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きっかけの熊野古道(2)


 発心門王子から熊野本宮大社までの、3時間の旅がスタート。

 事前情報で歩きやすい道とは知っていたものの、"古道"と言われるからには多少獣道を覚悟していたが、そんなものは杞憂だった。

 山の中はもちろん、住宅街の中も熊野古道の一部だった。方向音痴の私は町中で反対方向に行きかけたとき、地元住民に「そっちちゃうでー」と声をかけられた。きっと出で立ちで外部の人間だとわかったのだろう。

 歩きはじめて約1時間が経った頃、途中にあった休憩所に寄った。
 今回の旅の楽しみのひとつが、昼食だ。
 中辺路のある田辺市に川湯温泉。そこの温泉民宿「大村屋」が「熊野古道弁当」を販売しており、事前予約すれば本宮大社まで配達してくれるサービス付きだった(2019年当時)

 「熊野古道弁当」は、おにぎりが4つ(すべて具材が違い、南紀名産のめはり寿司は絶対、季節によっては栗や筍も入っている)、おかずはシンプルな煮物が中心。おにぎりは竹皮に包まれており、いかにも旅感が出ているのが購入の決め手だった。味はシンプルにおいしかった、と思う(もう5年前)。

 昼休憩を終え、旅を再開。1時間ほど歩みを進めると、「ちょっとよりみち展望台」という看板が見えてきた。少し急な階段を登ると、熊野本宮大社の旧社地・大斎原(おおゆのはら)と日本一の大鳥居を一望できる開けた場所に出た。


熊野本宮大社の旧社地・大斎原(おおゆのはら)の大鳥居と連なる山々


 私はこの景色に一瞬で目を奪われた。事前に調べた情報の中にはなかったので、より感動したのかもしれない。この景色を見るまでに休憩を含めると約2時間半。その疲れも吹っ飛ぶ綺麗さだった。
 歩いて、登った人にしか分からない、見ることができない景色があることを、このとき初めて知った。

 本格的に山登りを始めるのは、これから3年後の2022年。
その時のお話も、いつか書きたい。


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