おわりに 666の獣の美しき傷痕(番匠深月)

基本的に私は面食いである。大体何を買うときも、機能性そっちのけでデザインで選ぶ。だから最初のタロットも、一番絵柄が素敵だと思ったヘルメティックタロットを選んだ。

とはいえタロット初心者の私である。どうリーディングしたらいいか全く分からず、やがてヘルメティックタロットは机の引き出しの奥に仕舞われたままになった。

そして何かの折、タロット好きの友人に、ヘルメティックタロットを持て余しているという話をした時に、手渡されたのがトートタロットである。ヘルメティックタロットと共通点が多いから、という事だったのだろう。「きっと貴女に向いているから。」とも言われた。

トートタロットの箱を開けてカードを並べた瞬間、私は色彩の豊かさと渦巻くエネルギーに息を飲んだ。「分かる」訳ではないが、「伝わってくる」気がした。詩情と言うにはあまりに野蛮で、生々しくあたたかい。

一見サイケデリックなデザインのこのタロットを、私は愛せそうだと思った。

それから私はいくつかの本を買い、友人たちの助けを借りながら、トートタロットの勉強を始めた。正確に言うと、それは勉強というよりも、カードと仲良くなる行為に近い。

最初は1枚引き、慣れてきたら枚数を増やしたスプレッドを。1日の終わりにカードを引いて、その日にあった出来事と対応させたり、パスワーキングをしてカードの中のモチーフと会話をしたりもした。

トートタロットは、同じカードでも、見る度に少しずつ異なるメッセージを私に伝えてくる。同じ人でも会う度に新しい一面を発見する、そんな感覚である。

彼…トートタロット(ここで「彼」という人称を採用するのが適切かは分からないが)のことを、もっと知りたいと思う。私の知らない素敵な顔が、彼にはまだたくさんあるはずだ。

深くてやわらかい闇。太陽と若草の匂いがするみずみずしい光。彼と一緒にどこまでいけるだろうか。

どうか今よりもっと遠いところへ。

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このマガジンは、2019/4/6に行われたトートタロットワークショップの資料に大幅に加筆したものです。 トートタロットに描かれた、カバラと…

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