眼鏡


旅先のソウルで眼鏡を新調した。タダで検眼できるというので、軽い気持ちで見てもらったら乱視を指摘された。調整されたレンズで覗いた世界の鮮やかさに驚いて、思わず購入してしまったのだ。ずいぶんぼんやりと世の中を見ていたんだなと思った。休み明けに出社すると、斉藤さんが「珍しいね、さきちゃん」と新しい眼鏡を見て声をかけてくれた。あれ、この人、こんなやさしい表情するのだっけ、とびっくりした。

朝から目の前で上司の小言が始まった。底意地の悪い、棘を含んだ言葉の響きに、体が硬直して震えが止まらない。毎回こうだ。この声を聞くと、プレッシャーを感じてまた同じ失敗を繰り返してしまう。お願いだから、黙っていてほしい。そんなことを思いながらふと上司の横顔を見た。その顔にうっすらと、悲しげな色が浮かんでいるように見えた。驚いた。想像してなかったからだ。私は深呼吸をすると、もう一度その悲しそうに見えた顔を見つめ直した。

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