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一夜漬けで予習するジロ・デ・イタリア2021


今週末からジロ・デ・イタリアが始まる。

ボーッとしている間に開幕まであと3日になってしまった。えらいことである。慌てて予習をしている。試験前の学生のごとき追い込みっぷりなのである。せっかくなのでチェックした情報や感じたことについてメモを残しておこう。

そうそう、誰も期待していないと思いますが「絶対に当たらないジロ・デ・イタリア2021大予想」はやる予定です。一応。

昨年秋に開催されたジロ・デ・イタリア2020大予想はこちら。わかっていたけど全然当たらなかった。

(1)ジロ・デ・イタリアとは

世界で一番過酷なエンデュランススポーツと言われるロードレース。その中でも最も格が高いのが21日間で争われるステージレース「グランツール」である。

ジロ・デ・イタリアは3つあるグランツールの初戦。舞台はイタリア、過酷な山岳が特徴だ。昨年はパンデミックの影響で秋開催となったが、今年は本来の開催時期である5月8日からスタート。2回の休息日を挟み最終日は5月30日。各ステージの走行時間の合計が最も少ない個人総合首位の選手が「マリアローザ」と呼ばれるバラ色のジャージを着用して走る。そしてこのマリアローザを最終日終了時点で着用する選手が総合優勝となる。

別名"Fight for Pink"。字面は可愛いがコースはえげつない。今年はグランツールの最高峰ツール・ド・フランスにおける個人タイムトライアルの比重が高い影響で、山岳を得意とするクライマー系のオールラウンダーがこぞってジロに参戦する。

2021年はトリノをスタートして南下、折り返してミラノにフィニッシュするルート。途中スイスに立ち入るが、スタート~フィニッシュは全てイタリア国内。総走行距離は3,450.4km、総獲得標高は47,000m。普通の人は完走すらできないだろう。私は1ステージも走り切る自信がありません。

(2)一夜漬けにおすすめの教材

ここからは今年のジロのコースや出場する選手など、見どころ・ポイントをコンパクトにまとめてくれているメディアを紹介する。全然勉強していなかった人が慌ててチェックする参考書とかプリントみたいなものだと思って下さい。

① 2021 Giro d'Italia Preview | The First Grand Tour Of The Year!

約23分半の動画で学ぶジロ・デ・イタリア概要。コースも選手もまんべんなく紹介してくれている。個人的イチオシ。小ネタも網羅していて本当に勉強になる。英語もわかりやすい。実況でも活躍するDanさんが2分に1回レムコ・エヴェネプールを推してくるのが微笑ましいが、好みの分かれるところかもしれない。

② ジロ・デ・イタリア2021を大予想!【GCN JAPAN SHOW 98】

GCNの日本版メディア、GCN JAPANのジロプレビュー。こちらは土井ちゃんさんが約22分で注目コースや選手を教えてくれる。

③ ジロ・デ・イタリア2021開幕!レースプレビュー/新城選手、Eベルナル、Sイエーツ、Pサガン

こちらはJ SPORTSの顔・栗村さんによる28分のプレビュー。出場する全チームについて紹介されている。
YouTubeとほぼ同じ内容の文字媒体。動画よりも文字が得意な人はこちらをどうぞ(自分もそうです)

④ GIRO D'ITALIA 2021 PREVIEW: ROUTE, PREDICTIONS AND CONTENDERS

英自転車メディアRouleurによるプレビューコラム。全ステージと各賞注目選手について簡潔に紹介。コース断面図が見やすく写真も綺麗。

⑤ 宮本あさかさんによる各ステージの紹介コラム

凄い情報量。一夜漬けで疲れた時に読むといつの間にか朝になっているタイプの文章。文化的な背景まで紹介してくれていて、旅行に行きたくなる。

(3)全21ステージ概要と注目ステージ

ジロは長い。なんせ21日間ある。5月8日から30日まである。ほぼ1ヶ月やん!スケジュールを調整しておかないとえらい目に遭う。
なので、いつどのステージがどんな感じで放送されるかをまとめてみた。

ジロ2021コース概要_図

コース情報・区分・距離・難易度(最大で☆5つ)・start/finish時間はガリバルディ(ジロ公式ロードブック)、J SPORTSとGCN+の配信時間は各社のリリースを基に作成しました。

2日の休息日を区切りに第1週から3週に分けられる。注目すべきは「区分」と「難易度」。スプリントバトルが好きな人は平坦を、総合争いが好きな人は山岳を中心にどうぞ。

注目はstage11。ここでは3月に開催されたワンデークラシック「ストラーデビアンケ」の未舗装路区間が登場する。パンクやメカトラブル、落車がレースを狂わすかもしれない。波乱必至のエキサイティングな日になるだろう。なんでこのステージが平日・水曜日やねん。

第2週後半からは難易度☆4とか5の山岳ステージが怒涛のように登場する。ここで総合優勝争いをする選手たちがゴリゴリやり合うはずなので要チェック。特にstage14に登場するゾンコランは世界3大激坂山の1つで「魔の山」の別称を持つ。最大斜度はなんと27%。壁ですよ壁。世界で一番自転車に乗れる人たちがこの登りをどう攻略するのか、楽しみである。

(4)注目選手についての個人的メモ

①総合賞 マリアローザ

個人的にはずっと応援しているサイモン・イェーツ一択。どのメディアでも最有力候補の1人として扱われており、今年こそ勝ってほしい。世界最強レベルで登坂に強く、前哨戦であるツアー・オブ・ジ・アルプスでも区間1勝と総合優勝を飾っており、コンディションも上々。初参戦で大旋風を巻き起こした2018年から4年連続の挑戦となる。昨年はまさかの検査陽性でレースを去った。

