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初めての……… care5

「ちーす🎵」
夕刻。
ぴょこん、と1021号室に現れたのはケバい金髪のナース、早川夏美だった。浣腸・摘便されて、午睡から目覚め、ぼうっとしていたゆうの頭を叩き起こすには充分すぎる過量投与オーバードーズと言える。
「ゆうゆう今夜は、あーしが夜勤だから🌙ヨロシク✌️」
「え?あ、どーも……」
正直、苦手な人物の登場に、ゆうは少し身構えてしまう。
「うんち出来たって?超エラいじゃん🎵」
そう言うと、例によって、ベッドに腰掛け密着してくる。
「あ、うん……」
あやのと三谷にされた排便の事を振られ、ばつが悪い。ふと、便の臭いが残っているのか?と思い、深く鼻から空気を吸ってみるが、よく分からなかった。消毒液と夏美の甘いコロンの香りしか感じない。
「三谷さんの手でかくね?奥までほじられちゃってかわいそー❤️ぎゃはは🎵」
と頭を撫でられる。
「え、そんな事まで聞いたの??」
「んーと、看護記録っつーんだけど、誰が何時どんな処置をしたかとか、ごはんどんだけ食べたとか、よく寝てたかとか、記録してるんだよん👍患者さんのあらゆる事を記録して、元気になる役にたつようにね🎵」
「へー」
「ちゃんと仕事してんだなって、見直したかー?え?」
「そ、そーゆーわけじゃ………ひゃひゃ!?」
夏美が引っ付き、その手を脇に伸ばしてくる。くすぐられた。


「オラオラ❗」
「ちょ、やめ………」
こちょこちょと、左右十本の指はそれ自体が生き物のようにゆうの脇の下や脇腹、背中を這い回る。
ゆうは、くねくねとベッドの上を逃げ回り、夏美もそれを追い掛け、極小のリングでの試合は白熱した。ナースサンダルを脱ぎ散らし、ゆうの寝巻きの前をはだけさせ、擽りは臍や乳首まで蹂躙する。指先がおへその窪みをほじり、手のひらが乳首を転がす。
「わひゃあっ」
つつつっと、喉元を指先が上下する。
荒い喘鳴と短い叫び声、迷惑したベッドの軋む音だけが続くこと暫く………
「はぁはぁ……なにこれ」
「はぁはぁ……わっかんねー」
仰向けになった夏美に抱えられながら、ゆうは誰にも答えられない問いを発し、夏美も誰でも分かる答えを返した。
「楽しいからいいじゃん🎵」
夏美の手が、おむつの股関をまさぐる。リハビリパンツの分厚い生地越しに、陰茎が、陰嚢が、揉みしだかれる。
「ちょ!?」
昼間、あやのにも揉まれ、精液を出してしまったばかりだ。ゆうは慌てた。それに正直、少し痛い。きっと、そういうものなのだろうと思う。一種の腫れ物のようなものだ。
「あやのねーさんに、出してもらったの知ってるから、大丈夫大丈夫🎵マッサージだよん💕」
確かに、思いの外、夏美の手つきは優しく、刺激するというよりも労るようなものだった。とは言え、じわじわと陰茎は硬さを増していき、悩ましい衝動が襲ってくるのも時間の問題だった。
「ね、ねえ夏美さん」
「夏美ちゃんでいいってゆったじゃん」
「夏美ちゃん、その、ぼ、ぼくもう、いたいよ」
「あ、ワリ🙏ごめんごめん😩」
意外にも、夏美はすんなりと手を離し、ゆうを解放した。二人して起き上がる。
「痛痒くなくなくない?」
「ん、え、平気」
「うんちしたら、ホントは陰部洗浄すんだけどーww」
「陰部洗浄??」
「おしりとちんちんを洗うワケ❤️拭いただけじゃ、汚れが落ちないっしょ?おむつだと、こびりついてたりするじゃん。だから、ベッド上で洗うんだけどさ🎵今日は、お風呂の日だからスルーしたみたいよ?」
「そっか。お風呂なんだ」
それはちょっと嬉しい。
初めてのおむつに排泄生活で、心地悪かったものが、さっぱりするだろう。
「どーする?夜ごはんの後でいーよね?」
「あ、うん。家でもお風呂は8時くらいに入ってたし」
「よっしゃOK💕」
入院生活の小さな楽しみが一つ出来た気がして、ゆうは少し気持ちが楽になった。
うたた寝した事もあり、看護婦に肛門をほじられ、おむつに便をもらすという衝撃の体験は、大分、和らいでいた。

