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AYAME便り VOl.2 編集後記

 3月中旬に定期動画配信いたしました 「AYAME便り Vol.2」、今回はクラヴサンの音色をお届けしたいという想いから《Clavecin × Accompagnement de Violon 》と題し、J. デュフリ作曲 クラヴサン曲集第 3 巻より ラ・マダン/陽気に (La Madin /Gay)を選びました。

 デュフリについての詳しい説明はまたの機会にまわし、先ずは皆様、動画映像内のヴァイオリニスト鳥生の立ち位置がいつもと異なることにお気づきになられましたでしょうか?実は、今回の動画の《クラヴサン × ヴァイオリンの伴奏》という題名には、現在一般的に呼ばれている ”モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ” にまで繋がる面白いストーリが隠されているのです!


 時を遡ること1734年、フランスのヴァイオリニスト兼作曲家であったモンドンヴィルによって初めて「ヴァイオリン伴奏つき鍵盤ソナタ」と題された作品が出版されます。元々18世紀初頭のフランスでは一般的に取り入れられていた、チェンバロ独奏用の作品にヴァイオリン等の旋律楽器がアドリブで演奏に加わるという習慣を、一つのパートとして楽譜に書き入れたという意味で、クラヴサンとヴァイオリンの新たなジャンルを生み出したモンドンヴィルの功績は大変大きなものだったと言えるでしょう。

 そして、これに影響を受けて作曲されたのがラモ ーの名曲《チェンバロとコンセールのための作品集(1741)》です。このジャンルの人気はフランスだけに留まらず、その後ボッケリーニやギユマン、コレット、クリスチャン・バッハ等、ヨーロッパ各地の作曲家へと広がっていきました。そして冒頭で少し触れた、現在一般的に ”ヴァイオリン・ソナタ” と呼ばれているモーツァルトの作品も、本来のタイトルは「ヴァイオリン伴奏つきのピアノ・ソナタ」であり、まさにこのジャンルに含まれるわけです。


 今回の動画を作成するにあたり”ヴァイオリンの立ち位置をどこにするか” は一つの重要なポイントであり、超絶技巧で知られるヴァイオリニストのギユマンですら自分の曲集の序文で「ヴァイオリンは決してチェンバロの音を覆い隠してはいけない」と述べていることや、幼いモーツァルトが姉ナンネル、父レオポル トと一緒に演奏している絵画の中でクラヴサンの譜面台を共有している事などを参考に、実際に色々試しながら決めました。

 動画内では楽譜の一部も出てきますので(1’07’’)、メインであるクラヴサンに遊びを吹き込むヴァイオリンの様子など、2つのパートを見比べて楽しんで頂けたら嬉しいです。

今後も色々な編成でのプログラムを計画中ですので、どうぞご期待ください!!

AYAME アンサンブル・バロック / 名越小百合(チェンバロ)

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