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多言語育児のやり方、我が家編

前にも書いた通り、私と夫の間はともかく、子供とそれぞれの親の間の言語は、夫と私のそれぞれがネイディブである言語のみ使うことにこだわった。主な理由は二つある。

ひとつは、大学時代の言語学の教授のアドバイス。自身はイスラエル出身でヘブライ語がネイティブ、奥さんはタイ人、住んでいるのはアメリカという環境で、子供を育てていた。
彼曰く、多言語環境で子供が混乱しない一番良い方法は、赤ちゃんの時からそれぞれの親に一つの言語を紐付けして、言語を混ぜないこと。例えば、私が他の言語を使う場面(夫やその家族と話すときなど)に居合わせても構わないが、そこでも子供に対しては必ず日本語を使う。
こうすれば、子供はそれが「何語」であるかが分からなくても、「お母さんとの言葉 vs お父さんとの言葉」で自動的に分けて格納されて、自然に2つの言語をきちんと分けて使える脳みそが出来上がる。
バイリンガル環境では子供の発語が遅れる、と言う人もいるけれど、これは同じ人物から2つ以上の言語で話しかけられる(うちの場合は日本語だったりインドネシア語だったり)場合だ。それは子供も混乱する。

もうひとつは、親の威厳維持のため。
アメリカなどで移民の両親が家庭内でも英語を使って、結果、自身が100%の力で使える言語では子供と会話ができなくなる、という話がよくある。子供は確実に親より英語が上手なので、英語が下手な親だけでなく彼らが背負う文化までを見下してしまうことまである。子はいずれ親を超えるべきだとしても、本来なら尊敬の対象としたい親が頼りなく映るのは、子供も悲しいはず。なによりも、子供を叱るときに外国語っていうのは、イマイチ腹に力が入らない。これで舐められてしまうのは親側も不本意だ。

難関があるとすれば、子供が友達と一緒にいるときに親が外国語で話しかけると、それを友達にからかわれるところか。
前出の大学教授は、子供が恥ずかしがって友達の前では英語で話してくるが、その場合は返事もしない、と徹底していた。
うちの場合も同じく二人とも、小学校に上がって少しすると、友達の前では話さないで、後でおかしく言われる、と言い出した。おお、来たか!と思ったが、その場では「嫌です。必要なことがあるときは話します」と伝え、でも気持ちも十分分かるので、なるべくそういう場には顔を出さず、話しかけるのも控えるようにした。そこは私はあまり無理をしていない。

夫が日本語が理解できないのに、子供と私が日本語で会話をするのは問題はないのか。確かに、ここを気にする父親もいるのかもしれない。が、これはそれ以前の、夫婦間の信頼関係の問題ではないだろうか。子供の能力をその犠牲にするのはもったいない。それに「分からないから、聞かれて困ることを本人の前で言ってもいい」なんてことは子供に教えたくないわけで、だからそもそもやらない。こういうことは、言葉の学習以上に大切なことかもしれない。

この方法がどれだけ有効なのかは、子供の性格や環境によっても違うと思う。我が家の場合は、日本語はほとんど私との会話でしか習得の機会がないため、語彙に限りはあるが発音はネイティブ、読み書きはできない。「英語脳」と言われるような、言語にあった脳の構造の基礎はできていると思う。
そういう環境で子育てをしようとしている方のヒントになれば幸いだ。

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