2019年は「調子が良過ぎて自分が怖い。僕がライバルならちびっちゃうかもね!」と若者らしい軽口を叩いて大御所ニバリに説教されていたが、今年は「正々堂々と走って優勝争いがしたいです」という大変清らかなコメントを発表した。毎年毎年ジロに特別な思いを持って臨み続け、遂に悟りを開いたのだろうか。もう28歳(8月には29歳)だしね。

サイモンのコメントが掲載されているチーム公式リリース。サングラスを頭に載せた姿に絶妙な昭和感を感じる。そういうところ、好きよ。

本人のプランではジロの後は区間勝利狙いでツール、そして色々未確定ではあるが東京五輪で金メダルのために走る予定。長期に渡ってコンディションを維持しつつジロで勝つために、慎重かつ丁寧に調整をしているはずだ。2018年は2週間半で力尽きたが、その後何度もグランツールを完走し、彼は強く賢くなった。このジロのために初めて走ったストラーデビアンケで落車して膝を怪我していたのでstage11は気を付けて走ってほしいが、それ以外はあまり心配していない。

気がかりなのはバイクだ。今年からビアンキがサプライヤーになったが、172㎝のサイモンにバイクのサイズが合っていないように見えるのである。最小サイズ47から50、53と30ミリ違いの飛び級展開ゆえ、おそらくサイモンのサイズであろう49がない。今季初勝利を果たしたアルプスstage2での登りアタックを見ても、昨年までと比べてキレがないように感じた。

stage3の写真。フレームが小さいように見える(47に乗っている?)
ステムを長くして対応しているが少し窮屈そう。
ちなみにチームメイトであるチャベス(164㎝)は47に乗っていると思われる。なおイネオスに移籍した双子の弟アダム(173㎝)はジャストサイズである49のドグマに乗っている。
下ハンダンシングアタックが持ち味のサイモンだが、アルプスstage2では上ハンのままアタックしてシッティングで走る時間が長かった(1分55秒以降)たまたまかもしれないが。

機材の変更はプロである以上仕方がない。フィッティングや走り方で対応していると考えられるが、これまでよりも体に負担がかかる可能性はあるだろう。21日間の長丁場となるジロで、その負担が顕在化しないことを祈るばかりである。
なお、この件について言及しているメディアは国内外含めて自分の知る限りない。全くの見当違いの心配である可能性も多分にあるので、お含み願いたい。

あとはチーム編成だろうか。山岳アシストがもう少し厚くても良い気がする。チャベスかハミルトンに入ってほしかったが、2人ともいない。ヘイグとアダムがチームから抜けた影響がこう出るかという印象である。ジロ初挑戦でアルプスでもいい走りをしていたシュルツに期待しよう。

ライバルはベルナルとシヴァコフのイネオスコンビとランダとビルバオのバーレーンコンビ、ウラソフあたりになると思われる。
アルメイダとエヴェネプールのドゥクーニンクコンビは個人TTでタイムを稼ぎそうではあるが、昨年大活躍のアルメイダには山岳が厳しすぎる気がするし、長期離脱明けで初のグランツールに挑戦するエヴェネプールはどこまで走れるか未知数である。なおルフェーブルGMによれば総合エースはアルメイダ。これでレムコが勝ったら昨年ツールを勝ったポガチャルを超える伝説になるだろう。

② ポイント賞 マリアチクラミーノ

この度出場するスプリンターの中ではユアンが一番勝ちそうだが、今年は全グランツールの区間勝利を目指しているそうで、ほぼ間違いなく早退しそうである。そうなるとサガンだろうか。カビリアとニッツォーロにも勝ってほしいし、ヴィヴィアーニの復活も見たいところではある。メルリールもステージ1勝くらいは普通にしそう。

③ 山岳賞 マリアアッズーラ

誰だろう。チッコーネ?ロマンディで調子が良かったマスナダが行ってくれてもいいと思っている。

④ ヤングライダー賞 マリアビアンカ

うーん。ベルナルかシヴァコフかウラソフ?ベルナルが絶好調なら総合もサイモンVSベルナルになりそうだが、背中の痛みがまだあるとの情報もあり、読めない。

⑤ その他

最終日の個人TTはカヴァニャに勝ってほしいと思います!

ツール・ド・ロマンディstage5で今季初勝利を飾ったカヴァニャ。昨年獲得したフランス個人TTチャンピオンジャージでの勝利は初。この勢いでグランツールの個人TTも勝っちゃいましょう!最終日って書いたけど、初日でもいいのよ。

(5)参考情報等

ジロ公式ロードブック「ガリバルディ」ステージの詳細から周囲の観光情報までジロの全てを網羅。読んでいるだけで楽しい。今年の表紙は昨年覇者テイオ・ゲイガンハート!
ビアンキ・スペシャリッシマのサイズ展開。47 / 50 / 53 / 55 / 57 / 59 / 61となっている。49がない。
少し前にルフェーブルGMがツアー・オブ・ターキーでのカヴェンディッシュの勝利についてのインタビューで "I think we go with [João] Almeida as the leader and Remco [Evenepoel] as the underdog." と言っていた。
このタイミングではホッジがジロに出場するとも言っていたので、状況が変わった可能性はある(ホッジはジロの最終ロースターから外れている)