あとがき



 最後までお読みいただきありがとうございました。紹介文でも書いたとおり、この物語は60~70%くらいかな?実話を元に書いたものです。

 あと6年足らずで昭和が終る頃、結構日本の経済がいい時代でした。大学への進学率が大幅に上がり、同時に受験戦争という言葉もこの時代に生まれたのではなかったでしょうか?今の『センター試験』にあたる『共通一次試験』が始まったのもこの頃(この話の2~3年前)です。就職に対する価値観も終身雇用がまだ当たり前だったため、『自分に合った仕事』というより『少しでも大きな企業』に入ることが親孝行みたいな感じでした。良いか悪いかは別として、随分今と違いますね。

 話を戻すと、当時の私は親に授業料と最低限の生活費を捻出してもらっていたので裕福ではないものの決して苦学生ではありませんでした。もちろんエアコンも風呂も無く、共同のトイレは掃除が行き届いてないような安アパートでしたから贅沢をしていた訳でもないです。ただ、その頃はそれも当たり前。ですのでいくらバイトで稼いで手にした車といっても...まったく胸を張って威張るようなことではないのです。

 また私の大学の語学系の学科では3回生の夏に1ヶ月程、海外に自主的に留学する生徒が多く(別に大学が斡旋しているわけではない)、私の学科はフランスに行く学生が沢山いました。もちろん私も行きたかった。友人達と思い出を作りに行きたかった。しかしそれは無理です。車を手にしておいてフランスまでって...無理です。やっぱり...どちらも叶う裕福な家庭は羨ましかったですね。

 結局私は車を選びました、それを諦めてでも車が欲しかった...。大好きな彼女を助手席に乗せたかった...。その一心でした。

 その後彼女とは結局アレコレあって1年ちょっとで別れました。大学も中退しました。大部分が私のせいでした。それから一切会っていません。今頃どうしているのか?...と、幸せに暮らしているといいな...と、30年以上過ぎたこの歳になってもふと思ってしまいます。

 その思いを込めて...この物語を彼女とその思い出に捧げたいと思います。


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