たたかうわたし
小学生のころ「ファッション通信」をみて、ずっとクチュリエに憧れていた。
中学生のころ英会話にいやいや行っているくせにホームステイに憧れていた。
高校生のころ、文章を褒めてくれた日本文学を研究する系列の大学の先生に憧れていた。
憧れは憧れのまま誰にも知られず、私は、好きでもない理系の短大に進み、そのまましがない派遣社員になった。
そこそこ長く働いたその職場は、ぜんぜん悪くはなかった。
大好きな先輩に甘やかされ、面白い同僚に囲まれて、
わいわいとすごしていた。
すごしていたけど、働いている期間中、私はずっと死にたかった。ずっと肌が荒れていて、体重が激増し、病気になって激痩せした。
契約社員にならないかと言われたとき、じわじわと死んでいく自分を感じた。私は、会社をやめた次の日から、今の会社に契約で入って、やっぱりそこそこ長くいる。
今の会社の大好きな先輩は、代々続くお金持ちの娘で、一人じゃ食い潰せないほどの財産を知っているため、決して手を抜いているわけではないが金銭面でいうと片手間のように仕事をしてる。
お手伝いさんがいる家に、遺産でもらった不動産の収入。カードは自分で払っていないから、使った金額が解らないと言い、どんどん切っていく。
私はお買い物の荷物持ちにかりだされ、収入の3分の1以上するコートや靴を、骨董品を眺めるかのように見ている。
先輩は私よりひと回り年上で、私にいつも若いんだから転職しろ、と言う。
そんな時、社員登用試験の受験資格が来た。
先輩はやはり私に、転職しろ、と言う。
それをきくだびに私は、薄っぺらいのに漬物石のようにずっしりとした自分の人生を思う。
働き始めて私は自分のやりたいことにめいっぱいお金を使っている。趣味で自分を追い込んだり、今まで行けなかった所に自分で行った。それは悪くないと思ってる。思っているけど、私は決定的な動きができない。
私はもう死にたくなる職場に行きたくないし、学歴コンプレックスに殺されるように転職活動をするのは怖い。
なによりそこまで若くない。
私は私に自信がない。
何もなし得ていない人生を抱えて、呆然と立っている。
私は働かないと生きて行けない。
私は働かないと私の好きなこともできない。
何もかも失敗しても、最終的に頼る場所がある先輩の、転職斡旋は、私に無責任に届く。
そうして、私は先輩の彫刻みたいなブーツを眺めながら、自分が心の何処かで四年大を卒業した妹と文系は金にならないと私に言った両親と、大学に行きたいと言いきれなかった自分自身を恨んでいるのだと、気付く。
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