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――彼は、いつも長袖の服を着ていた。 寒い冬は勿論、暖かく麗らかな春の日も、うだるような暑さの夏の日も、残暑厳しい秋の日も。 ひょろりと背が高く、折れそうなほど線が細く、不健康に青白い肌を持つ彼は、いつだって長袖を着ていた。 「ただ着たいから、着てるだけだよ」 「だって、そうしないと泣いちゃうからね」 それは、彼がいつかに笑って言ったこと。 ――寂しそうに、口ずさんだ言葉だった。 § クラスメイトの彼と初めてまともに話したのは、高校一年生の夏休