スタンダードの作られ方
ふるさと納税で頼んでいたシャインマスカットが届いた。
実はわたしはシャインマスカットを食べたことがない。
スーパーの青果コーナーでひとりだけ4桁のお値段で売られているのは知っていたけど、特に食べてみたいとも思わなかった。
今回もシャインマスカットを指名したわけではなく、フルーツの定期便の大トリとして、たまたま我が家にやってきただけなのだ。
やや過剰とも思える包装が、ブドウの女王たる存在感を思わせる。
どれほど甘いのだろうと期待に胸を膨らませ、一粒口に運ぶ。
しばらくことばが出なかった。
想像を超える美味しさだったからではない。
いや、もちろん甘くてみずみずしくて美味しい。美味しいのだけど、「美味しい」以外の褒め言葉が思いつかなかったのだ。
このフルーツ定期便でトップバッターだったいちごは、大げさでなく、わたし史上もっとも美味しいいちご暫定1位である。
ひとくちで収まらないほど大きな実に、じゅわっと甘い果汁。口に入れた瞬間にフレッシュジュースを飲んでいるような感覚。
あれは普段食べているパックのいちごでは味わえない。
じゃあ、普段食べているいちごが、1位のいちごくらい甘くて美味しかったら?
きっと今回のシャインマスカットみたいなリアクションになったに違いない。
わたしには「パックのいちご」というスタンダードがすでにあるから、それと比べて美味しいかそうじゃないかを判断している。
でも、マスカットを食べたことがないわたしには、価値基準が備わっていない。
1位のいちごだったり、自分のなかでの想像のシャインマスカットだったりを基準にしていたんだろうな。
……ん?
そうなると、わたしの今後のマスカットの価値基準は、このシャインマスカットになるのか。
普通のマスカットを食べたとき、未来のわたしはどんな感想を抱くんだろう。
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