【うつ病は財産】⑧言葉と思考の転換

私は自分自身の幸せを考えるように、元夫や家族の幸せについても考えられるようになっていった。
そんな日々のなか、少しずつではあったが、私は前向きになっていったように思う。
とはいえ、症状には波があり、アップダウンが激しく自分自身を持て余すことが多かった。

身体は鉛のように重く、睡眠も変わらず浅かったが、何とか少しずつ食べられるようになっていった。
そんな中、就寝前の軽いストレッチも少しずつ続けていた。
そして、私はあることを始めた。

それは、「アファメーション」である。

当時読んだ本(どれかは覚えていないが)で知り、即実行し始めたのだった。
アファメーションとは、「自分自身に対して行う肯定的な自己宣言」のこと。
それは、言葉の力、引き寄せの法則によって潜在意識に働きかけ、その宣言を現実化していくというもの。

当時の私のアファメーション
「今日も一日無事で幸せな一日でした。
    全てに感謝いたします。
  私は心身ともに健康で、
    笑顔で幸せな人生を歩んでいます。
  心より感謝いたします。
    ありがとうございます。」

私は毎日寝る前に、このアファメーションを行った。
もちろん、当時の私は、一日無事でも幸せでもなかった。
様々な症状は続き、ときには頭が割れるような頭痛も激しい動悸もあった。
感謝は少しずつできるようになったものの、幸せだという実感はほとんどなかった。
全く心身ともに健康ではなく、笑顔もない毎日。
しかし、私は半信半疑ながらも、とにかく毎日続けたのだった。

とても緩やかな回復の中、様々な問題はあったものの、とにかく、自分自身のことを優先するようにした。
症状が落ち着いているときは、できるだけボーっとしてリラックスするよう心がけた。
しかし、健康な時は無意識にボーっと空を眺めたりできるのだが、常に心身ともに強張った状態のため、このリラックスすることがとても難しかった。

また少し体調が良い時は読書をしたり、少しずつ体力がついてきた頃には、近くの公園を散歩した。
一度頭痛や動悸などの症状が現れたり強くなったりすると、すぐに横になり頓服の精神安定剤を服用したり、リラックスすることを意識した。
そんな何度も何度も同じような状態を行ったり来たりする日々。

本当によくなるのだろうか…ずっとこのままではないだろうか…
不安と恐怖に押しつぶされそうな毎日。

しかし、そんな中、アファメーションの効果もあったのか、毎日ほんの少しずつではあったが「良くなる」という信じる強さが生まれていった。

また、私は自分自身が「うつ病であること」を意識しないよう心がけたのだ。
「私はうつ病だから…」と自分自身に言わないようにしたのだった。
これはうつ病になった自分自身を赦し、受け入れてはいるものの、うつ病であることを理由に「だからこうなんだ」とか「これはできない」というように考えないということである。
このバランスは難しいが、「うつ病である自分」を理由に「未来の自分」を決めないという意味が含まれている。
この捉え方は現在の私であるから言葉として表現できるのであるが、当時の私はここまで明確に理解せずに感覚的に行っていた。
簡単にいえば「うつ病」にフォーカスしないということである。

自らの言葉と思考は人生を変える。

この当時から私は、セルフトーク(自分自身に語りかける言葉)を意識するようにしたのだった。
できるだけポジティブな言葉を使うよう心がけ、ネガティブな言葉が出たときには、そのあとポジティブな言葉に転換し打ち消すことを実践した。
このときにとても重要なことは、ネガティブな言葉を発した自分自身を否定しないことである。

この時期に身に付けたポジティブ転換法・ポジティブ思考は、この後の私の人生を大きく変えていくことになる。

ポジティブ転換法に加え、もう一つ心がけたことは「~しなければならない」を「~したい」に転換すること。

私は何か行動を起こすときに「~しなければならない」という思考で動いていたことが多かった。
では、なぜわざわざ「~したい」に転換する必要があるのか?

「~しなければならない」は、何か外側から強いられたときの表現である。
それに対し、「~したい」は、自らの考えや欲求を表現した言葉である。
同じ行動をするのにも、この言葉の違いは自分自身に大きな影響を与えることになる。
この転換法も知ったときに即実践したのだった。

「~しなければならない」と思ったり言葉に出たときには、とにかく「~したい」と考え直したり言い直したりした。
「~しなければならない」で動くよりも、「~したい」で行動する方が心も身体も軽い感じがするようになった。

そして、どのような変化が現れ始めたかというと、「~したい」に転換することで本当に自分のしたいことがわかるようになってきたのである。

他人に対し「どう在るべきか」を考え過ぎていた当時の私は、自分が感じる「~したい」ことは良くないことだと抑制していることが多く、自分のしたいことがわからなくなっていたからだ。

自分自身を縛り付けているもの、それは自分自身である。

また「~しなければならない」と何度も思ってしまうことは、実は必要なことではないのではないかと考えるようになったのだった。
ここで大切なのは、「~しなければならない」ことは、一体どこから来ているものなのかを知ることである。

この頃の私は、こうして試行錯誤し徐々に回復してはいたものの、もちろん抗うつ剤も睡眠導入剤も精神安定剤も飲み続けていた。

こうした言葉や思考の転換法を実践する日々の中、いつしか私の中に自然と浮かんでくる自分の姿があった。
その自分の姿とは、「笑顔でうつ病だった頃の自分を話している姿」である。
また、そのような自分になりたいとも強く想っていた。

特に、寝る前に行っていたアファメーションの時には、「生き生きとした私が、笑顔でうつ病だった自分のことを話している姿」を想像するようになった。
そして、その自分の姿は、日を追うごとに鮮明になっていったのである。

人は自分の想うようにしかならない。

私はこのことを経験上理解している。
現在の私は、まさにこの当時「想像していた私」である。

【うつ病は財産】⑨決意~社会復帰

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