《神話-17》黄金の林檎
こんばんは。
Ayaです。
今回から3回にわけて、ギリシア神話最大の戦争・『トロイア戦争』についてまとめます。
黄金の林檎
トロイア王は「今度生まれてくる男子はこの国を滅ぼす」という信託を受けていました。このときに生まれたのが王子だったので、王妃ヘカベーは必死に抵抗しましたが、トロイア王は部下に赤子を殺すよう命じます。部下は王妃の悲しむ姿を思い出して殺せず、山の中に赤子を捨てました。この赤子は羊飼いに拾われ、『パリス』と名付けられすくすくと育ちます。こうして不幸の種は育っていったのです。
一方、神々の世界ではティテスという女神と、ペーレウスという人間の結婚式が開かれていました。
ティテスは優しくて美しい女神でしたが、ゼウスをはじめとする男神たちはプロメテウスの「生まれる子は父親を超えるだろう」という予言を恐れ、アプローチしてませんでした。一方のペーレウスは名の知れた英雄でしたが不幸が多く、「テティスと結婚するように」との神託を受けて、テティスに猛アプローチし、結婚にこぎつけたのです。
二人の結婚式に、ゼウスはオリュンポスの神々を引き連れてお祝いに駆けつけます。しかし、争いの女神・エリスだけは呼ばれていませんでした。これに怒ったエリスは黄金の林檎に"もっとも美しい者へ"と書いて、会場に投げ込みます。
我こそはと女神たちが名乗りをあげます。ゼウスの正妃ヘーラー、美の女神アプロディーテ、戦いの女神アテーナーです。ゼウスは責任逃れのため、羊飼いのパリスにこの審判を丸投げしました。
突然現れた女神たちにパリスは驚き、困惑します。ラチが明かないと判断した女神たちは自分を選んでくれたらの報酬を約束します。
へーラーは『史上最高の権力』
アテーナーは『永遠の勝利と栄光』
そしてアプロディーテは
『世界一の美女ヘレネーの愛』
パリスはアプロディーテを選び、黄金の林檎をわたします。
恥をかかされたへーラーとアテーナーは怒って去っていきました。
黄金の林檎を手に入れたアプロディーテは、まずパリスを競技会に参加させ、トロイア王妃ヘカベーと再会させます。赤子のとき殺されたと思っていた息子が帰ってきたと、ヘカーテーは喜び、パリスは王子として迎えられました。このとき、パリスはニンフのオイノーネーと結婚させられますが、パリスはアプロディーテの『世界一の美女ヘレネーの愛を与える』との言葉が忘れられません。
そんなとき、父トロイア王からスパルタとの協定締結に同行するよう命じられました。スパルタにはヘレネーがいますので、パリスは意気揚々とスパルタへ向かいます。
絶世の美女・ヘレネー
ヘレネーはゼウスがスパルタ王妃レダに白鳥に変身して近づき、生ませた娘で、幼いときから美貌で知られていました。(彼女の生誕についてはこちらをご覧ください)
テセウスに拉致されたこともありましたが、兄たちによって連れ戻され無事に成人を迎えることができました。ヘレネーが成人を迎えると、その美貌は世界中に知れ渡っており、世界各地から求婚者たちが集まってきました。あまりにも熾烈な求婚が行われたので、スパルタ王はヘレネーの結婚相手をなかなか決められませんでした。そこで、求婚者のひとり・オデュッセウスが
「ヘレネー自身が結婚相手を決めるが、求婚者たちはヘレネーの身に何かあれば、力を合わせて戦う」
と提案しました。このオデュッセウスの提案は受け入れられ、ヘレネーはメネラオスという男性を選びました。メネラオスはスパルタ王家に婿入りし、二人の間にはヘルミオネーという娘が生まれていました。
そこに、パリスが兄ヘクトルとともにスパルタに現れました。パリスの誘惑を当初は退けたヘレネーでしたが、アプロディーテに命じられたエロスが『金の矢』で射ぬき、恋に落ちてしまいます。パリス帰国の船に財宝とともに忍び込み、駆け落ちします。
ヘレネー誘拐の報に、夫の兄で、ヘレネーの姉クリュタイムミネストラの夫・アガメムノンは激怒、全ギリシア中に挙兵を呼びかけます。
ヘレネー結婚時の誓いを言い出したオデュッセウスは従軍を嫌がりました。新妻ペネロペと生まれたばかりの息子テレマコスがいたからです。狂気を装って従軍を回避しようとしますが、息子を人質にされたため仕方がなく従いました。
アキレウスの従軍
一方、神々に祝われて結婚したティテスとペーレウスの間には、元気な男の子・アキレウスが生まれていました。
女神の子であっても、半神であり、いつか死んでしまう運命です。ティテスはこの運命を悲しみ、この子を不死にしようとします。
冥界の川・スティクスに身体を浸ければ不死になるので、ティテスは実行します。しかし、この時ティテスは流されないようにかかとを掴んでいたため、この部分だけ不死になりませんでした。このことが、のちに彼の運命を決めます。
賢者ケイロンに養育され、アキレウスはたくましい勇者に成長します。勿論トロイアへの従軍を志願しましたが、なぜか死ぬという予言が下されたため、ティテスが従軍を許しませんでした。その上、母の言いつけに従って、女装させられ、スキューロス王女の侍女として働いていました。この女主人には女装はバレており、二人は恋仲になっていました。
さて、ギリシア軍は勇者として誉れ高いアキレウスをなんとしても従軍させたいと考えていました。そこで、オデュッセウスが勧誘を任されました。
オデュッセウスはアキレウスが王女の侍女として潜んでいると知ると、行商のふりをして近づきます。女性向きの商品のなかに、武具を忍ばせていたのです。すでに女性としての生活に飽きていたアキレウスはこの武具に飛びつき、正体がバレ、従軍します。
こうして勇者たちを集めたギリシア軍は大軍を率いて、トロイアへ出発します。
一方、トロイア側もヘレネーの引き渡しを拒否しました。優秀な兄ヘクトルはパリスを批判しましたが、もはや国のメンツがかかっているので、戦うしかないと決意します。またトロイアは頑丈な城壁があったので、人々は強気でした。
アフロディーテ以外の神々のなかでもどちらを支持するか分かれました。恥をかかされたヘーラーやアテーナーは無論ギリシア贔屓でしたし、アポロン・アルテミス兄妹はトロイア側に立ちました。
ゼウスはこの際だから大戦争に拡大させ、増えすぎた人間たちを減らそうと企んでいました。
こうして、トロイア戦争は始まったのです。
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