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自分の内なる音で目が覚める
と思春期の病みたいなことを書いたけど、妄想ではなくリアルな話。
A.M.3時。
はっと目が覚める。
あぁ、もうすぐ来る時間か。
最近はそれが来る前に、防衛本能からか目が覚めるようになってしまった。
ベッドに横になったまま、時計の秒針を静かに聞く。
うとうとと眠りに呼び戻されそうになったとき、自分のなかから泡が弾けるようなぷくぷくとした音が聞こえてきた。
その音の出どころを考える間もなく、音はドンドンドン!と強く叩く音に変わった。
警察官が容疑者の家に押しかけたときのようだ。容赦なくわたしの内壁をノックし続ける。
力は弱まるところを知らず、もうお腹に穴が空きそうな錯覚さえする。
20分ほど続くと、リアクションがないことに諦めたのか、ぱたっとノックは止んだ。
……落ち着け、息子よ!!!
そう、これが胎動のリアルなのである。
エコーで見る息子は、最初の頃こそ静かにぷかぷか浮いていたけれど、今ではエコー写真もまともに撮らせてくれない暴れん坊将軍と化した。
ドクターはそれでもきれいな写真をとってくれようとするから、わたしは人の何倍の時間も診察台で大きなお腹をさらけ出して、次に控えている妊婦さんに心のなかで謝っている。
今朝は、いつも以上に胎動が強くて、結局3時に起きたっきりそのまま朝を迎えてしまった。
息子が起こしてくれたので、早めに身支度を整えて、土曜日恒例のヨガに向かう。
わたしの通うマタニティヨガは、いつも開始前に赤ちゃんの心音を確認することになっている。
「赤ちゃんの心音ってね、馬が走ってる音に聞こえるんだよ」
と、最初の心音チェックのとき、看護士さんが教えてくれた。
直後に聞こえてきた音は、たしかに風を切って大草原を自由に走る馬の蹄の音だった。
あと数ヶ月後には大きな世界に飛び出て、それから息子はどんな草原を走っていくんだろう。
もしかしたら、彼は今この小さなお腹のなかで予行練習をしているのかもしれない。
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