ステルベン改造手術室
「うっ」
頭が痛い。
意識が朦朧とする。
目が覚め、起き上がろうとするが体に力が入らない。何より頭が痛い。
暫く足掻いている内に、
「あら?気がつきました?」
女の声がした。
そちらに目をやると、異様な格好の人物がいた。
手術着というやつだ。
目が霞んで上手くピントが合わないが、医者か看護婦だろう。という事は、ここは病院か?
頭が痛い。
事故か病気か、それで病院に運ばれたのだろうか………
徐々に視力がはっきりしてくると、頭上に異様な物が備えられている。無数のライトが組合わさった照明器具、無影灯というやつだ。
では、手術室か?
手術を受けたのか、これから受けるのか。
不安になり、女に尋ねようとするが、舌も喉も上手く言う事を利かない。
「……あ……の……ここ……どこ?」
掠れ声で、ようやくそれだけ言葉にした。
「ここは改造手術室ですよ」
手術着の女はにっこりと微笑んで答えた。
改造?
手術??
「な、なに……??」
理解できず、痛みを堪えて飛び起きようとしたが、体は動かない。動かない訳だ。動けないようにされていたのだから。
四肢を広げ、手首で抑制帯により拘束され、更にベルトで膝と肘、腹、胸を手術台に括られている。その上、ウレタンなどの固定具で下肢と前腕、胸部、頸部、頭まで挟まれ、テープと包帯で雁字搦めにされていた。
びくともしない。
「動かないで。危ないですからね」
「な、なにする……ん…だ」
「改造手術です」
答えにならない答えに恐怖し、踠くも、殆んど動けない。無駄に足掻く内に、激痛が脳天を襲ってきた。
「ううっ痛い」
「ごめんなさい、神経にふれちゃったわね」
別の声がした。
姿が見当たらない。
いや──────
頭のてっぺん、視界のはじっこに手術着の人物がいるのが朧気に見える。
何をして…………
気がついた。
「や、やめ………うぁああぁぁあぁぁぁ」
「手術中ですから、静かに」
看護婦にたしなめられるも、途切れ途切れの絶叫は止まない。
頭痛の理由が分かった。
脳の手術をされているからだ。
頭に穴を開けられ、脳をいじられている…………
「や、やめて………助けて……」
ピッピッピッピッと、心電図モニターの心拍数が跳ね上がる。
それまで気付かなかったが、室内には他にも数名がおり、慌ただしく動きまわっていた。数名がモニターに目をやる。
「全身麻酔しますか?」
「この程度なら要らないわ」
女医は冷徹に言い切って、脳手術を続行した。
頭側にも複数無影灯があり、そちらは点灯しているようで、よく見えないし、分からない。
「鎮静剤増やします」
点滴を追加しているらしく、言葉がほぼ出なくなった。
「ではこちらも始めましょう」
別の女医の声がした。
下半身が持ち上げられる。
足を開き高く掲げた砕石位という姿勢で固定された。
股の間に陣取った女医が、素早く陰部を消毒してゆく。
のみならず、もう一名が右側に立って、下腹部を消毒し始めた。
まさか、
うそだろ、
目玉だけが目まぐるしく動き、心拍数を表す電子音がけたたましく鳴り続き…………
全ての無影灯が点った。
目映い光に包まれてゆく─────
「開腹する。メス」
器械出しの看護婦がメスを手渡し、それが女医の手によりへその下へと入った。
「あ゛っ……ぎゃ…………」
切り裂かれる皮膚。
脳と違い、リアルな激痛。
しかも光の中、一部始終が見えている。
陰茎まで切り開かれ、開創器をねじ込まれて術野という傷口を拡げられ、意識が遠退いた。
「こちらもアプローチします。メス」
正面、両足の間の女医がメスを受けとる。小さいものだが、切れ味は変わらないだろう。
それが、素早く陰茎に触れた。
ずっ、ずっ、ずっ、ずっ、、、、
「な゛ぁあ……ま゛ぁぁぁぁ❗❗❗」
意味不明の悲鳴が溢れる。
ペニスを、切られている。
瞬く間に、陰茎は切除された。悪夢のような激痛と、恐怖。
そうする間にも脳を切られ、下腹部から臓器を摘出されてもいる。
どうやら、生殖器を取り除き、その上、尿道と肛門を繋げて会陰部に総排泄口を形成するつもりらしい。
ということは、
「まずは左」
女医は左の陰嚢を掴み皮膚を切開した。
精巣が引きずり出されてゆく。
力ずくで、乱暴に引かれ、捻られる。
これまでで一番の激痛に失禁した。
尿も便も垂れ流した。
尤も、陰茎も直腸も、最早正常には存在せず、股関から尿が溢れて、腹部からは便がどろどろと流れた。すかさず、看護婦が注射器からの生理食塩水で洗浄してゆく。
「やめでえ゛……ゆる゛じでえ……」
血と薬品と汚物の臭いが充満する中、泣いて哀願した。
左の精巣が、
摘出された。
「いだい゛ょう゛もうや゛め゛で手術じな゛い゛で」
右側の陰嚢を切開されながら、泣いて許しをこうた。
しかし医師も看護婦も、一切、聞く耳などもたず、手を緩めない。
「ぎゃぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛」
右の精巣も摘出された。
そして、陰嚢そのものがジョキジョキと切り取られていく。
大量出血に看護婦たちが輸液を増やしている。
女医は一際大きなメスを陰茎のあったキリカブへとあてがう……………
ぞ
ぞ
ぞ
ぞ
ぞ
ぞ
ぞ
「たずげでえ゛ぇぇぇ」
尿道から肛門が一直線に切り開かれ、繋がった。
例え、中世暗黒時代の拷問でも、こんな仕打ちはないだろう。
血だか尿だか便だか分からないものが溢れていく。
陰部を処置する二人の女医は、それらを吸引し、夥しい数の鉗子を突き刺しては血管を止血し、必要な臓器を残して不要な臓器を切除してゆく。
やがて、肛門からへそという巨大な何かが形成されていった。
痛みは次第に無くなり、脳の一部を切り取られ、機械を埋め込まれた頃には自発呼吸が止まり、気管挿管された。
意識が戻ったのは二日後。
脳改造手術により最早、苦痛は感じず、この素晴らしい肉体へ生まれ変わらせて頂けた事への感謝と感動に満ちていた。
「気がついた?手術は成功よ」
看護婦が優しく微笑む。彼女は医療秘密結社ステルベンの幹部で、実行部隊の指揮官マッドナース鴉夜乃というらしい。ぼくの直属のボスとなる。
「さあ、あなたの名前を言ってごらんなさい」
はい。ぼくの名前は…………
「オムツニモラシー」
怪人オムツニモラシー
下半身全てが総排泄口となり、その巨大な下半身の口で、あらゆる物を吸い込み、丸呑みにする。更には、あらゆる体液・排泄物を噴射する。それらをコントロールする為におむつが欠かせない。排泄は快感であり我慢も快感である為、常にギリギリいっぱいの不発弾のような変態。
布おむつは苦手。
改造手術のトラウマと性癖の覚醒により幼児退行しており、年上をみると『ママ』と呼んでしまう。
夏場はかぶれやすい。
こうして悪の手先がまた一人。
人類変態化計画は着実に進んでいる。
あなたのベッドサイドにも白衣の天使が………
さあ、手術の時間ですよ💕
(了)
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