「それじゃ、ゆうくん帰るからねー🎵また明日🎵」
「うん、また明日」
大分遅くまで残っていたあやのが、夕食が配膳されるのを見届け、退勤を告げる。
「早川、よろしく」
「りょーかいっす👍」
びしっと敬礼?する夏美。
ひらひらと手を振り、ゆうと夏美はあやのを見送った。
「あやのおねーちゃんて、この近くに住んでるの?」
「んー?そうみたいよ?よく知らんけど」
どうも、あやのは白衣のまま帰宅しているっぽい。一応、病院としては帰宅する分には白衣のままでも構わない。だが、家から白衣で出勤はNGとされる。外からのウイルスや雑菌を白衣に付着させて院内に持ち込み、患者に撒き散らしてしまう可能性があるからだ。これは、内科なら内臓疾患で体力の落ちている人や高齢者、外科なら手術などの処置後で弱っている患者にとって、致命的になりかねない。その予防策としての一般的なルールである。かつては、靴に関しても色々あったのだが。外来はもとより、お見舞い・面会者にもスリッパへの履き替えを定めていたりしたが効果は薄いとされて、現在は泥んこなどで汚れまくっていない限りはそのまま可である。
そんな訳で、逆に帰宅の場合は個人の自由である。院内で血液や汚物に触れた汚い白衣を家に、特に家族に対するリスクを承知で持ち帰るのも個人の自己責任となっている。私服に着替えるのがめんどくさい、が勝るなら、それもアリだろう。単身者は特に。
「看護婦さんて、そのままで帰っていいものなの?」
「そーだけど?出勤すんのはブー❗️」
「ふーん。時々、スーパーとかいるよね、ナース服で買い物してる人」
ただ、帰宅時に買い物など寄り道するならば宜しいとは言えないが。また、訪問看護・往診などで患者宅から別の患者宅へとそのまま行くのも、決して佳い行いではない。伝染病・感染症の流行などなくとも、患者と接する場合は、予防衣やマスクはするべきで、車で移動する時は特にその車内がベクターになりかねない。消毒は必須だろう。意味がある、メリットがあるから白衣や防護具を用いるのであり、単なるシャツで在宅訪問・デイサービスの送迎など全てこなしてしまうのは悪い慣例と言える。洗う頻度の低いバッグなどは特に、不潔である。ノートや書類から食中毒の菌が発見された例もある。キレイにするに越したことはない。
「基本的には白衣っつーの。ナース服って変な言葉じゃね?ウケるwww」
「よく分かんない」
「白衣は白衣じゃん?看護婦用白衣とか、看護衣とかがフツーっしょ?」
夏美は自分の纏った白衣を示した。あやのたちと同じ、ラウンドカラーのワンピースだが、長袖であり、それを腕捲りしている。彼女なりの拘りがあるらしい。
「ふーん。クラスの女の子たち、見学で病院行った時、かわいいかわいい🎵言ってたなあ」
「だよね❗️あーしもナースキャップに憧れて看護婦になったんだもん🎵超かわいくね?」
「…………」
恐ろしいセリフを聞かなかった事にして、ゆうは夕食に専念した。回鍋肉は、少しスパイシーだが、なかなか美味しかった。
「一口ちょーだいよ🎵」
「えー?やだよ💦」
「うっそでーすwww患者さんのごはんパクるわけないじゃんwww」
そりゃそうだが、この女ならやりかねないと、ゆうは思った。
「夜勤者は、基本メニューと同じもんなら、夕飯出してもらえるし🍴」
「あ、そーなの。お得だね。でも徹夜かぁ」
「ん。仮眠とろうと思えばとれんのよ🛌何もトラブルなければねーww」
「大変だね、看護婦さんて」
「そーなんだよ❗マジヤバイから❗ゆうゆう超いい子じゃん❤️」
ほっぺたをつつかれた。
「あーし、ホントこんな仕事健気にこなしてさぁ、マジ白衣の天使だよね🎵ぎゃはは🎵」
ナースキャップに憧れて、などと語った夏美が、自分の夕食は後回しにしてゆうの食事に付き合っている。
下手すりゃ、一緒に食べても良さそうなものなのに。
ちゃんと看ているのだ。
ゆうにもそれが分かった。
絡みづらいが、悪い人ではなさそうに見える夏美。いや、看護婦であるからして悪い人ではなかろうが。怖い人ではない、というべきか。何にせよ、ゆうは少し安心した。

「ゴメ~ン❗お風呂なんだけどさぁ、個室ダメなんだわ❗マジ勘弁❗」
食後、一時間ほどしてやって来た夏美はそう言って両掌を合わせて詫びた。
「えと、個室??」
「そーそー。フツーのお風呂ね🛀」
「順番待ちなの?」
「そーゆー事。今の時期、みんなまだ術前だからさ、個室ばっかり使ってやんの❗超しくった❗」
まだ梅雨にも入らない季節。つまりは、春の健診で入院した子たちもまだ手術前が多いのだろう。特に不自由もないのだから、必然的に一般の浴室を使用する事になり順番待ちになっているのだ。
「ダメなんだぁ」
がっかりして、ゆうがそうぼやくと、
「だから機械浴室借りてきたよん🎵」
夏美がよく分からない事を言った。


「え、え……??」
初めて見る。
そのお風呂は、巨大な診察台?バスタブ?が並び、隣にはクレーンのような物が備えられていた。床は一面タイル張りで、かなり広い。部屋の真ん中に浴槽がポツンとありアンバランスなように見える。複数の看護婦が立ち働き、患者を入浴させる為にあれこれするからだろう。汚物流しと呼ばれるトイレ?のようなシンクも設置されている。
何か、シャワーかサウナのようなものを想像していたゆうは面食らった。

