嘘つき

「何 その顔」
「私の事は、忘れてもいいから」

彼女は目に涙を浮かべつつ、笑いながら言った。その言葉にはうまく笑えていない僕に対する彼女なりの優しさが詰まっていた。僕が抱えている不明瞭かつ薄暗い感情はきっと彼女に見透かされているのだろう。

「また笑って誤魔化してるでしょ、嘘つきだなあ」

彼女の口癖が脳裏によぎる。
お互い様なんだよな、いつも。僕は笑って誤魔化している彼女の涙をそっと拭いた。

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