妊娠初期の演奏活動

前回の記事に続き、今回は妊娠初期の前半(二ヶ月〜三ヶ月)についてです。妊娠中の体調の事は本当に人それぞれだと思うのですが、私なりに演奏活動をする中での妊娠について経験した事感じた事を書いてみます。

妊娠については過去に何度か辛い出来事がありました。今回もどうなるかわからないという気持ちがあったので仕事関係ではマネージャー1人だけに報告するに留めました。
妊娠が発覚したのは7月の終わり。まだ超初期段階で（妊娠5週くらいだったんじゃないかな）、ちょうど数日後がプリンセスコンサートという毎年演奏させて頂いていたコンサートを控えている時でした。
また8月にすぐショパンのピアノ協奏曲のリハーサルと本番、更にその半月後にはチャイコフスキーのピアノ協奏曲の一日二回公演、等というハードなスケジュールが予定されていた事もあり私の脳裏に浮かんだのはどちらかと言えば子供の事というよりつわり等が始まってしまって仕事に行けない状態にならないか、演奏家としての喜びであるコンサートに出演できなくなったら、、、お仕事関係の方々にご迷惑をかけてしまったら。。。そちらの事で頭が一杯になりました。

いつでも子供は望んでいましたが、そのことに関しては無事妊娠継続とならない事が長く続いていたので半ば諦めがあり、そういう意味では「演奏のお仕事が一番充実してきた今、この一番忙しい時。なんでこのタイミング！？」という困惑もありました。
仕事に穴を空けたくない、人に迷惑かけたくないからとしっかり計画を立てたつもりでそれが計画通りうまくいく事もあるけれど、逆に全く予定通りにはいかないことの方が多いのかも知れません。

初期は結構出血が続いていたのでしょっちゅう病院に電話をしたり駆け込んでいたと思います。
不安な日々を過ごしながら「1日中ピアノを弾いて本番をハードにこなしているから体調が安定しないんじゃないか」と考えて、それでも母となりたい、なろうとしている自分に腹が立ったり。色々な思いで1日1日を過ごして安定期に入るのを心待ちにしていました。

幸い一番心配していた悪阻が殆どなかったので、（吐き気は多少あったし、乗り物酔いが結構ありました。）食べ悪阻かもしれないと思いお医者さんには常にクッキーをバッグに入れておくといいとアドバイスしてもらいました。私は少し気分が悪くなるとグレープフルーツ味のゼリーを食べたりしていました。
食事はお腹が空いて食べ始めてもすぐに満腹になる感じでした。
結果的には和歌山や徳島、静岡、東京⇄関西等の移動もなんとかこなす事が出来、娘には一生分の親孝行をしてもらったんだと思うようにしています。私の願っていた仕事を全て楽しく演奏させてもらえたことは私にとってはとても大きなことであり喜びでもありました。

それから冒頭に書いたように、安定期に入るまではマネージャー以外には言わないと決めていたので（皆さんに余計な心配をかけることになる為）四ヶ月になるかならないかで早くも膨らみが人に分かり始めた頃から洋服やドレスの選び方に苦労しました。私は小柄なので初期からお腹の膨らみが目立ちがちで特にドレスは身体のラインが出るものが多いので、隠せるようなドレスを購入したり、演奏時以外は上着で隠したりそういうことに神経を使うことが大変だったのと、打ち上げやお食事会などきちんと理由も言えずにお断りする事も多くて失礼な事をしたと思います。
また運良く参加できても私が大好きであろう生の食べ物を避けていたりアルコールやカフェインを取らなかったことで「体調が悪いのか」と沢山聞かれる度に申し訳ない気持ちになったりとそういう苦労がありました。

演奏時のマイナートラブルはこの頃はなかったように思います。家族やお医者さんはチャイコフスキーやラフマニノフの協奏曲などを演奏する時に冷や冷やして見守ってくれていたようですが私自身は有り難い事に普段通り全力で演奏できました。

当時は子供の存在を確かめる術が検診しかなかったので、エンジェルサウンドという心音を聞くことの出来る道具を演奏旅行等にも持ち歩き無事を確認していました。

そうして1日1日必死でこなしていくうちに、これまでと違う少し強い精神が育まれたような気がします。
母親になる以上は強くならなければやっていけない、これまでのように演奏会に向けてグジグジグジグジと不安になったり悩んだりしている様では母としても演奏家としても務まらない。また一つ殻を破らなければいけない段階に来たんだなと覚悟しました。

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以下、この投稿に関係する写真です。
1枚目、プリンセスコンサート
2枚目,3枚目　茂木マエストロとショパンコンチェルトの際に
4,5枚目　大阪交響楽団の皆様と小林マエストロとチャイコフスキーコンチェルト
6枚目　川越にてのだめコンサート、室内楽

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