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私と毒③

美に含まれる毒についての話から、あのベートーヴェンがフロムの提唱する退行エネルギーとの闘いを見せたのでは、という飛躍した思考に裏付けをせねばならなくなり、ここからは厳しい一人相撲が始まる予感がする。

さて、フロムとベートーヴェンは別の時代に生きている。さらにここに筆者の独断と偏見でチェコ出身、フランスへ亡命した作家のミラン・クンデラを加える。というのは、クンデラのエッセイ'緩やかさ'がヒントとなりそうだからである。(本書を読んでもらうのが1番分かりやすいかもしれないが)18世紀の快楽主義、また20世紀のそれにたいする姿勢や政治的なアイデンティティについてなどをパロディ形式で綴っている一冊となっている。

現代サイドの登場人物の中で、スポーツ的な思考の男が存在し、その様子がベートーヴェンのそれに感じる。
私の解釈に間違いがなければ、本書の18世紀的な場面、つまり貴婦人と騎士のやりとりとは、緩やかさのダンス=戯れである。エネルギーのせめぎ合いそれ自体を楽しむ。たとえば思わせぶりな態度、それに対する騎士の振る舞い。相対する心理のゲーム、退行と進行のエネルギーの動きそれ自体が18世紀的な美のひとつなのではないか。

対して現代のスポーツ的な男は自身の克服、自分への勝利に固着していて、緩やかさをもたぬ男として本の中ではなかなか滑稽な描かれ方をしていた。それはクンデラなりの愛のある?ジョークなのだろうと推測する。

あらあら、④に続きそうです…

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