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とつなん日記 後編

20代で患った突発性難聴の記録の続き。

治療コース2日目。
この日は左耳の閉塞感に軽く耳鳴りも加わって、耳の中がシュワシュワしている。人の声にも若干疲れるようになってきたが、まだ比較的元気。
治療1日目の夜になってやっと「で、なんの薬を点滴されたんだ?」と思い、ネットで検索したらステロイドらしい。この日、「花」先生に確認すると、確かにステロイドとのこと。うーん、そうか。だからと言って違う治療法を探すほどの余裕はなかったし、後悔もしていないけれど、せめて投薬開始前に教えて欲しい。
ちなみに5日間も点滴するのは、1発目に大量に投与する必要があって、でもステロイドは急に止めることができないので、5日間かけてそこから徐々に投与量を減らすためなのだそう。

通院3日目。
耳鳴りがグレードアップしたらしく、耳の中のシュワシュワがボコボコという大きめの音になっている。
これは「キリンレモン」から「三ツ矢サイダー」だ!と思って、「花」が付く先生にも教えてあげたのだが、残念ながら理解してもらえなかった。先生、飲み比べたことないのかな。ちなみにうちは、東京の実家がキリンレモン派、父の田舎が三ツ矢サイダー派。

4日目。
朝起きると、部屋が揺れている。めまいだ。一瞬クラっとするめまいは経験があるけれど、ずっとフラフラして歩けるかどうかも不安、というのは人生初めて。でも病院は行かないといけない、タクシーは酔う、ということで母に付き添ってもらって電車で行く。
診察でめまいの検査(寝た状態からガバッと体を起こして、目の中を覗く、とか)をしてもらうものの、あまり酷くはないとのこと。人生初ぐらいにクラクラしたのに残念、と思いながら、確かに診察後は朝より良くなっていたので、母に心配されながら駅で別れ、その日も出社。

そして、さすがにこの辺りから一気に病人感が出てきた。
めまいはもとより、耳鳴りや耳の中で自分の声が響くといった一見軽微な聴覚トラブルのようなことだけでも、とにかくとても疲れる。仕事(翻訳兼営業部秘書)は幸い会話の多い内容ではなかったが、それでも残業せずに切り上げても帰宅時にはヘトヘト。

さて5日目。
この日は一人で病院に行けたはずで、そして、点滴での投薬はたしかここで終了だったと思う。
治療開始時よりもずっと体感的な具合は悪かったのに、聴力は数値的には回復していて、なので治療も基本的にそこで終了。ただし、まだ安定はしていないのでしばらく静かに生活をするように、ストレスは避け疲れすぎないように、とのこと。

そしてその通り、本当の回復までは長かった。

音の刺激がとにかく辛く、特に食器のぶつかる音や女性の高い声が耳に障って、人の声も自分の声も頭に響いて話しにくい。なんとなくいつもふわふわしていて、目や頭を大きく動すことができない。音楽なんか当然聴けない。そして何よりも、常にとても疲れていた。声量も活動量も正常時の30%ぐらいで、外からの刺激は耳栓でシャットダウンして、それでやっと生きている感じだった。

常に疲れている状態からは半年ぐらいで脱したものの、まだまだ疲れやすく、耳栓生活はその後数年続いた。20年経ったいまも、たまにぶり返す。特に寝不足が天敵で、睡眠時間が7時間を切る日が3日も続けば要注意。耳栓は今も常に持っているお守りだ。

幸い私は聴力は戻ったが、前編の最初に書いた通り、突発性難聴は発症から治療開始までの時間が勝負なのだそうだ。発症した時はそんなことは知らなかったので、自分の勘と近所のおじいさん先生には本当に感謝している。

そんなわけで、皆様、耳の不調にはご注意を。

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