“なにこれ?お風呂なの?”と。

「ホラホラ❗️ゆうゆう、脱いで脱いで❗」
既にパンツ式のおむつだけだが、全裸になれと言われても、やはり躊躇ためらいがある。というか、このよく分からないお風呂に入るという事は、夏美がずっとついているのか。
夏美は白衣の上にプラスチックのエプロンをして長靴に履き替えていた。介助する気、満々の格好だ。
「なにしてんのよ、ホラ、貸しなよ❗」
「わっ!?」
おむつの側面を、べりべりと破かれ忽ち剥ぎ取られた。両手で股関を隠そうとするも、その手を引っ張られ寝台へ導かれる。既にお湯が張られ、温かい湯気が上がっている。
「そこに寝てみ🎵」
「こ、こう?」
ストレッチャーのような寝台に腰掛け、仰向けになる。身体を拘束する為のベルトや、脚を挙げさせる為の足台が付いていて相当な圧迫感があった。
「動いたらダメだかんね?」
「う、うん」
不安なのでキョロキョロ首を回して眺めていると、夏美がスイッチを入れた。途端に、寝台が持ち上がり、浴槽へと沈んでいく。
「なにこれ、なにこれ」
ちょっと面白い。
ぬるめのお湯に寝台ごと体が浸かっていく。
心地良いし、なんか楽しい。
「あはは」
「おもろいっしょ?」
「うん」
仰向けでお風呂に入るのも初めてだった。ベルトもされてはいないし、不自由もない。首だけお湯から出した不思議な体勢に、思わず笑ってしまう。
「お湯加減はどーよ、お客さん?」
「ちょっとぬるーい」
「熱いのがいいの?あんた、おっさんかよww」
備えられたシャワーヘッドを手に取り、夏美がお湯を掛けていく。
そもそもこのお風呂の使い方も分からないし、ゆうはされるがままになるしかない。恥ずかしいのは確かだが、気持ち良いのはそれ以上だった。
「よっしゃー、体洗おうぜー🎵」
「出た方がいいの?」
「そのまま寝てなー👍」
再び寝台が作動し、湯槽から持ち上げられた。
バスタブの上に体が出る。
「うわー……こーゆーことなんだ」
「そ💕」
夏美がゴム手袋を嵌め、ボディソープで泡立てたスポンジを手にし、ゆうの体をこすってゆく…………
久しぶりのお風呂なので、結構、垢が出る。なんだか恥ずかしい。
「動けない患者さんは、こうやってお風呂入るんだね」
「よく分かってんじゃん🎵」
マッサージやエステなど、こんな感じだろうか?と思いながら、自分ではどうにも出来ないので、ゆうは夏美に体を洗われるままになった。気持ちいいのは間違いない。なんだか眠くなってくるくらいだった。
「エステみたい」
「そーよ🎵夏美ちゃんのスペシャルエステ💕気持ちいいっしょ?」
「うん」
「看護婦やめて、スパ夏美とか始めたほうがいいんじゃね?」
「あはは」
自然に手を退けられ、陰部を洗われた。夏美の手つきは、とても繊細で優しい。
「おしっこしたくない?」
「だ、大丈夫」
「うんちは?」
「へ、平気」
「したくなったら言いなよ?このまま排泄できっから、このお風呂🎵」
「わ、分かった」
軽口を交わしつつ、夏美の手は、ゆうの陰茎をわっしゃわっしゃと洗ってゆく。
「ちょ~っとお邪魔~🎵」
「わっ」
夏美の手が陰茎の先端、包皮をずるりと引き摺り下ろした。石鹸の泡ぶくの所為か、予想していた検査時のような痛みはなく、簡単に亀頭が外気に触れた。次第に大きくなった陰茎を丸めたスポンジが包みこみ、裏表、360度擦られる。
「キレイキレイ❤️」
「………」
数日ぶりの入浴で、たまった恥垢が洗いおとされていく。汚いのは事実なので、綺麗にしてもらうのは当然なのだが、どうしようもなく反応してしまう。
「わーお🎵ゆうゆうって、マジでっかいよね🎵」
ゲラゲラ笑い、夏美は膨らんだ陰茎の先端を示した。
「……そうなのかな」
改めて見てみる。
湯気の中、肉の塔が屹立している。
濡れテカり、ピンク色でパンパンに膨らんで。 
グロい、と思う。
ホラー映画の怪物のようなグロさがある。
角、触角のようだ。
特に、この妙にエラが張ってくびれた部分が気持ち悪い。なんなんだろう、と思う。犬のちんちんを見た事があるが、あれより気持ち悪いかもしれない。
発情期の犬は、見境なく交尾しているが、それより不気味な自分は、どうなるのか。人間に発情期はないだろうし、これがこのまま在ると年中、あんな様になるのだろうか。
それは嫌だ。
手術は怖いが、これがこのままなのも嫌だと、ゆうは思った。
「手術ってさ、痛いよね……?」
「んー?」
くにくにと陰茎をゲームセンターの筐体のレバーのようにまさぐる夏美。
「何て言ってほしい?痛くないって言おっか?と~っても痛いって言おっか?」
ひひっ、と笑う。
「いじわる」
「ぎゃははwww」
笑い、
「正解は、めっちゃくちゃ痛くて泣いちゃうくらいかな?」
「だよね………」
「痛くて痛くて痛くてすんげー痛くて痛くて死んじゃうくらいに痛いんだよぉ?」
「超いじわる❗️」
ぱちゃっとお湯を掬って浴びせると、陰茎に軽くデコピンをされた。
「いってー」
「それより痛いかんね🎵でも痛いのは大体、切っちゃう時だけだから、10秒我慢すれば終わりじゃん?」
「………」
そうなのか。
なら我慢できるかもしれない。
「ゆうゆう横向いてー🎵」
「うん」
ごろん、と体の向きを変えると、夏美が背中をこする。
ごしごしと非常に気持ち良い。
こーゆーのはいいな、とゆうは思った。
「こっちもいくよん🎵」
「うん……ひゃっ!?」
心地よさにうっとりとしていたゆうは、唐突な刺激に飛び上がった。夏美の手が、おしりに伸びている。
「昼間、うんちしたけど陰部洗浄しなかったっしょ?」
「いや、まあそうだけど………」
おしりの谷間、肛門の蕾、会陰を夏美の手とスポンジがこすっている。指先が肛門をぐにぐにとまさぐる。
「ちょ、ちょっと」
「三谷さんの指が入ったここ🎵」
「…………」
一気に体が熱くなる。
昼間、三谷看護婦にほじくられた穴。
意識せずにはいられない。
今までの人生で、人にお尻をほじられるなど無かった。考えもしなかった。
その衝撃が甦りつつある。
「中も洗っとこ🎵」
「えっ??」

ぬるん、という感触。

「ふああっ!?」
夏美の指が肛門に入った。
泡立っている為か、昼間ほじくられた為か、簡単に指は付け根まで挿入された。痛みもない。
風邪を引いて解熱剤の座薬をママに入れられた時の方が遥かに痛い。
「おおー❤️ゆうゆうの中、あっついわー🎵」
「な、なんでこんな」
「あ、ホラホラ❗ここ分かる?」
「ひぃっっ??」
夏美の指先が、何かしこりのような部分を刺激した。
ぞわぞわと何かが跳ね回る。
「これがゆうゆうの女の子の部分ね🎵」
「お、女の子の部分??」
「そ❗️男の子ってのはー、女の子のおまたがお腹の中に埋もれちゃってるワケよ🎵」
「…………」
なるほど、と妙に納得した。
「これだよ~ん💕」
ぐにぐにと圧迫される。少し痛い。それ以上に、妙な気持ちになる。
気が付くと、陰茎が少し縮み、代わりに尿道口からとろとろと透明な液体が垂れている。尿ではない。
「キモチい?」
「…………」
無言の肯定。
鳥肌が治まらない。
「さぁて、頭洗おうぜー💕」
尻から指を抜き、ゆうを仰向けにさせると、夏美は寝台の頭部分を寝かせた。
「目ぇ瞑ってー🎵」
「うん」
美容室でするように髪の毛にシャワーがあてられ、シャンプーが泡を立ててゆく。気持ちいい。
夏美の指が髪をいてゆく。
少しだけ不安も泡と一緒に流れていった。


