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八重桜が咲くと思い出す。

もう10年、いや15年くらい前になるだろうか、友達の夫と寝たことがある。

学生時代に友達の彼氏として話を聞いていて、やがて結婚して夫になったその彼と、仕事の繋がりか何かで初めて二人で会うことになった。(友達は仕事か何かで来れなかったんだと思う。)

待ち合わせしたのは新宿とか渋谷とか赤坂とかメジャーな駅ではなくて、初めてくる場所で指定されたカフェへの街路樹が八重桜だった。

ソメイヨシノからの八重桜。タイミングを少しずらしてやってくる大物。合コンで(意図的に)遅れてくるあざとい女みたいな八重桜。

思えばわたしはそんな八重桜になりたかったのかもしれない。

花びら散る中、彼は現れた。彼女とのツーショットの写真で見ていたよりも親しみのある魅力的な人だった。

ひたすらに仕事やお互いのことを話してその日は終わった。初めてとは思えない会話のスムーズさが心地よかった。

この人はどんなセックスをするのだろう?と思った。

2度目は確信犯だった。彼女が旅行か何かで家を空けるとわかっていた日に飲みに誘った。渋谷の薄暗い照明の居酒屋で楽しく飲みながら、横目で終電の時間が過ぎていくのを確認した。

この後、どうしよっか?

お店を出た後、確信犯のわたしは、一つの解答だけを期待している。

ホテルで飲もうか 彼が正解を口にする。

(心の中でガッツポーズ)

コンビニでお酒やお菓子を買ってするりとラブホに滑り込む。

最初は飲んだりおしゃべりもしていたけれど、汗もかいたし順番にシャワーを浴びて横になれば、静かに親密な幕が降りる。

最初は躊躇していた彼もやがて振り切って本気モードになる。

座位で向き合っているときに自分の肩を噛んで欲しいと彼は言った。最初は甘噛み程度で対応したけれど、もっと強くというので顎に力を込めると彼の反応が増した。

(もしかした彼女には言えない性癖なのかとチラリとよぎる)

全て終わって横になると彼の左肩に薄くわたしの歯形が残っていた。

彼はしばらく上半身裸で家の中歩けないなぁなんてのんびり話しながら眠りについた。

翌朝モーニングを食べながら、やー、やっちゃったねとか話しながらクスクス笑って別れた。

彼を彼女から奪いたいわけじゃないし、二人が円満に夫婦でいてくれたらいいなと心から思う。

ただ魅力的な相手を目の前にして、欲しいなと思う自分の気持ちも大切にしたい。そこにブレーキをかけないのがわたしなのだ。

相手の同意が得られたなら、一緒に楽しい夜を過ごしたい。性欲と好奇心と好意の入り混じった夜の果て。欲望の底を覗き込む夜もある。

その後、わたしが引っ越したりもしてなんとなく疎遠になってしまった。

それでも、この季節に八重桜をみるとその彼を思い出す。それに、彼女より後から出会ったわたしのことを存在感のある思い出として心のどこかに残してくれたらいいなぁと思ってる。

やっぱり今でもわたしは八重桜に憧れている。

今日も気持ち良い1日を♪

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