勝手に乃木坂にされました3
ごくっ。
自分のつばを飲み込む音が響く。
俺は今扉の前で立ちつくしている。
この扉の先にはこれから乃木坂の一員になる五期生たちがいる。
まぁ自分も五期生になっちゃうんだけどね…
どうしようか…入りたい気持ちはあるけど…
足が動かない。
ここにきてさらに不安が大きくなってしまった。
まずいな、入れる気がしないぞ…
だがあと少しで先輩たちへのあいさつが始まる。
入らないわけにはいかないのだ。
〇:よし…行くぞ俺…
覚悟を決め入ろうとした瞬間。
「もしかして…久保〇〇ちゃんですか…?」
〇:うわっ!!
急に後ろから声を掛けられる。
?:噂で聞いてたんですけど本当に久保さんに似てますね!
流石姉妹だなぁ…
僕の前で感心しているこの子は誰なんだ?
とても大人びていて女王的な風格を感じる。
〇:あのぉ…あなたは…?
?:あっ…申し遅れました!五期生の井上和と申します!
この子が五期生の一員か…
すっごいかわいいな…
それにこんなこと言うと変態みたいだが…
とてもいい匂いがする。
和:さっきからドアの前でウロチョロしてましたけど、
もしかして緊張してるんですか?
〇:み、見てたんですね…
すっごい恥ずかしいじゃん…
見られてるなんて露知らず、ずっと変な行動してたよ…
和:大丈夫ですよ!五期生みんな優しいですし!
一緒に入りましょ?
〇:は、はい…
ついに入る時が…
ガチャ。
和:みんな!久保〇〇ちゃん来たよ!
和ちゃんがそう言いながら扉を開けると…
すごい勢いで皆が駆け寄ってくる。
「うわぁ、ほんとに久保さんみたいだ~」
「めっちゃ可愛いやん!うらやましい~!」
「あはは、皆がっつきすぎでしょ~」
皆が一斉に喋りかけてくるから反応ができない。
〇:ち、ちょっと落ち着いて…
和:皆、〇〇ちゃん困ってるよ!
和ちゃんの一言でみなが少しおとなしくなる。
〇:ありがとね、和ちゃん。
和:ううん、大丈夫!
それよりさっき言った通りだったでしょ?
面接も現地に行ってしてない自分を
頑張って勝ち上がってきた彼女たちはすぐ受け入れてくれた。
久保史緒里が姉だからだろ。とか
ずるしたんだろとか。
そんな嫌悪を持った感じで接されるのかと思っていたが…
初対面の自分に対してすぐに駆け寄って話しかけてくれる。
まさに和ちゃんが言った通り優しい子たちだった。
そんな中1人だけ気になる子が…
1人だけ端っこにいて驚いたような顔でこちらを見ている子がいるのだ。
○:ねぇ、和ちゃん。あの子って…
和:あぁ、あの子はね。小川彩ちゃんだよ!
皆からはあーやって呼ばれてるんだ!
んっ?なんかどこかであったような…
和:珍しいなぁ。彩が人見知りするなんて…
人見知りっていう訳じゃなさそうなんだよな…
なんかじーっとこっち見つめてきてるし…
?:皆!もうそろそろ準備しないと!
「はーい!」 「あっ、髪セットしないと!」
?:○○ちゃんも準備してくださいね!
あ、私は菅原咲月と言います!よろしく!
○:う、うん!よろしく!
この子も凄い綺麗だな…
皆の顔は一通り見させてもらったけど全員可愛いし…
こんな中に俺が入っていいのか…?
ってか…俺準備って何すればいいんだ…?
メイクは姉ちゃんにやってもらったけど…
髪とかどうやってセットすればいいんだ??
長い髪なんてセットしたことないし…
アイロンとか使ってカツラが壊れたらまずいしな…
誰かやってくれる人はいないものか…
困っていると声をかけられる。
彩:○○さん、髪セット出来ないですよね?
彩がしてあげますよ!!
ニコッとしながらアイロンを手に持つ彩ちゃん。
なんで俺がセット出来ないこと知ってんだろ…
さっきもこっちじーっと見てたし…
まぁいいか…してくれるなら有難いし。
○:あっ、じゃあお願いします…
彩:はいっ!
この子笑顔が本当似合うな…
彩ちゃんは丁寧に髪をセットしてくれてる。
彩:○○さん、まだ気づかないですかね…?
○:えっ、なにが?
彩:こういったら分かりますかね?
「○○お兄ちゃん?」
耳元で囁かれた声に鳥肌が立つ。
全身から汗が吹き出している気がする。
○:な、なんで…
彩:分かりますよ!
だって小さい頃沢山遊んでもらったし…
小川彩…? 小さい頃…?
○:はっ!もしかして…!
彩:そうですよ! あの彩ですっ!
思い出した!
彩ちゃんとは小学校が一緒だった。
姉妹学級という制度で彩ちゃんとペアを組んでたんだ。
あの時の子がまさかこんな大きくなって再開するとは…
○:おっきくなったね、彩ちゃん!
彩:はいっ!お兄ちゃんのおかげでスクスク育ちました!
えへへと笑う彼女は小学生の時より一段と成長していた。
彩:それよりなんで乃木坂に…?
○○お兄ちゃんって男の子ですよね…?
○:実はさ…
彩ちゃんに姉が勝手に申し込んだ事など事情を全て話した。
彩:そういう事だったんですね!よし!彩も力になります!
○:ほんと!? 助かるよ!
彩:彩に任せてくださいよ!
ピースしながら微笑む彩ちゃん。
これで姉ちゃんがいない時もやっていけるぞ…
緊張がスっとほぐれた気がした。
「みなさーん!時間です!」
スタッフさんからの声がかかり、皆が移動する。
彩:私達も行きましょ! ○○お兄ちゃん!
○:彩ちゃん、お兄ちゃんは禁止ね? バレちゃうから!
彩:あっ、そうだった… てへへ…
本当に大丈夫かな…やっぱ不安かも…
____________
先輩の前では皆一人一人特技などを発表した。
俺は姉ちゃんが考えた当たり障りのないような自己紹介をする。
ただ身長は誤魔化せないので自然と目立ってしまった。
1番高身長の梅澤さんより3cm程大きいので目立ちのも仕方ない…
まぁそれ以外は特に気にすることもなく終わった。
美月さんがこちらをちらちら見ながらウインクしてたのは少し気になったが…
○:はぁ…ようやく帰れる。
早く姉ちゃん迎えに行こう。
楽屋に向かうと姉ちゃんと美月さん以外岩本さんと梅澤さんがいた。
○:お、お姉ちゃん… 帰ろうよ。
こんな台詞自分で言ってて恥ずかしい…
梅:せっかくだし、○○ちゃんも話そうよ!
岩:そうだよ!話そー!
くっそ…早く帰りたいのに…
○:わ、分かりました…
美:本当○○ちゃんは可愛いなぁ〜
ほらここ座って?
隣の席に自動的に座らせられる。
梅:それにしても○○ちゃんは可愛いね〜
本当久保に似てるわ。
岩:蓮加もびっくりした! 目もパチパチしてて可愛いし!
史:でしょでしょ〜!
なんてったって自慢の弟だからね〜!!
○:おいっ…バカっ!!
史:はっ…やっば……
美:あちゃーやっちまったか…
楽屋の空気が凍る。
梅:どういうこと…?
蓮加:○○ちゃんって男の子なの…?
続く。
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