翌日、午後から検査という事で昼食は絶食という話になった。朝のおむつ交換時に夏美に聞かされた。検査と聞いて不安になったが、例によって彼女の軽い調子に、少し和らいだ。おむつは大分、濡れていた。

その日の午後、ゆうは採血にエコー検査、CT検査、MRI検査を行う為、あやのに四階へ連れて行かれた。
待っていたのは担当医である如月医師に、やかましい石黒医師。そしてあの怖い羽山医師だった。
恐怖に蛇に睨まれた蛙状態のゆうだったが、これといって苦痛を伴うような検査はなかった。採血は上手で一発で済んだし、検査技師の人たちは親切だし、エコーはなんだかくすぐったくて笑ってしまうくらいだった。MRIの騒音がうるさかったので、ちょっと耳が痛かったくらいか。
エコーは超音波で陰部、生殖器そのものを、CTはX線により泌尿器、MRIは磁気により循環器を、それぞれ
異常がないか検査する為に用いる。得意とする疾患が異なる為、併用することでより精密な検査結果を出す事が望ましい。もっと確実なのは内視鏡や検査手術という事になるが、それは侵襲が激しいのではばかられる。
「結果は来週ね」
とのこと。
そうして午後いっぱいに検査を受け病室に戻ってきたゆうは、何だか草臥くたびれてしまい、間も無く運ばれてきた夕食の味も分からなかった。
学校で授業を受ける毎日の方がよっぽど過密スケジュールのような気がするが、慣れない&緊張する検査の連続は、疲労へと変換され、睡魔という結論付けされた。
それ故に熟睡し、おねしょが止まらないほど、ゆうは深い眠りに落ちた。

入院五日目。
信じられないほど重たくなった尿とりパッドとおむつ交換が終わり、夜勤の鈴木まどかから日勤のあやのへと引き継がれ、案外に楽しみにしている朝食(純和食だった)を済ませ、不意にゆうは訊いてみた。
「ねえ、今日も検査なの?」
「今日は何もないよ?」
あやのはううん、と首を振る。
完全にオフ?の日らしい。
そうか、と考えた。
「じゃあさ、あの、お願いがあるんだけど………」
おずおずと切り出す。
その上目遣いでもじもじとした姿がいじらしい。 
「なになに?」
と身を乗り出すあやの。
「羽山先生ぶん殴ってきてって?それとも石黒先生にうるせえ❗って注意してくる?」
「そんな事いわないよ💦」
「じゃあ何?」
なんなら、あなたの肛門舐めまわしてあげてもいいのよと、あやのは内心、舌なめずりする。
「あのさ、その、忍ちゃんのとこに遊びに行ってみたい」
ああ、と頷く。
先日、石黒医師の謎のレクリエーションで知り合った患児だ。大分、年上だし、既に数回の手術を終えているようだが、ゆうにとって院内で唯一の友だちと言える。彼女の病室へ遊びに行くのはやぶさかでないが、それは相手の都合(主に体調)による。先日よりは良くなっていると思われるが…………正直、分からない。発熱していたりするかもしれない。
「まあ、いいよ?上の階だったよね?」
「うん。部屋は………よく憶えてないけど」
それはナースステーションに問い合わせれば済む。
「じゃあ、ちょっと連絡してくるわ」
「やった❗」
はしゃぐその姿を、プラスティネーション標本にして飾っておきたいと、あやのは目を細める。
「ただーし❗」
「な、なに??」
「ゆうくん、学校からの宿題のプリント全然やってないでしょ?午後は勉強すること❗」
「はぁい」
と首を竦める。
「女の子の部屋に行くんだから、顔洗ってキレイにしときや?」
「そ、そっか」
愛くるしいその姿に、いっそ家に連れさらって行ってしまいたい衝動に我が身をかれながら、あやのは病室を後にした。

