元国家公務員のひとりごと 1

公務員にはいくつか種類がある。大まかに言えば国の公務員・県の公務員・市町村の公務員だが、その中にも実はカテゴリーがある。昔は上級・中級・初級となっていたがⅠ種・Ⅱ種・Ⅲ種を経て、現在は総合職・一般職のほかに専門職となっている。

私は30年以上前、国家公務員になった。一次は筆記、二次は面接、そして合格したあと、各省庁出先での面接を受けた。その後結婚し、夫氏の転勤が決まり退職して現在は専業主婦だが、約20年のあいだたたき込まれた知識は今も役に立っているし、創作の一助にもなっている。が、自身が元公務員だけに役所の対応に敏感になっている。母の介護にかかる手続きで市役所に行く機会が増えたことで公務員とは何か、公僕とはなんぞやと考えることが増えた。

公務員は【公僕】だ。大まかに言えば税金から給料をもらっている。だからよく言われたものだ、「自分たちの税金で食ってるくせに!」とか「給料泥棒」とか、相談者の意にそぐわない回答をしたときに。
ぶっちゃけて言えば国の制度は分かりづらい。どんなときにどんな助けがあるのか網羅している国民はそうそういないと思う。もっと言えば、なるべく金を出したくないから知らない国民が多い方が国や自治体は支出が少なくなるし、制度を利用する人間が少なくなると必要性がないとお国は判断してしまうのだ。

公務員を退職したあとある民間企業に就職した。元職が社会保険事務所で、健康保険や年金の課をひととおり経験したから雇われたようだが、傷病手当金や出産一時金、高額療養費の貸し付け制度について会社の担当社はほとんど知らなかった。知っていなければならないというのに。だからそこの会社で一番最初にやったことは、職員たちに制度をわかりやすく伝えることだった。その後すぐに私は夫氏の転勤で県外に出ることとなり、もともとの担当社に引き継いでもらったが、どうなっただろうか。その会社はコロナ渦の煽りをうけて倒産してしまったから、今となっては知るよしもない。

健康保険については、年に一度その後一年間の保険料を決定する審査がある。「算定基礎」というものだ。このとき外部団体が健康保険のガイドブックを販売しているのだが、企業の社会保険担当者はその本を頼りに仕事をしたり、職員からの相談にのっていたと思う。が、本来ならば職員一人一人が分かっていないといけない制度がほとんどなのだ。

例えば、業務外で病気になったり怪我をした場合、連続して三日休んだ翌日から【傷病手当金】というものがでる。(その間無給であることが条件)
それに同一の病気で医療費が月六万を越えたら【高額療養費】が支給される。前述した【高額療養費の貸し付け】は、政府管掌健康保険が支給するべき高額療養費で相殺される。

また年金だって、高齢者だけの話ではない。障害年金・遺族年金など、知らなければ損をするものばかりだ。

また、【業務上の事故】で怪我をした場合受ける【労災】や、【失業給付】についても本来は働く人間なら知っておかなければならないものだ。しかし、今までいろいろな職場を経験したが、ちゃんと知っている人間はほぼほぼいなかった。だからこそ、公務員は制度について網羅していなければならないのだ。それを実感した。だが、公務員は自分の職域以外の制度についてはほとんど分からない。縦割り行政の悪いところだと本当に思う。

だから私は個人的に、学校で人の一生を学びながらこういうときはこういう制度がありますよという授業があっていいと思う。

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