裁判傍聴 2012年 心斎橋無差別殺人事件 ⑥ 弁護人 最終弁論

(裁判傍聴の内容を忠実に再現しておりますので生々しい表現があります。)

2015年6月18日(木)
弁護人最終弁論

3年前の6月10日、二人の尊い命が突然奪われました。
その理不尽さは到底言葉に表せません。

永遠の別れを家族に告げることもできなかった。

この痛ましい事件を 私達は社会の一員として受け止めなければなりません。

社会の中で誰かが礒飛さんに対してどんな刑を与えるのか決めなければなりません。

今回は、まったく無作為に抽出された一般市民である裁判員の皆さん。
皆さんの手の中に、礒飛さんの命が預けられました。

死刑とは、人が人に下す最も重い刑罰です。

科料、拘置、罰金、禁固、懲役、死刑

6種類ある刑罰のうち、死刑だけが 生命そのものを奪うという異質な刑罰です。

かつて日本でも 爪を剥ぐ、目をつぶす、耳や鼻を削ぐ、腕を切り落とす という残虐な刑罰が行われていましたが 今はそれらは禁じられています。
だからといって、絞首刑が残虐な刑ではないとは断じ難いのであります。

なぜなら、生命は尊貴であり、一人の生命は 全地球より重いからです。

死刑は「誠にやむおえざる理由」にて、処せられなければなりません。

まと、判決は、公正 公平に裁かれなければならない。
過去のデータに基づいて論じます。

裁判員裁判が導入されてから
①殺人
②単独犯
③凶器あり
④死者2名
という条件下、死刑求刑は13件
そのうち5件に実際に死刑判決が下りました。

ではこの5件の内訳を見てみましょう。

5件のうち、今回の争点である「突発的犯行」「計画的犯行」ここに注目すると
計画的犯行 4件
突発的犯行は1件です。

わかりますか?

死刑とは、よほど よほど、トップクラスに悪質でなければ相当ではないということです。

我々は 礒飛さんの生い立ち そして境遇から鑑みて死刑を科すべきではないと 間違いなく判断しました。

最後に裁判員の皆さん。

どうか 議論を尽くしてください

もし、死刑判決を、下したとしたら 皆さんは一生涯その重さにさいなまれることになること。

死刑囚のことが報じられれば他人事でなくなること。

誰かが死刑を否定したら どうか耳を傾けてください。

あなたの人生経験に 今 礒飛さんの命は委ねられました。
以上。

結審

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