1138号室───────
それが彼女、間宮忍まみやしのぶの病室だった。
あやのに手を引かれ、ゆうは虹彩認証のロックが掛かったエレベーターホールを利用し、11階へと訪れた。10階と余り違いはないように思える。壁のポスターや、観葉植物の有無、ラウンジの椅子や行き交う看護婦の面子くらいしか違わない。
病棟の雰囲気や一部の細かなルールは、その病棟の主任看護婦が決めるのだと教えられた。そう言えば、10階の主任さんはどんな人だろう?と思って訊いてみた。
「んーと、かわいい、かな?」
「ふーん?」
よく分からないので、曖昧に頷いているとナースステーションで教えられた病室にきた。
こんこんと軽くノックする。
「こんにちわー、えらいすんませんけども、10階の鷲井ゆうくん一丁お届けに来ましたー」
出前された事にずっこけていると、はーい、と忍の声がした。ドアが開き、彼女の担当看護婦である坂口愛さかぐちあいが会釈する。
先日、小田歩美に足を踏まれてストッキングを伝線させられ、ぶちギレていた姿からは想像も出来ないくらい、まともなのに面食らう。三谷杏ほどではないが背が高く、何処か秘書めいた実直さがある。年齢は、あやのや鈴木まどかよりは若いだろうが、小田歩美からしたら先輩だろう。あやのは、先輩後輩に厳しいタイプとみた。
「お邪魔しまーす❗️ほらほら❗」
「あ、お邪魔します❗」
二人でペコペコお辞儀すると、どこか怜悧な彼女も、少しだけ微笑んだ。
「どーぞ………今日はあのどんくさいの一緒じゃないんですね」
「せやねん。先日はえらい迷惑かけてもーて。ごめんなさいねえ」
あやのは普段より3割増しで親しげに詫びを入れる。今後もあるだろうから、その辺は解決した事にした方がいいだろう。
「これ良かったら使ってーな」
と、彼女の白衣のポケットに粗品を押し込む。小田歩美が破壊した代わりのストッキングだ。それも、売店にあるものではなく、ちょっとお高い物を用意した。あやのの私物である。
「え?あ、すいません」
今度は逆に、坂口が頭を下げる。やはり、先輩に気を遣われると弱いタチらしい。これで最悪、自分がいない時、ゆうと歩美だけでも、忍の元に出入りしやすくなる。
「田村さんでしたっけ?」
「あやのて呼んでーな。名字田舎臭くて嫌いやねん。征夷大将軍とか言われるし」
「じゃぁ、あやのさん、すみません。こんな気を遣って頂くなんて………」
「ええからええから❗️小田がにぶいのん、考えてへんかったうちも悪いねん」
なははー、と笑う。
小田歩美、許せ。
トロいのは事実だ。
「はは」
忍の笑い声。
ベッドから身を起こして、忍も笑っていた。
「ゆうくん、ハロー」
うっとりと妖艶な笑みを湛えて、手をあげる。
彼女は肩に藤色のカーディガンを引っ掛け、その腕には点滴の管が伸びていた。
「あ、忍ちゃん、ハロー」
ゆうがペタペタとベッドへ歩み寄る。
「遊びに来てくれたんだ」
「うん」
微笑み、点滴の入っていない方の腕でゆうの髪を撫でる。
あやのは、ちらとベッドに目をやり反対側にハルンバッグが在るのを確認した。別名ウロバッグ。身も蓋もない呼び方なら蓄尿袋。足元に布団を掛けて見づらくしているが、現在、膀胱留置カテーテルが入っており、おしっこの管がおむつからバッグへと伸びている筈だ。
点滴はその為もあるのだろう。栄養剤と利尿剤と思われる。溜まった小水を見られないようにと、坂口看護婦が気を利かせてバッグを見づらい位置に移動したのが伺えた。
間違いなく体調が優れないのだろうが、ゆうが会いたいと言っていると知り、その意を汲んで無理してくれているのだ。或いは、彼女もゆうが恋しかったか。何れにせよ、あまり長居すべきではない。一応、その旨、ゆうにはあらかじめ言い聞かせてある。
「ゆうくんの看護婦さんて面白いね」
ケラケラと笑う。
「なんかテキトーなノリの人だよ」
「なんやてコラ」
ゆうのおむつのお尻を引っ張ると、ぎゃーと締め付けられた股関を抑えた。
「あはは。ゆうくん可愛いから、構いたいですよね。良かったね、いい看護婦のお姉ちゃんで」
「そーかなぁ」
「うちの坂口さんなんてさぁ……」
「え?私?」
矛先を向けられ、ぎょっとする坂口看護婦。
「すげー真面目なんだもん。すぐ怒るし」
だろうな、と思うが、そんな事口に出せないあやのとゆうだった。
「患者さんの為です」
そう言い切る姿は白衣の天使そのものだ。
実際、彼女は美人と言っていい。
忍と並ぶと、一体、何処の医療ドラマだ!?と思うほど、美人看護婦&美人患者だろう。女優の方が向いていると言ったら失礼か。
「…………」
ゆうはふと、看護婦と患者である以上、この二人はお尻をほじられたりほじったりをしているのだと気が付き、赤面した。この坂口さんに、忍ちゃんはおむつを替えてもらうわけで………ああ、いけない。
「どしたん?」
「え?あ、あの、ぼくこんな姿で来ちゃって………」
あやのに顔を覗き込まれ、咄嗟におむつを示した。
あながち嘘ではないが。
おむつでエレベーターに乗り、おむつで上の階の病棟を歩き、幾人かの見知らぬ看護婦とすれ違い、ナースステーションに行き、おむつで面会にきた。
早くも感覚が麻痺しつつあるが、自分はおむつ一丁、おむつ丸出しなのだ。そういう規則とは言え、こんな非日常な行いはない。パンツ一丁で登校するようなものだ。
「あはは。そっか。おむつ恥ずかしいんだ」
忍は笑う。
「そりゃそうだよ」
「私も最初そうだったなー。坂口さんにイヤイヤ言ってさ。ごめんなさーい」
と担当看護婦に詫びる。
「そうね。大変だったのは事実かな」
「もう二年前かぁ」
驚いた。
二年間入院しているのか。
では、幾度手術をしているのか。
「忍ちゃんはそんなに入院してるの?」
「うん……今、17だから中三の時からだね」
そんなに。
もしや以前にトラブルが?と、あやのは思う。
単純に美醜や機能を求めての長期入院、手術ではなさそうだ。もしくは、難病であったか。病棟違いのあやのに彼女のカルテを閲覧する権限はないが、恐らくはそんなところだろう。
「そうなんだ。ぼくのママも三年くらい入院してたってゆってた」
「わお。ママ大変だったね」
「うん」
「お母さんとママどっちが好き?」
「えー……ママかなあ」
あやのはゆうの精子提供者、鷲井まことを思った。彼女もトラブルその他により長期入院していたそうだ。反動で、我が子に甘くなるのも分からないでもない。
「ママは、すごく辛い思いをしてぼくの遺伝子を遺してくれたんだって。お母さんがゆってた。お母さんは安産だったからそんなに大変じゃなかったけど、ママは、その、タマタマを一度潰したりして、死んじゃうくらい辛かったけど、将来ぼくが生まれる為にがんばってくれたんだよ、って」
現在、精巣の摘出は出産と同義と捉えられている。
帝王切開も同然の行為である、と。ゆえに、産みの母は確かにその身体で赤ちゃんを育み、出産するが、育ての母も精巣の分娩という形で出産をしているのだ。遺伝子を育てた故に、精子提供者を育ての母と称する由来でもある。
もっとも、思春期の男の子にとって、将来の我が子云々よりも、手術の恐怖と苦痛の方が勝るのが普通だろうが。中には、既に想い人がいて、その為に精巣分娩を頑張るという子も少数ながらいる。
「すごーい。かっこいいママだね。私もそんな風になれるかな?」
「し、忍ちゃんも?そ、そっか……そうだね………」
彼女は既に精巣を摘出している。
相当、辛かったろう。
「あ、私は恋人とかいないからね。赤ちゃんとか、全然考えてなかったわwww」
ゲラゲラ笑い、
「痛くてワケわかんなくて、でも、坂口さんがずっと励ましてくれて、泣いたら叱られてぶたれて、頑張って手術うけたの………そっかぁ。坂口さんのお陰で、将来の私の赤ちゃんは生まれてくるのかぁ。ありがとね」
「急に何を………仕事だからです」
急に礼を述べられて、坂口看護婦はぷいとそっぽを向いた。照れ臭いのだろう。
「赤ちゃん……赤ちゃんかあ」
小学六年にしてそんな問題を突き付けられ、ゆうは頭を抱えた。
「そんな難しく考えてもしゃーないやん」
その髪をあやのの手が撫でる。ガサガサで、常に肌荒れし、爪は短く、ネイルなどとは縁がない。働く看護婦の手だった。
「好きな人との赤ちゃん生みたいって将来の為にがんばるんで、ええんとちゃう?」
「うん」
「あやのおねーちゃんも………ぼくが辛い時、助けてくれる?」
「当たり前やん。看護婦さん、看護婦さん❗️護ってあげるって❤️」

