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フランスから、食関連ニュース 2019.12 .10

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

1. 今週の一言

自宅のそばにある鮮魚店の鮮度が抜群で、魚はこの店で仕入れることにしています。勢いのある生きたエビや貝も手に入りますし、旬の魚の品揃えもいい。料理人たちもこの店から仕入れていると聞くこともしばしばです。この店に先週から、冬に漁が解禁となるうなぎの稚魚が入ってきているのが気になっていました。活きがよく、ざるの中を飛び出さんばかりに泳いでいる。パリには南西地方出身のシェフが多く、この季節になると、ニンニクでさっと炒めてバスク地方エスペレット産の唐辛子パウダーと塩をさっと散らして作るシンプルな料理に出会えることも。かなり高価なので、滅多に出会えるものではありませんが。彼らに言わせると、トリュフやキャビア、フォアグラ以上に珍味だということ。せっかく目にしたことだし、家で調理してみたいと思い立ち、少し多めのひとすくいいただきたいと言うと、店の人が驚いたような顔をする。1キロ180ユーロとあったので、卵2個分の90gくらいを目安に、と思っていたのが勘違いで、現実は100グラム180ユーロだったのです。まさにキャビア並みの価格でした。諦めて、スズキとザルガイを買い、スペインに近いバスク地方寄りの味わい、チョリソーをスズキの腹に入れて、冬野菜とともにココット蒸しにしました。

ところで、11月頭に、中国人の男女がウナギの稚魚をフランスから密輸しようとして捕まったという事件がありました。10ヶ月の執行猶予付き禁錮と、それぞれに7000ユーロ強の罰金が課せられました。ヨーロッパウナギは、その資源が30年前に比べると10分の1以下になっているという現状から、絶滅危惧種に指定されて、漁獲量が制限され、EU圏外に輸出されることは禁止されているのですが、金塊に近いビジネス目当てでアジアへの密輸が止みません。毎年百トンの稚魚が密輸されているということ。中国などで稚魚が成魚に育て上げられ、それが最終的には日本に輸入されて食卓に上っている。ニホンウナギの生息数が激減し、輸入に頼らざるを得ない私たち日本人も間接的に関与していたのです。フランスはヨーロッパいちの生産国で、南西地方アドゥール川やガロンヌ川で捕獲されます。漁獲可能量は年間60万トンですが、60%は再生産にまわすことも義務づけられている。厳しい規制の中で、ウナギの稚魚漁を専門とする漁師の高齢化も進んで、養殖も始まっているということ。こうした状況の中、密輸に関わってしまう漁師もあとを絶たないでしょう。先の中国人の男女が捕まったのは10月下旬。つまり漁解禁の前でした。いつの時代も禁止の網をかいくぐって甘い汁を吸うようなビジネスは存在します。それをブレーキをかけることができるのは、法以上に、記憶によって受け継がれる、昔ながらの伝統と職業、文化を守ることをミッションとした、民間が生み出せる秩序なのではと思います。

2. 今週のトピックス【A】ミシュランガイド、トリップアドバイザーと共同事業へ。【B】ミシュランガイド元ディレクター、「50ベスト・ホテル」を始める意向。【C】リーズナブルなタパス中心の肉専門店オープン。【D】ダイニング提供、レストラン戸外の時代へ。3. 今週の日本@フランス、ワールド【A】第10回パテ・アン・クルート世界選手権に、日本人シェフ、塚本治さんが優勝。

2. 今週のトピックス

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