【うつ病は財産】⑦愛の学び

私にはとても愛した人がいた。
当時の私には、どうしても彼との人生を選ぶことができなかった。
そして、様々な出来事があり、私は日に日に自分を責めるようになっていく。

周囲の人たちにすれば、私は正しい道を選択したのだ。
そのことが私を縛るようになり、私は自分がどうしたいかよりも、人からどう思われるかばかりを気にするようになった。

どう答えれば正しいのか、どう振る舞えばよいのか、どう在ればみんなは安心するのか…
しかし、そうすればするほど、身近な人たちを傷つけ苦しめる結果となっていくのだった。

私から笑顔はなくなり、困惑した表情が多くなった。
私は誰にも本心を話すことはなかった。
本心は心の奥にしまい込み、日々時間に追われていた。
その結果、身体に異変をきたしうつ病の診断をされるわけであるが、こうした経緯を綴る中で様々な自分と向き合う機会を得ることとなった。

私は自身の闘病のなか、癌で闘病していた父を看取った。
娘として充分な看病をできなかった後悔に苛まれていた私は、ある日、幼少期からの自分を振り返っていた。
育った環境や両親との関係や想い、妹への想いなど、どのように感じ、成長してきたのかを思い返し文章にした。
そうすることで自分自身の傾向や、これからどう生きたいのかを知ることができた。

このことがキッカケとなり、私はある決断をした。

私はいつからか「いい子」でいなければならないと思っていた。
妹が生まれてからは、姉としてしっかり「しなければならない」という思いが強く、大人になってからも「~したい」よりも「~しなければならない」を優先することが多かったように思う。
ときには、自分自身が「~したい」と思うことは、ダメなこととさえ感じていたこともあった。

学生の頃は社会人になれば自由にできると思っていたが、社会人になり自由にできる一方で、両親には多大な迷惑をかけ心配ばかりかけていた。
結局、当時の私も変わらず、心配も迷惑もかけていたのだった。
当時、私は結婚していたが離婚を考えていたため、父に最後の最後まで心配かけてしまったことも後悔の一つであった。
私は自分自身が決めた結婚を続けなければならないと思い、これ以上、両親に迷惑と心配をかけてはならないと思った。

しかし、自分自身を偽っても、誰も幸せにはならないことに気づいたのだ。

うつ病だった私は、心も身体も健康であることが、どれだけ有り難く幸せなことかを身をもって理解していた。
そして、私は決断したのだ。

「私は幸せになる!」そう亡き父に誓った。
心底、「笑顔で幸せな毎日を送りたい」と思ったのだ。

そのためには、自分自身の心の声をしっかり聴き、心がどう感じるのかを自分自身がきちんと把握し、進んでいくことが大切であることを学んだ。

また、人生のなかで最も困難である「赦す」ことを学ぶこともできた。

私は自ら、愛した彼と別の人生を選んだにも関わらず、しばらくして結婚をしたことを知ったとき、とてつもなくショックを受けた。
奈落の底へ落された感じがした。
当時の私は彼を祝福するなんてことは考えられなかった。

そして、更に自分自身を責めていくことになる。
後悔→自責→軽蔑→自己嫌悪→嫉妬→罪悪感→絶望…
私の感情のすべてが負の連鎖の中で回っていた。

それから間もなくして、父の癌告知や仕事の重圧もあり、彼のことは時間が解決してくれるのではないかと思い、やり過ごしていた。
だが、何の解決もないまま、ただ時間だけが過ぎていただけだった。

ある日、自分自身と向き合う中で、私は自分自身のことは棚に上げ、幸せであろう彼のことを責めていた自分に気づいたのだった。

ただただ苦しかった…様々な症状も出た…
こんな人生は意味がないと思い、生きていることに、生きることに何の意味があるのか全く分からなかった。
すべてが夢だったらいいのに…そう何度も何度も思った。

そんな日々の中、私は彼を責めている自分を認め、私は現実をありのまま受け入れようと思ったのだった。
というより、そうするしかなかった。という方が適しているのかもしれない。

私は責めたり後悔ばかりしている自分自身と、幸せな彼を「赦す」ことを選んだのだった。
彼との様々な出来事や日々を振り返り、後悔を感謝に変えようと意識した。
その過程では、何度も何度も泣き、涙が枯れるという経験をした。

本当はとても怖かった…

自分自身や彼との現状と向き合うことで、とても愛した彼を憎んでしまうのではないかと…

しかし、感謝することで、いつしか彼の幸せを願える自分になっていた。
そして、思い出したのだった。
「あやの幸せになる道を」彼は私の幸せを誰よりも願い、考えてくれていたことを。

私は「このままではいけない」と思い、「私の幸せが彼の幸せになるのかもしれない」と感じたのだった。
私は自分自身の弱さ、惨めさ、愚かさ、そして数々の過ちを赦し、受け入れていった。
こんな私を愛してくれたことに心から感謝していた。
すると、徐々に私の心は変化していった。

【うつ病は財産】⑧言葉と思考の転換

#創作大賞2022

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