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100文字詩

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詩は言葉の寺。 100文字の詩をしたためていきます。 気軽に、きちんと。 制約の中にある自由を。
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#100文字詩

歯ぶらし

夜行性の朝 スーパーカブのエンジン音に 鳥たちはあくびを重ねる 薄明けに孤独を半分預けて …

ヘアゴム

生まれて一年も経てば そうか 髪は目にかかり 首元でへばりつく 私は指先に ヘアゴムを忍ばせ…

ファーストシューズ

前かがみになりながら 膝を小さく折りながら たんぽぽが根を張るほうへ 手を差し伸べる そち…

指さし

ちいさな指を一本一本 まじまじと 眺めながら 舐めながら 確かめてみる 関節と関節は肩寄せ合…

ストロー

ひと匙の意志 米粒は宙を舞い 床で踊る パン屑は背もたれに隠れ ひき肉はポケットに眠った 陽…

さざなみ

さざなみの寝息 引いては満ちて 3度目の朝が来る 丑三の咆哮けたたましく 土筆は大気圏まで伸…

カウントダウン

明滅する心拍 去り際のまたね パパ お父さん オヤジ ママ お母さん オカン 3 耳をふさいで 2 目を瞑っても 1 高らかなUNO 夕暮れを頬張る口 肩に座るよだれ 胸に刻まれた鼻水  UNOを言い忘れたら また訪れるだろうか

初めて君は

今年、初めて夏を迎えた君は 虹色の汗をかいた 今年、初めて秋を迎えた君は 旬のヨダレをこぼ…

宝石

パン屑の宝石を拾って 人差し指から離陸する 上空70cmを右から左へ旋回し 真新しい前歯は 確か…

親友

イルミネーションを 電気飾りというあまのじゃくは 12月に浮かれることのない あなたへの慕情 …

よだれ顔

とかく 語りたがりな私たちは いつしか饒舌に ロジカルに 時に エモーショナルに 手から口から…

平成ガラパゴス

触れるとベタつき 溶けて無くなる イヤホンのスポンジ カセットテープは巻き戻ることもなく 燃…

手のひらのおむつ

ありがとうに重さがあるとしたら たっぷりの水分を吸った おむつの重さだと思う 生命活動の循…

17時のトス

体育館の水銀灯は くゆら ゆらり 急ぐことなく明滅し 西陽は沈む 天井に食い込んだ毛羽立ちバレーボールは 片方だけの上履き達と諦め顔で見下ろしていた 私はシューズの裏を素手で舐めて もう一度 もう一度 真上にトスを上げる