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はたらくとは生きること

女性医師の会、男女共同参画の会、先輩女性外科医からの話、などで幾度となく聴衆に問いかけた「働くとは」という言葉。

そこで初めに話すのはサティシュ・クマール氏の「君あり、故に我あり。ー依存の宣言」にある下の文章。

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虫をも殺さず、あらゆる生き物を尊重するジャイナ教徒で粛々と食事を用意し編み物を編む母が根底にある。

昔、研修医だった時、一生研修医がいいと思った。週5日泊まり込んで緊急手術に入り、暇な夜は看護師さんたちと夜のお茶タイムを楽しんだ。今は働き方改革で到底そんなことさせてもらえない。後輩にはそれをさせずにこの仕事の魅力を伝えるという重責だ。子供のように純粋な心で仕事を営めばワークとライフを分けなくてもいいのに、という思いは心の奥に沈めて。

もう一つ講義の中で伝えるのはNoblesse Oblige。フランス貴族に起源をもつ「高貴なる者の責務」という言葉。田坂広志氏が現代にあてはめ、恵まれし物の使命として志を抱いて死ぬまで成長し続けること、と説いてくれている。医師は病院の中で一番給料が高い。これはいい家や高級外車やブランド服を買うためではない。本を買い、勉強し、成長してまたそれを還元するための給料だろう。

西郷隆盛も次のように言ってる。

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私の父は病理医で患者と顔を合わすことはないが1年間に何千もの組織標本を顕微鏡でのぞいて「悪性」「良性」、それ以外の分類もあると思うが、それを診断して患者のために働いてきた。そのような医師の存在を知らない患者が差し出す外科医への袖の下を私は絶対に受け取りたくはない。送ってくるものは受け取り拒否、受け取ってしまったものは送り返した。それが私の矜持だ。患者もそれを理解すべきだと説明してきた。そういうもののために仕事をしているのではないということをどうかご理解ください、と。ただ患者さんもそういう意味ではなく純粋に感謝してくれてるのは分かる。気持ちに負けて農作物、狩猟物はお断りできないこともあったことはここで懺悔しよう。

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西郷隆盛は言う。はたらくとは生きること。外科医が天命かどうかいまだに分からない。しかし死ぬまでできることを探求して勉強し続けようと思う。


#はたらくってなんだろう

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