当さんとは、読み切りの新作を書きましょうねという話になっていて。みたいな。
ひとまず、今は『君を描けば嘘になる』のチームで新作を書いています。その後は、お待たせしている方が何人かいるので。どれでしょう。という感じです。
完璧な結末を思いついてしまったので、せかわたの続きを書きたい気持ちはあります。ただ、ひとまず完結させたばかりでもありますし、感想や売れ行きを見ながら、担当さんの指示を待つという感じになるのかもしれません。
そんな『世界で一番かわいそうな私たち』の話でした。
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