その時が楽しみで仕方ない。

「そろそろおいとましよか」
凡そ30分。これ以上は宜しくないと判断し、あやのはそう切り出した。坂口も、小さく頷いている。
「あ、もうそうな時間か。忍ちゃん、お邪魔してごめんね」
「いいの、いいの」
と忍は笑うが、絶対に体調は良くない。
顔色は白い。
「ぼく、今日は手ぶらで来ちゃったし。今度は何かお土産もってくるよ」
なかなか気が利いている。
「あやのおねーちゃん、売店で買い物できるんだよね」
「そうだけど。なんなら、忍ちゃんの体調のいい時に、みんなでお買い物行こか」
「あ、それ楽しみー🎵」
と忍の方が歓声を上げる。
よくよく見れば、彼女の病室は、ところどころに造花やら、ぬいぐるみやらが置かれている。
「あ、これ?親がさ、届けにくるのよ。あんまり私の趣味じゃないんだけどね」
「え?面会できるの?」
「いや、そうじゃなくて。あれ?知らない?物を届けてもらう事は出来るんだよ?宅急便とか、何なら直接、受付に持って来たり」
「で、でも連絡は………」
治療の妨げになるとして、外部への連絡、携帯電話・スマートフォン等の持ち込みは禁じられている。
「だから一方通行。親が勝手に送ってくるのよ」
「そーいうこと……」
「日曜日に纏めて病棟に運ばれるから……今度の日曜日、ゆうくんのとこにも何かあるんじゃない?」
「へえ……」
そう言われ、ちょっと両親が恋しくなった。
「なんも無かったらごめん❗️変に期待させて勘弁❗️」
「ううん」
笑い、
「じゃーね、忍ちゃん。また来るね」
「うん。ありがとね」
元気よく手を振り、ゆうは1138号室を後にした。
「ほな」
会釈して、あやのも続く。
「ありがとうございます」
坂口看護婦が小さくそう述べて、一礼し二人を見送った。
きっと、
体力は消耗してもメンタルはこの30分で大幅に寛解かんかいしていることだろう。
これはメランコリックになっている忍の為のケアだったのだ。


翌日。
入院六日目となる。
あやのから昨日『明日は休みだから』と告げられていた。つまり、朝からヤツが現れる事となる。


「ちぃーっす🎵」
今日もやってきた夏美は、登場するなりずけずけとベッドに上がり、ゆうと肩を組んだ。
特に必要もないだろうに声を潜めて、
(今日はリベンジばっちりだよん🌟)
と耳打ちする。
「な、なに?何のリベンジ??」
さっぱり分からないので訊ねると、
「おっ・風・呂っ♨️」
「…………」
先日の妙な機械浴というものの事を言っているのだ。あれはあれで、楽しかったのだが、個室を用意出来なかった事を夏美は痛恨のミスと感じていたらしい。他のこと考えろよ。
「お昼から何時でも入れるぜっっ👍」
「あ、そうなの」
というか、お風呂の日はどうしていつもこの看護婦なのか。お風呂そのものよりも、この女を替えて欲しかった。
とは言え、フツーのお風呂に入れるのは有難い。
「じゃあ、お昼の後、入るよ」
昼風呂というのも気持ちよさそうだ。親切を快く頂戴し、答えると、
「その前に浣腸でーす🎵」
そういう事になった。

