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できないことでできている


若い時に、私はこんなにできないことがある。


とよく嘆いていた。


不器用で、運動神経も悪くて、要領が悪い。


普通の人ができるということができなかった。


運転免許を取る時に、オートマチック限定にも


関わらず、4回試験に落ちた。


周りに4回も試験に落ちた人なんていなくて、


夜中、父親が練習に付き合ってくれたが、


なんでこんなことができないのか?と首を


傾けられた。イライラもされて萎縮して、


絶対受からなきゃと思うと失敗した。


嫁いでから、嫁ぎ先にはマニュアルの車しか


なく、オートマチック限定解除のための


教習所に通った。


この試験にも4回落ちた。


3回目に落ちた日、しばらく河原の辺りを歩いた。


自分がどうしようもなく惨めで、とんでもなく


ダメに思えて、死んじゃいたいと思った。


だいたいなんだ、マニュアルって、わけわかんねぇな。と次第にマニュアル車に八つ当たりもして
死ぬのはバカくさい。と思って公衆電話で迎えを
頼んだ。


どちらも受かった日のことを覚えていない。 


教習所で思い出すのは、ダメな自分で


うなだれている自分だ。


できないけど誤魔化してなんとかしてきたことなんて山ほどある。


難しい公式は覚えられない。


厄介な英語の文法はすりぬける。


玉留めは自己流。なみ縫いしかできない。


りんごの皮剥きは繋がらない。


お化粧はしない。


今の私は、沢山のできないに背を向けて、


誤魔化しながら、取り繕いながらたどり着いた


結果だ。


りんごの皮剥きは、別にカットして剥けばいい。


車は事故に気をつけて乗れている。


糸が止まれば、なみ縫いだけでも、バッグや


子供のリュックは作れた。


数学も英語も理科もわからなくても


できる仕事をしている。


できないことのおかげで今がある。


なんでもできた方が素敵だと思っていたし、


器用な人に憧れもしたが、


実は羨ましいとは思わなくなった。


できないことがあるから、人の優しさを知った。


できないことがあるから、人への優しさを知った。


推しはかり、思いやる根っこには


できない私が手を振っている。


できないことが多いから。


その情けなさも切なさも、人ごとではない。


人は人と重なり合って生きている。


誰かのできる何かに甘えて、できる力を借りて。


誰かのできないに手を添えて、背中を押して。


重なり合うそこはできないとできないのこともある。


誰かのできないは、誰かの心を軽くするし


実は誰かの心を柔らかくすることもある。


できないことでできている。


あなたのできない。よくみてください。


可愛い顔してますよ。


#note
#できるよりできない




お気持ちありがたく頂戴するタイプです。簡単に嬉しくなって調子に乗って頑張るタイプです。お金は大切にするタイプです。