AYAME便りVol. 3 編集後記
皆様こんにちは。日本では新年度が始まり早いもので2週間が経ちましたがいかがお過ごしでしょうか?ベルギーでは「第三次ロック・ダウン」という名のいつもより長いイースター休暇が終わり、ようやく春らしい日差しが感じられる中、AYAME便りも3回目を迎えました。いつもご視聴くださり本当に有難うございます。Youtube ページはこちらです。
さて、今回の配信では、フルートとヴァイオリンの為の二重奏を取り上げました。AYAMEが主なレパートリーとしているギャラント様式の音楽作品の中でも二重奏作品は、「2本のフルートの為~」や「2丁のヴァイオリンの為の~」といったように同族楽器によるものが多く、私達も時々、ルクレールやギニョン、ヴェルヌーブによるフルートあるいはヴァイオリンの為の作品を編曲してプログラムに取り入れるのですが、実は、この編成のオリジナルの作品というものはあまり例がありません。
そういった意味で、今回取り上げたカール・フィリップ・エマニュエル・バッハ(174‐1788)による《フルートとヴァイオリンの為のデュエット Wq. 140 ホ短調》は、作曲当初からフルートとヴァイオリンを想定して作られたとても珍しい作品といえます。同作品は、エマニュエルが時のプロイセン王、フリードリヒ2世(1712-1786) に仕えていた1747年に作曲されましたが、出版はずっと後になってからで、彼がハンブルクへ移った後1770年に発表した「Musikalisches Vielerley」という、同時代のドイツの作曲家達による様々な小品を集めた作品集の中におさめられています。数多くの「フルート、ヴァイオリンと通奏低音の為のトリオ・ソナタ」を作曲したエマニュエルの作品らしく、2つの楽器がとてもよいバランスで書かれており、音楽面においては当時ベルリンで流行した「多感様式 Empfindsamer Stil」の少々感情的で移り気な様がよく表れています。
ところで、エマニュエルが仕えたフリードリッヒ2世(フリードリヒ大王)は、フルートの名手としても知られていますが、数年前、AYAMEはイタリアでの演奏旅行中に、現地でお世話になったオーガナイザーのご厚意で、大王の所有していた象牙のフルートというものに触れる機会に恵まれました。楽器の保存状態を維持する為に、短時間の試奏しかかなわず、音源がないのが残念ですが、大王が立てた宮殿のようにまさにSans Souci(憂いのない)その響きは格別で、忘れがたい思い出となりました。今回、野崎が使用しているのはG.A.ロッテンブルクという楽器ですが、ポツダムの宮殿でフリードリヒの愛した音色を想像しながら聞いていただければ幸いです。
AYAMEアンサンブル・バロック
鳥生真理絵 (ヴァイオリン)
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