「ゆうくん、がんばろー❤️」
ヘルプに現れた小田歩美が左側へ、ベッドを挟んで夏美と向かい合う。二人はゆうのお尻の下に以前と同様にテープおむつを拡げて敷き、穿いているリハビリパンツをずり下ろした。歩美に足首を掴まれ、抱え上げられる。
丸出しの肛門に夏美の手袋を嵌めた指が触れた。
「ね、ねえ、どうしてもしないとダメ?」
「なーに言ってんだよ❗また三日間、お通じないんだから、しょーがないっしょ❗」
と歩美が肛門にワセリンを塗り、ほぐす。
「ゆうくん、ちっちは出来てるけどどうしてもうんうんは出来ないからねー」
歩美は幼児に接するように優しくそう述べた。
「それはそうかもしれないけど……あの、でも指を入れたりはヤだよ」
三谷看護婦に摘便されたのはトラウマと言っていい。うんちを指で掻き出すなど、こんなショッキングな経験はない。色んなものが破壊された気がした。
「三谷さん、厳しいからなぁwww」
「だよねー🎵あーしと小田っちだから、そんなんしないっての👍」
「…………」
そうなのか。
確かに、この二人は若いし雑な部分も多々あるが、その分、甘い。ベテラン看護婦にはない、変に優しい部分があるのも事実だった。
少し安心していると、
「だからちょっとがんばろーぜいっ❤️」
夏美が取り出したのはシリンジ……巨大な注射器とそれに繋がった長いチューブ。一体、何CCあるのか定かでない、先日のイチジクなど比較にならない巨大な浣腸だった。
「えっ?ちょ、なにそれ!?」
「動かなーい❗️」
「ゆうくん、お口でゆっくり、ふーって息しよ」
少年の驚きと困惑など一切シカトして、浣腸器のノズルに繋がれたチューブが肛門へと侵入する。
細いその管は、怖いくらいに体内に潜り込んでゆく…………
「うわっ?わっ、わっ、ああっ!?」
一体、自分の体のどこにそんな管が入るのか、分からないくらいに挿入を許し、
「お薬入りまーす💕」
「我慢してねー❤️」
薬剤が注入される。
お腹が冷たい。
ぐるるる、と直ぐ様お腹が鳴り始める。
「ちょ、や、やだ、苦しいよぉ………」
看護婦たちは手を緩めない。
あっという間の筈だが、永遠にも感じられる時間をかけて、シリンジはグリセリン溶液をゆうの直腸へ注入し終えた。
「はい、五分我慢だよー💕」
チューブが抜かれ、歩美がおむつを穿かせる。
「む、無理だって………」
五分どころか、一分も耐えられそうにない。
下腹は膨らみ、尻は悲鳴を上げている。
「そうそう❗ねえ、っちゃん聞いた?」
「なになに小田っち?」
左腕左足を歩美が、右腕右足を夏美が掴み、仰向けのままお尻を浮かせ押さえつける。
「この前、ゆうくんと石黒先生に変な体操させられた時さぁ、絡んできたイヤな女❗️あやのさんがシメたらしいよ❗」
「マジ?超ウケる~っwww」
「なんかうちのフロアのナースステーションに来てさあ、ペコペコ頭下げてったってwww」
「やっべ❗何したんかな、あやの先輩?超ヤキ入れてるじゃん❗」
「だよねー❗超すっきりしたーwww」
「いや、それ違……」
「え?なんて?」
「ゆうくん?」
お腹が痛くて脂汗が出る。
とても喋れない。
「それでさー、あの女、下の名前が“愛”だっていうのよ?超似合わないよね❗」
「マジ?いいな、愛って😵あーしも愛が良かったなー❗超うらやましー❗」
「全然、愛って感じじゃないもんね❗冷とかの方が
似合ってるって❗️」
「ぎゃはは❗エアコンかよwww」
「あんな女がナースやってるなんて、わだずはみどめねーずら❗」
「あーしもー」
「おめもあれだんべよ❗ふづーありえねーべ❗」
「何言ってんのか分っかんね」
「あ、私、また訛りが😳」
「訛りなんてもんじゃなくなくない?重りじゃね?」
「ひっどい❗ぢょっどだべ、ぢょっど❗」
「全部鼻声じゃん❗鬼やべえ❗小田っちマジウケるんですけど~っwww」
ぶびゅっ、ぶびびびびびびびびびびっっっ❗️❗️❗️
びゃ───────っっ❗️❗️❗️❗️❗️
「あ、できた?」
「ゆうゆう、結構我慢できたじゃん🎵えらくね?」
「はぁはぁ………」
大量の排便も、彼女たちには日常のことらしく、荒い息を吐く少年を置き去りに、おむつが剥ぎ取られ、便を拭き取りながらもお喋りは続いた。
やはり此処は病院なのだ。
非日常が日常の空間の異様さを少年は、改めて感じた。

「わぁ、広いね🎵」
午後になり、待望の個室での入浴となった。
夏美に案内された浴室は、想像以上に広かった。家のお風呂の数倍ある。勿論、それは看護婦が介助する為なのだろう。
手すりが沢山ついているし、介助用の椅子も備えられている。広い浴槽は低く、浅い。事故を防止する為であろう。
「良かったっしょー🎵」
「うん🎵」
「好きに入ってていいよん🎵」
「ありがと、夏美ちゃん🎵」
そう言って夏美は浴室から出て行った。
現状、ゆうは介助など必要ないので、蒸し暑いお風呂に一緒にいる理由もない。
この広く大きいお風呂で好きにしてていい、というのは子供心に堪らない。
取り敢えず、シャワーを出してみる。適度なお湯で、体を流した。昼前に排便したお尻を備え付けのボディソープでよく洗っておく。
頭からシャワーを浴びる。
暖かいお湯が脳天から爪先までを流れてゆく。なんだか生き返った気がした。
ほどほどに洗って、湯船を跨いだ。かなり低く、広いわりに浅いのは、温泉やクアハウスのようだ。
浅いから胸までしか浸からないが、広いので寝そべる事が出来る。何なら、ゆうくらいなら泳げるくらいに広い。大人五、六人は優に入れる広さがある。
泳いじゃえ、と思い、ざぶんとゆうはお湯に潜った。そのまま数メートル潜水して、顔を出す。超短距離水泳だが、楽しいのでそれを繰り返す。
両親と行った海水浴の宿のお風呂を思い出した。
どぼん、と仰向けに潜り、何秒息を止められるか我慢してみる。
「………………」
水中で色々な事を思う。
まだ入院して一週間も経たないが、以前の日々は遠い昔のようだ。
クラスメイトたちはどうしているだろうか………
自分が去勢休学第一号になるわけだが、もしかしたら誰か二号も出てるかもしれない。同じ病院、同じフロアに入院してきたら楽しいのにな、とか少し思うが、お互いおむつの恥ずかしい姿では顔を合わせづらいな、とも思う。
急に委員長、関口麻衣と保健委員、斉藤ゆかりの顔が浮かんだ。入院の日、学校に挨拶に行くと、二人とも涙ぐんでいた。あーあ、こんな事になっちゃったよ、今の姿は見せられないな、と苦笑する。
「ぶはっ💨」
笑った瞬間、息を吐き出してしまい、堪らず浮上して空気を求めた。
「はあっ………」
恐ろしくのんびりした時間。
入院以来、初めてかもしれない。
それは─────
「なーにしてんのよ?」
夏美の裸に破壊された。

「なななな夏美ちゃんっっ!!!!????」
「そうだよ?」
「いや、あの、な、なんで………」
「あーしもお風呂入りたくて🌟」
理由になってるようで、なってない。
白衣はおろか、下着もない。申し訳程度にバスタオルを巻き付けただけの夏美は、それすらあっさりとはだけてシャワーを浴びた。

ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。。。。。。。

「…………」
何と言えば良いのか、どうしたらいいのか分からない。
ゆうは頭が真っ白だった。
「あー気持ちいー🎵ゆうゆう、おいでよ🎵頭あらったげるよん🎵」
「…………」
そう言われ、おずおずと湯槽から上がる。一応、前を隠すが、目の前の夏美はほぼ隠してもいない。
目のやり場が何処にもない。


