見出し画像

旅のおわりに

内子編、津田編、小豆島編とやたら長い旅行記を書き連ねていて、ただの記録みたいになった。楽しくないのでしばらく記憶を寝かせることにした。


なので、旅のなかでいちばん心に残った景色を。


高松で友だちと別れたあと、ひとり電車で津田に戻る。
夕暮れの道を歩いていると、連なった人影とワゴン車が見えた。

砂地にはまったワゴン車を、石段に腰かけてどうしようかねえと、穏やかに笑いながら見つめている。
それがうみの図書館を作った友だちだ。
まわりのひとたちも楽しそうに談笑している。
その景色を見て、思った。


ネバーランドみたいだ、と。



彼も、彼に集まる彼らも、20代前半から30代前半と、みな若いのだ。
このまちを歩いていると、体感的に60代から上の年齢層のひとを見かけることが多く高齢化を東京よりも感じる。
そしてひと気も少ない。
そこに、急に現れる彼らの姿。


図書館が開き、ピザ屋が開き、続くように古道具と朝ごはん、藍染屋、カレー屋、バー。
あくまでわたしの主観だけれど。
図書館を開いた彼の夢に乗るように、何人もの若者が集まって、商いをして、暮らしている。




ネバーランドであるならば、図書館の彼がピーターパンとも言えそうだが、彼は決してピーターパンになりたいわけではない。

むしろその逆で

ぼくが40歳だったらもっとスムーズに通ることもあるんですけどねえ、呟いていた。

以前訪れたときと変わったのは、彼らの次の世代が生まれてきていること。
潮目が変わったなあ、と感じた。


居心地よい場所を作ってしまった責任の苦悩はあるだろうが、それでもここには希望が詰まっている。
わたしはネバーランドの住人にはなれないが、たまに訪れては彼らと話をし続けたいと、彼らの行先を見てみたいと、思った。


これが、今回の旅で、いちばん心に残った景色。






旅から帰り。

今回の旅はひとつの場所に限らず
おお、来てたんか、と。
ばったり会ってもわたしのことを覚えていてくれて、迎えてくれるひとによく出会った。
東京に戻ってきて、久しぶりにコーヒースタンドを開けたら、安心する顔ぶれがたくさん見られて、自分で開けたのにも関わらず帰ってきたなあと、思った。


わたしは故郷を失ってしまったけれど、帰る場所は、いくつもあるみたいだ。
きっと故郷は心が決める。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?