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la campanella を弾いてみて感じたこと

中学生の時にピアニストのフジ子・ヘミングのドキュメントリーを見て、la campranellaを弾いてみたいと思った。超難関曲だと聞いていたけども、当時毎日ピアノ練習していた私なら弾ける!と思って先生に提案したが、即却下された。

しかし、あの人間関係とか面倒になった中学生の頃に私に勇気を与えてくれたのは間違いなくフジ子・ヘミングのla campanellaであり、憧れだった。毎朝登校中に聞いて「世の中にはこんなカッコイイ曲があり、弾ける人もいる。今目の前で起きている面倒な人間関係なんぞちっぽけなこと。」と自分に言い聞かせていた。

いつしか受験勉強や部活が忙しくなり、ピアノを弾く習慣もなくなってしまっていた。くだらないことを考えることが好きだった大学生の頃、友達とやりたいことリストを作成した。その中には、「ラ・カンパネラを弾く」があった。記載した当初は、叶うのは老後かなと思っていた。

その後、社会人になり、結婚ブームも第二段階が過ぎ、出産ブームが巻き起こる。どうやら産休から出産までの間は暇を持て余すらしいことを知った。「よし、ここでカンパネラを練習しよう」と思っていた。そのため、きっと他の子も産休中にやりたいことは何かしら特徴が出るのでは?と思って、いろんな人に「産休期間、なにしたい予定?」と、聞いていた。

そんな中、新型コロナウイルスが流行し、STAY HOME期間を得た。特に、うちの会社はGWに連休をくっつけてプラチナウィークとした。この休み!キタコレ。

ということで、実家から電子ピアノのクラビノーバを持ってきて、念願のla campanellaを練習することにした。

相当期間、ピアノを弾いていなかったため、最初の1週間はハノンで指練習もした。そしてやはりこの大曲、音と音が離れていて人間ができる技じゃないと思い、ピアノの先生をしていた叔母に泣きついた。そこでまさかの「ハノンをやる時間あるなら譜読みした方がいいわ。そして譜読みの時点で歌いなさい。」という忠告を受けた。元々、チェルニーとか基礎練の類が好きじゃなかったため、この言葉は衝撃的だったし、速攻でハノン練習を辞めた。

曲は1ページずつ譜読みしていった。不思議なことに、その日には全くできなくても、次の日には弾けていたりする。勉強も、寝ると脳に入る(キャッシュ記憶からデータベースに行く的な)というが、身体もそうなのかもしれない(昔、こういうことを感じたかは覚えていないので、私的には新鮮な感覚だった)。

幸いなことに、この曲は何度も音源を聞いたことがあり、何が正解の音なのかがわかっていたので、譜読みは思ったよりも早くできた(昔は、知らない曲を譜読みすることが多かった(有名曲でも幼かったから普通に知らない))。それでも2週間位はかかった。しかし、最後まで譜読みが済んだという感動がものすごかった。ずっと弾きたいと思っていた曲が、自分の手から奏でられているという衝撃。とにかく、自分を褒めた。自分だけでは足りないから、親と叔母にも譜読みが終了したことを報告し、褒めてもらった。笑

最難曲と言われるけど、こんなものか…とも思った。が、それはここからの戦いのことを示していることがわかった。

なんせ、音が当たらない。音と音が離れているが故にタッチミスが多発する。部活の吹奏楽でホルンを吹いていた時に「なんでこんな音外すんだろう」て思っていたけど、それと似たような感じ。技術的?身体的?に慣れが足りない。慣れたらいいものなのかもちょっとよくわからない。

ショパン、モーツァルト、シューベルトやベートーベンには無かった気のする、反復横跳びという賭けみたいな奏法が必要となる。このことに気をとられると、音楽的な表現が頭の片隅に追いやられてしまう…。激しい弾き方なのに、強弱記号はpというまた難しい要求も楽譜には描かれている。難しい。

YouTubeに上がっているプロたちの動画は、本当に神業なのでは?と思う。赤い衣装の女の人は超早い。片手だけでも追いつかない。そして辻井さん、あなた本当に神の子ねって思います。でも確かに、あの速さでの演奏は確かに視力なくてもできるくらい弾きこなさないと、できないものなのかも…とも思う。

作成したやりたいことリストにチェックを入れたいところだが、私の想像する「la campanellaを弾く」はまだ達成されていなさそうだ。はて、これからはどう進めばいいのだろうか。まずは暗譜ですね。弾くことに集中できるようになりたい。

一方で、久々に楽曲を演奏することで、表現する楽しさを感じた。聴いてくれる相手にもその表現したいことが伝わればそれはもう大満足の域だけども、自分の頭のイメージを音として奏でるという楽しさ。仕事でストレスがあろうと、楽しいドラマを見た後だろうと、その感情とは全く異なる想像の感情を込める感じが、とても気持ち良い。演奏の楽しさってここにあると思う。

とりあえず、久々に嬉しい。


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