「あっは❗緊張すんなって🎵子供相手なんだから、なんも気にしてないっての👍超かわいいwww」
促され、椅子に座った。
「はい、目えつぶってー🎵」
お湯をかけられ、シャンプーが髪を泡立ててゆく。
ごしごしと掻き回す指先が心地よく、ぶつかる乳房にドキリとする。
短い少年の髪は、あっという間に洗い終わった。
シャンプーを洗い流すと、髪の毛の水気をざっと切り、トリートメントをつけてこねくり回される。
「じゃあ髪の毛に染みてる間に、体洗おうぜー💡」
夏美はスポンジを手にして背中をこすり始めた。先日も心地よかったが、これは間違いなく心地よい。
よいのだが、背中をこすり終わると、背後から手を回してきた。それが胸や腹、陰部へと伸びてゆく…………
「ちょっと………」
「これ超洗いにくいんだよね」
介護用の椅子なので、普通のお風呂の丸椅子と異なり、背もたれがあるし、小さく肘掛けもついている。それが邪魔なのだ。
「そっちいくわ」
「えっ!?」
正面に夏美が回りこんできた。
丸出しだ。
豊かな乳房が目の前にある。
「ホラ、動かねーの❗」
目の前に全裸の看護婦がひざまずいて己の体を洗っている。
ごしごしとスポンジが動く度に、乳房も揺れる。
ゆうはもう、目を閉じることにした。
すると、
「はい、足開いてー🎵」
太ももを押し広げられ、夏美の手とスポンジが、陰部へと襲ってきた。
目を閉じてもこれでは効果がない。
またもや、ゆうの陰茎は角の如くそびった。
「おー、すごいすごい❗何度見てもウケるわwww」
そして今回も、ぬるり、と包皮を剥かれた。汚れた先端を洗い流されてゆく。
「あーしもキレイにしよっと🎵」
ゆうの体を粗方清めると、夏美は己の体もスポンジでこすり出した。腕、脚と磨き、そして、
「ゆうゆう、背中お願ーい😁」
「え゛っ!?」
スポンジを渡される。夏美は屈んでくるりと背中を向けた。
「…………」
その白い背中を、おっかなびっくり、スポンジで洗っていく。
「あー、気持ちいい🎵そこそこ👍」
うなじに掛かる金髪、肩甲骨の膨らみ、脊椎の凹凸、丸い尻…………
震える手で洗っていった。
「ん💕ありがとっ🎵」
満足したらしい夏美が正面を向いた。スポンジを受け取ると、立ち上がり、それで局部を洗い出す。
「、、、、、、、、、、」
眼前で、夏美の性器が泡ぶくになり、拡げられたり、引っ張られたりしている。恥毛は薄く、陰核は膨らみ、ひだは濃い桃色に……………


「な、夏美ちゃん…………」
そんなの丸出しにしたらダメだよ❗と言い出せず、少年は顔を背けた。
「………ゆうゆうもこーゆーのとお揃いになるんだかんねwww」
言われてみれば、確かにそうなのだが。
直視するのは、ツラい。
両親の裸は見慣れているが、そんなにじっくりアソコを見たことなんかない。
見ておいた方がいい気もするが、マズいという気持ちの方が、若干勝る。
少年が悩んでいると、
「じゃあ、おっぱい洗お🎵」
夏美は陰部を洗い終え、胸に取りかかったようだ。
ほっとするのも束の間、

むにいっ

妙な感触が股関を、正確には陰茎を包んだ。
「!!!!????」
ゆうのペニスを、夏美の乳房、その谷間が包み込んでいた。挟まり、食べられている。
「ちょ、な、なに???」
「こーやって洗ったら楽しくね?」
ボディソープでつるつるになった乳房に挟まれた少年の陰茎は、上、下、上、下と、こすられてゆく。

ぐっちゅ
ぐっちゅ
ぐっちゅ
ちゅっぽん
ちゅっぽん

凄まじく淫靡いんびな音がした。
「うわっ、だ、だめ…………」
一部の男性所有者の間でパイズリと呼ばれる行いは暫く続いた。
ゆうのそれは透明な粘液をたらし、ガチガチに猛っている。
物凄く、悪い事をしている気がして泣きそうになった頃……………
「はーい、超キレイ❗てか、あーし疲れちったんだけど?ゆうゆうも、湯槽入ろ🎵」
例の痙攣がくる直前で、パイズリは終わり、シャワーが泡ぶくを洗い流した。
精液は発射されていない。
頭からお湯で流され、排水口へ流れてゆく液体の中に、透明な粘液も混ざっているだろう。
心臓が暴れている。
見えない何かに意識を引っ張られているような気持ちで、ぼうっとしたまま、ゆうはされるがままに体を流され、浴槽に浸かった。
「あー、生き返るわ~💕」
その後、お湯のかけっこなど行い、たっぷり入浴を満喫して脱衣所で夏美に体を拭かれても、体の火照りと陰茎の硬直は治まらなかった。

夜半。
ゆうの疼きは治まらなかった。
それは耐え難く、だが、ナースコールを押すのも躊躇われた。あやのがいれば、相談できるかもしれないが、今日は非番だ。
その衝動はどうしようもなく、自分が自分でないような感覚を自覚した。
夏美の体が頭から離れない。
散々、布団の中で煩悶はんもんとし、輾転反側てんてんはんそくし続けた。
一体、何時なのか。
看護婦の巡回ラウンドはまだない。
いや、カメラが点いている。
だが、布団の中でなら……………
ゆうは、おむつ越しに陰茎をこすり、やがて射精した。
強烈な快感と、それ以上の『やってしまった』という罪悪感、そして、支配されているような恐怖。
眠れぬ夜は夜明けまで続き、止めどない衝動に、再びゆうは自涜に耽った。
見回りにきた看護婦に激しくおむつをこすりながら痙攣する姿を発見されたのは言うまでもない。
自分は発情期の畜生以下ではないか。
自分があって陰茎があって、ではなく、陰茎に支配されている、乗っ取られている。このままでは、どうなるのだろう?
もっととんでもない有り様に…………
狂ったように股関をこすり、精液でどろどろのおむつを交換される、こんな姿は誰にも見られたくない……………
委員長や、ゆかりには、
絶対に見せられない。
あってはならない。
切実にそう願った。


(了)

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