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クラシックコンサートの作り方

コンサートの作り方を、とても簡単にざっくりとまとめてみます。
「クラシックコンサート」といっても、ソロリサイタルから室内楽・オーケストラ・オペラなど様々な種類のコンサートがあり、それぞれにコンサートの制作方法は異なりますが、今回は、最も出演人数が少ない、ピアノのソロリサイタルを開催する想定で考えてみようと思います。

【1】会場の予約(1年半〜半年前)

まずは会場を選びます。夢は大きく、サントリーホールで演奏をしたいところですが、会場を借りるだけで200万円以上かかりますし、2,000人も集客するのは大変です。集客力や立地などのバランスを考えて会場を選びましょう。
コンサートホールは大きく分けて、自治体が運営する公共ホールと、民間企業等が運営するホールがあります(サントリーホールは後者)。公共ホールの良いところは何と言っても使用料が安いことです。その分、申し込みが殺到するので、希望の日程で予約を取るためには高い倍率を勝ち抜かなければなりません。一方、民間のホールの方が比較的、希望の日程で予約が取りやすいです。会場にもよりますが、使用日の1年半〜半年前より予約を開始するところが多いので、コンサートの開催を決めた時点でなるべく早く会場を押さえましょう。


【2】チラシの作成(半年〜3ヶ月前)

無事に会場が決定したら、コンサートをお知らせする方法を考えます。SNSなどがこれだけ発達している現在も、コンサートの広報の基本は紙媒体というのが実情です。
チラシを作成するために、原稿を作成します。演奏会タイトル、日時、出演者名、演奏プログラム、料金、プレイガイド、問い合わせ先等々…必要な情報をまとめ、デザイナーに渡します。
チラシのデザインは演奏会のイメージを左右するので、ぜひ相性の良いデザイナーさんを見つけてください。デザイン案が出来上がったら、誤字脱字が無いか、情報に誤りがないか、隅々まで入念にチェックします。

チラシの作成についてはこちらもご覧ください♪
コンサートのチラシの作り方 〜デザイナー目線からお願いしたいこと〜
コンサートのチラシの作り方 〜原稿作成は、この項目を埋めればOK!〜


【3】チケットの管理 (3ヶ月前〜本番まで)

チラシも完成し、いよいよチケット発売です。
通常はお客様の利便性を考え、複数箇所でチケットを販売します(ホールのチケット販売所や「ぴあ」などのチケット販売サービスを利用)。各販売先の状況を常に把握し、残数が少なくなった販売先へ他の販売箇所から在庫を移すなどして、バランスよく販売します。
自由席の公演の場合は、座席数以上のチケットを絶対に販売しないように気をつけます。また、指定席の公演の場合は座席のダブルブッキングが発生しないように細心の注意を払います。


【4】広報活動 (3ヶ月前〜本番まで)

友人や家族、生徒たちに頑張って声をかけても、客席を満席にするのはなかなか大変です。また、せっかくリサイタルを開催するので新しいファンも獲得したいところです。予算と相談しながら、場合によっては広告を出稿します。主な媒体は、新聞(数万円〜数千万円!)、音楽雑誌(数万円〜数十万円)などです。また、主要コンサートホール前でチラシを配布してくれるサービスもあります(1枚4円程度)。
費用対効果を考えると、どの媒体に、どのくらいの予算を割くのか悩みどころです。


【5】プログラム作成 (2ヶ月前〜1ヶ月前)

コンサート当日にお客様へお配りするプログラムの準備をします。
演奏曲の解説文は、音楽評論家などの専門家に執筆してもらうか、演奏家自身で書く場合もあります。原稿が揃ったらデザイナーに依頼してプログラムのデザインを作成してもらいます。
チラシと同様、ここでも文章の校正をしっかりと行います。例えば作曲家の生まれた年が間違っていたら、とても恥ずかしいことになってしまいます!


【6】当日の運営準備 (1ヶ月前)

演奏会当日に運営をサポートしてくれるスタッフの配置を考え、必要に応じて手配します。ステージマネージャー、受付スタッフ、プログラム配布係などが必要です。そしてスタッフ全員が演奏会の運営に関する情報を共有できるように、タイムスケジュールの作成もします。
ピアノ調律の手配も忘れてはいけません。
会場のスタッフとも打ち合わせし、情報を共有します。


【7】演奏会当日!!

受付スタッフに取り置き用のチケットなどを預け、リハーサル、そして本番に臨みます。


【8】清算など(演奏会終了後)

無事に演奏会が終わった後も、まだ事務処理が残っています。会場への支払いや、チケット代の回収、チケットの販売手数料の支払いなど清算作業を行います。
全ての清算が終わったところで、今回のコンサートの収支決算書を作成し、どのくらいの収益があったのかを確認します。


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いかがでしたか?
意外と簡単そうでしたか?本当は一つ一つのプロセスをもっと細かくご説明したいところですが、今回は本当にざっくりと大まかな流れをまとめてみました。

さて、一番気になるのはお金の部分ではないでしょうか。
ということで、仮想の収支決算例を作ってみました。
・チケット代は一般3,000円、学生2,000円と設定
・会場は横浜にある某公共ホール(400席強)で、休日夜の公演を想定

意外と儲かりましたか?笑
一晩でこれだけのお金が手に入るのならば良いですが、実際は半年〜一年ほどの期間をかけて準備をしています。また、今回は公共ホールの使用を想定しましたが、民間のホールでは使用料が倍ほどの金額になることも珍しくありません。
また、最も大切な「演奏」の準備をしながら、上に述べたような事務をこなすのは大きな負担となります。なので、私は演奏家がなるべく演奏することに集中できるように、こうした事務作業を担う仕事をしています。


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長澤 彩(クラシック音楽コーディネーター)
Website >> http://aya-nagasawa.com
Twitter >> https://twitter.com/aya_nagasawa

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