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自転車の前カゴを新しく替えた話

自転車の前カゴを替えた。
今までのは、塗装というのかな、ワイヤーに被せられたビニールのようなものがボロボロとほつれて、目に入れるたびに(チッ…)と思ってしまうほどだった。

電動アシスト付で、前にも後ろにも子どもを乗せるための椅子を取り付けていた自転車だった。
その前椅子も、この春取り外した。

もう下の子の脚が収まらなくなって久しかったのに、誰も乗せてない椅子をよけて、ずっとガニ股でこいでいた私。
それが(もう、外しましょう)という気になったのだから、春には人の背中を押す何かがある。


なかなかカゴを交換出来なかった理由。
それは、最初にカゴをボロボロにしたのが、購入して二日目のことだったからだ。

子どもを二人、予防接種に連れて行きたくて、下の子はまだ赤ちゃんだったから抱っこ紐に収納してしまえばいいが、上の子は早く、早く、と何度も急き立て、挙句『もう!』とかキレ散らかしながら自転車に乗せ、病院に向かう途中。

カーブを曲がりそこねて、自転車ごと、転んだ。
子どもたちは幸いにして何ごともなく、病院で診てもらっても『大丈夫』と言ってもらえたが、この自転車にはその後も私の焦りや苛立ちがキズを重ねていくのだった。
私は何度、この自転車で転んだことだろう。

急かさなければ。
充分な時間をとれば。
解決することだと思う。
だけど私は頑なに、子どもに時間を取られたくなかったんだと思う。

あぁ、思い出した。
私は長男の、保育園にお迎えに行くのがとても憂鬱だった。
保護者は玄関口で待つのだが、彼は降りてくるのも、降りてからも遊びに興じてしまい、靴を履こうともしなかった。

他の子は、多少時間はかかっても荷物を取ったり靴を履いたりと、『帰る』方向の動作をしている。

しかし長男には何度も何度も、帰るよと言葉をかけても荒げても、まるで聞こえていないかのようで、私は自分が透明人間になってしまったような、無視されているような気持ちになったし、何よりそうして自分の存在が長男に認識されるのは、たいそう惨めな気持ちだった。
私たち親子の傍を、10組以上の親子が帰っていった。

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自転車屋さんに行って相談したところ、今までと同じものをステンレスで…となると7,900〜9,800と、なかなか素敵なお値段になることが判明した。
子育て応援デザイン、ワイドでたっぷりの荷物を収納できる大きさだったからだ。

今は強化プラスチックの、デザインもお値段もスマートなタイプも出ていた。
しかしこれは、経年劣化でバキッと割れやすいですよ、と言われた。

自宅マンションの駐輪場で隣りと干渉し合う様子をイメージして、やめておくことにした。

今までのよりひと回りサイズの小さい、やはりステンレスのカゴにした。
すごく、軽快な気分。

自転車屋さんは、カゴの取付のみならず、緩んだブレーキをキチッと締め、ライトの位置まで直してくれていた。
こうして丁寧にしてもらって、私はあの時の気持ちが慰められたと思った。
成仏してなかったのね。

古いかごとともに、私の焦りや苛立ち…『拗ね』も手放せていたらいいなと思う。

ありがとうございます!自分も楽しく、見る人も楽しませる、よい絵を描く糧にさせていただきます!