《神話-10》酒の神ディオニュソス
こんにちは。
Ayaです。
今回は『オリュンポスの12神』最後のディオニュソスについて取り上げます。
前回までに取り上げた『オリュンポス12神』は両親ともに神でした。ゼウスをはじめ男性の神が人間の女性に生ませたり、女神が人間の男性との間に儲けたこどもたちは『半神』と呼ばれています。彼らは特別な力や美貌をあたえられていましたが、我々人間と同じく寿命があります。
そんな彼らでも、ごくまれに功績を残すとゼウスから認められ神に加えられることがありました。ディオニュソスはそのパイオニア的な存在です。
ディオニュソス(バッカス)
テーバイの建国者カドモスは戦いの神・アレスが可愛がっていた竜を殺したため、呪いをかけられました。ですが、なぜか娘のハルモニア(母アフロディーテ)をカドモスと結婚させます。こうして生まれたのが、セメレーでした。
セメレーが美しい娘に成長するとゼウスが見初め、通い始めます。いつものことながら嫉妬したヘーラーは、老婆に変身してセメレーに近づきます。セメレーはすでに妊娠しており、得意げにこどもの父親はゼウスだと語ります。老婆に化けたヘーラーは心配するそぶりで神を詐称する者もいるので確かめた方がいい、『本当の姿を見せてくださいといいなさい』と唆しました。
ヘーラーの罠にかかったセメレーはゼウスにどんなことでもかなえてくれると約束させたうえ、本当の姿を見せてくれるようせがみます。ゼウスは前言を後悔しましたが、神の言葉は取り消せないので、神としての真の姿を見せます。その瞬間雷鳴がとどろき、セメレーは雷にあたって焼死してしまいました。ゼウスは何とかセメレーのお腹の中の赤子を取り出し、自分の太腿に入れて残りの期間育てました。こうして生まれたのが、ディオニュソスです。
ディオニュソスは母の妹に預けられましたが、またへーラーが彼女を狂気にしたので、ゼウスは賢者ケイロンに彼を預けます。
ディオニュソスは成人後、旅に出ます。この旅の間にブドウの栽培を身につけ、ワインを開発しました。
自らの欲望をワインによって解放するという教義とワイン栽培を伝え、信者を獲得しながらギリシアに戻ってきました。しかし、彼の信者たちは女性が多く、ワインによってトランス状態で踊り狂うので、オリュンポスの神々から冷ややかにみられていました。
そんなとき、事件が起きます。へーラーがペパイストスから贈られた黄金の椅子に縛り付けられ、オリュンポス中が大騒ぎになったのです。これはへーラーから冷遇されているペパイストスの嫌がらせでした。神々はペパイストスの工房に出向き、オリュンポスに向かうよう説得しますが、日頃の怒りからペパイストスは応じません。そこでディオニュソスはペパイストスにワインを飲ませて酩酊させ、オリュンポスに連行しました。
この功績でへーラーに恩を売ったこともあり、ディオニュソスはオリュンポスの神々に迎えられました。
オリュンポスの神々と和解したあと、ディオニュソスは冥界に迎い、母セメレーを救い出しました。ディオニュソスの願いでセメレーもオリュンポスに迎えられました。
『オリュンポスの12神』に数えられたのは、叔母にあたるヘスティーアの譲りを受けたからと言われています。
こうして、彼は『半神』から『オリュンポスの12神』になったのです。
アリアドネー
ディオニュソスの神話でもうひとつ有名なのは、アリアドネーの物語です。
クレタ島にはミノタウロスという怪物がいました。ミノタウロスは人間の体に牛の頭がついた怪物で、実はクレタ王妃が牛に恋をして生んだこどもでした。クレタ王はミノタウロスの存在を恥じて、ダイダロスに作らせた迷路に閉じ込めました。同じ頃、アテナイに勝ち、ミノタウロスの生贄としてアテナイの男女を毎年送ることとなりました。
このことに怒ったアテナイの王子・テーセウスは、自ら生贄の男女に加わり、クレタ島にやってきます。その姿を見て、ある女性が恋に落ちました。彼女こそ、アリアドネーです。
アリアドネーはテーセウスに自分を妻にして連れて行ってくれることを条件にして、赤い毛糸を渡します。ミノタウロスを無事殺せたとしても、迷路のなかで迷って死んでしまうかもしれないからです。
テーセウスは無事ミノタウロスを退治し、アリアドネーの毛糸を頼りに迷路からも脱出することができました。
愛するテーセウスとともに、故郷を脱出したアリアドネー。一行はナクソス島で一夜を明かしました。
しかし、ディオニュソスが通りかかり、アリアドネーに一目惚れします。なんとしても彼女を手に入れたいディオニュソスは、テーセウスの夢に入って、『アリアドネーを置いて出てゆけ。そうすれば航海の安全を約束する』と告げます。自分の身が大切なテーセウスはアリアドネーを置いて出航してしまいます。
置き去りにされて途方に暮れるアリアドネー。そこでディオニュソスが声をかけます。
アリアドネーはディオニュソスの愛をうけいれ、こどもを4人儲けました。彼女が亡くなったとき、ディオニュソスは嘆き悲しみ、彼女の冠を天上にあげて、かんむり座としました。
『酒の神ディオニュソス』、以上です。
古代ギリシアでは神話の通りディオニュソスの信者たちがドンチャン騒ぎをしていたので、古代ギリシアの人々から顰蹙を買っており、一種の新興宗教扱いされていたようです。
また異説では、ディオニュソスはゼウスとペルセフォネーのこどもとされ、オルペウス教(古代ギリシアの密儀宗教。オルフェウスを始祖として崇める)の基礎にもなっています。セメレーを救い出した冥界とのつながりも強いと考えれていたのでしょう。
アリアドネー、ディオニュソスの愛を受け入れたものの、テーセウスを一生忘れられなかったとも言われています。
自分の安全のために恋人を捨てたテーセウスですが、実はのちにアリアドネーの妹パイドラを妻として迎えています。しかし、その後も悲劇がおきてしまいますが、このことは次回取り上げようと思います。
しかし、セメレーはアレスの孫ですからへーラーにとっても子孫にあたるのに、嫉妬で殺してしまうなんて怖いですね(自分の子孫に手を出したゼウスが悪いわけですが)。
『オリュンポスの12神』、すべての神を登場させることができました。次回はディオニュソスと同じく半神として生まれた英雄たちを取り上げる予定です。
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