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燐光

  向かいの建屋の縁側でアイドルが日光浴をしている姿が見える。今日は5日ぶりに日が射したので夜半の演舞に備えて蓄光しているのだろう。

  遠くてぼんやりとしか見えないが、日差しが眩しすぎるのか顔を伏せて目を細めている。あれは確かELLIEという娘で、夜会で一度だけ見たことがある。ここに駐在するアイドルの中では珍しく波長480nm付近で発光し、夜の空気に映えるその色は評判が良く人気が高い。

 遠目に見える彼女は袖をまくり白い肌を陽射しに晒している。あの肌が夜には壇上の暗がりで煌めくのだ。正直、初めてアイドルの燐光を見たときはあまりにも浮世離れしていてちょっとした不気味さを感じた。今ではそこまでの違和感はないが、この世のものとは思えない雰囲気は何度見ても慣れるものではない。それでいて闇に浮かぶ光は安らぎを与える。人々はアイドルの燐光に興奮と慰めを得るのだろう。だからこのような娯楽が今でも続けられている。私はそれを良いとも悪いとも思わない。




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