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贈り物と喪失の時を見つめる

 「幸せになる」という言葉がずっとよくわからない。高校生のときから、今に至るまでよくわからないまま、わからなさを自ら許したまま生きることができたことは多分幸せなことだろう。よくわからない言葉をわかっているよう装うことや、わからなさを揶揄されるような場面に立ち会うことは大したことではないが感覚が息を止める瞬間には違いない。そういうことがないまま、ここまで至ったことは幸せなことだ。そう、幸福感についてはわかる。安心できる眠り、誰かとの食事、成すべきことを成したとき、行きたい場所へ向かっている道の途中の景色、すきな人のすこやかさ、ここにあるけれどいずれなくなる、ほんのわずかな一瞬間のきらめき。「手当てをしよう」と決めたことはあるが「幸せになろう」と志したことはない。幸せはそこにあるものであり、なるものではない。


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