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期せずしてのび太
月曜日。我が家は仕事柄、帰宅するとすぐに入浴する。
夫は、私より早く帰宅しているから、本当は先に風呂に入ってほしいが、意識高い系のためエアロバイクを漕いでいる。
自分だけ痩せて引き締まり、ふてえ野郎である。
ふてえ野郎は、運動を19時には終了する。
なので、私はとにかく18時半に帰っても18時45分に帰っても、19時にはあがらないと、夕飯を準備してくれている義母に申し訳が立たないと思いながら風呂に入る。
急いでも19時に間に合わないと焦り、まだ全裸だったが、「おつぎにどーぞ」と声をかけて、脱衣場のはじっこで頭にタオルを巻き、イメージはダチョウ倶楽部の上島竜兵さんスタイルでちまちまパンツを履いていた。
思いの外、早く、夫ががらりと扉を開けて開口一番
「なんで呼ぶんだよ!」とキレていた。「着替えてから呼べよ。」そりゃそうだ。
「時短だよ。」と言い返した。
脱衣場の角に、ほぼ全裸の上島竜兵もどきの妻。
笑うより先にあまりの衝撃に人は怒りますよ。
火曜日。帰宅はさほど遅くなかったのに、風呂中に割と無視できない電話。
エコーの効いた浴室で、丁寧に対応したら、18時57分。そそくさと洗って流して、またもや、お湯の滴る上島竜兵もどきの私は、「でたよー」と声を張る。
確かに湯からは出た。しかし脱衣場からは出ていない。
昨日のことがあったから、まさかと思っていた夫は、扉を開けて
「またかよ!!本当にどういうつもりだよ。着替えてから呼べって言ってんだろうよ。」と
静かに諭すように叱られた。
人は激昂して、言うことをきかせられなければ、諭す。
「だから、時短だよ。」と言った。
同じことを2回言って理解しないのは、実はそちらも同じである。
ちなみに、半裸で反論である。
オプションで高笑い付きである。
フェイスタオルで前を隠して拭いていると
がらり。と扉が開いた。
まさかの三男である。目の前に半裸の両親。
私はあわあわとわかりやすく、慌てふためいたが、三男は使ったバスタオルを洗濯機にいれて
出て行った。
着替えて2階に上がると、
「さっきさ、おかあ、出たよ。って言ったよね」と言われた。
「うん、時短で、脱衣場はシェアしようかと思って。あと昨日も、上島竜兵スタイルで叱られたから、まさかまたやらないだろうとお父が思っている裏をかいての、でたよーだよ。まさか、お前まで騙してしまうとは…」
「おかあの裸なんてさ、普段見ないじゃん。おれ、コンタクトもしてないから、ダビデ?と思って。」
私は上島竜兵さんを模しているつもりが、まさかのダビデである。
脱衣場が薄暗いことと、三男がコンタクトをしていないという幸運。
期せずしてのび太にしてしまい、申し訳ない。というと、
えっ?お母、図々しいぜ。しずかちゃんじゃなくて、ダビデだって言ってんだよ。
期せずしてしずかちゃん。ではない。
お気持ちありがたく頂戴するタイプです。簡単に嬉しくなって調子に乗って頑張るタイプです。お金は大切にするタイプです。