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コロナ時代・新たなる始まり 第3話「ホピ族とカカオの物語」

✴︎第1話〜6話までは2020年に書いたものを2022年に編集し直しています✴︎

ホピ族を含めプエブロインディアンと呼ばれる人々の祖先たちは、かつて大移動をしてそれぞれ現在の地にたどり着いたという歴史がある。アリゾナやニューメキシコを中心にかつて暮らしてきた遺跡が数多く残っている。中でも、北米最大で1987年に世界文化遺産にも登録された『チャコキャニオン』の中には、プエブロ・ボニートと呼ばれる最も神聖な宗教施設跡がある。

紀元850年から1150年にかけて建設されたものだ。

その遺跡から発掘された杯の破片から、チョコレートの主原料であるカカオの成分が検出されている。


ナショナルジオグラフィックでも既に数年前に紹介されたが、北米ではカカオは採れない。同様に南米のメソアメリカ(現在のメキシコからコスタリカに至る地域)遺跡ではプエブロ族が採掘したとされる北米の宝石・ターコイズが出ている。これらを踏まえると、メソアメリカの人々がチャコキャニオンにあるプエブロ・ボニートを訪れ、持ってきたカカオ豆と宝石ターコイズとを交換してきたと考えられている。

それほど、カカオ豆は貴重で高価なものだったのだ。

3年前、ワタシは久しぶりにこのニューメキシコの『チャコキャニオン』を訪れた。


その直後、ホピの友人の紹介でロイという人物と出会ったのだが、気さくな人柄で直ぐに仲良くなり、何気ない話の中の一つとして、その遺跡にも行ってきた話で盛り上がっていた。

奇跡的な偶然なのか、神様の思し召しなのか…。それはわからないが、帰りの飛行機の中で流れていた映像に、前日会ったばかりのロイが映っていたのだ。
その映像は、アメリカのドキュメンタリーテレビ番組で、ホピの長老たちがチャコキャニオンに残された遺跡の意味を検証する、という内容のものだった。

ロイは、ホピの他の長老たちと共に遺跡調査を行なった重鎮の一人だったのだ。映像には、チャコキャニオンが天体観測の場であった話や、

儀式に欠かせないチョコレート作りの話などが詳しく紹介されていた。

ワタシは飛行機の座席前のモニターを夢中で写真に写した。

ワタシの心は高鳴った。チョコレートは現代人にも愛される美味しいスイーツだが、ホピの人々にとっては神様と繋がる聖なる食べ物だったのだ…。

このことを知ってから、ワタシにとってチョコレートは特別な存在になっていた。

そしてもう一つ。かつてボリビアで極上のオーガニックハイカカオチョコレートを食べて、ワタシのチョコレート感が一変している。仕事で何度かボリビアに行っているのだが、現地在住のNorikoさんに教えてもらったチョコレートを一口食べた瞬間、視界が開くような、旅の疲れがすっかり取れたようなそんな感覚になった。

これが本物のチョコレートが持つチカラなのだということを、その時、初めて実感した。

そして、チョコレートと共に最高の珈琲豆も販売しようと思った。なぜならコロナ禍の中、ほとんど全てのことがストップする中、唯一、長年ネット販売していた『天の珈琲』と名付けたオーガニックボリビアの珈琲豆が、通常よりよく売れて、事務所存続の危機を救ってくれていたからだ。

そもそも、なぜこの珈琲豆を長年取り扱ってきたのか。

それは、私たちの事務所、オフィスTENの思いを随所に散りばめながら、お洒落で居心地の良いカフェをいつか開きたいと思い続けてきたからに他ならない。

🔴訪れた人々が、自然と笑顔になり元気になり、幸せな気持ちになってもらえるようなカフェ。
🔴時折素敵なライブが行われたり、壁面ではアート展が行われたり、スクリーンを下ろすと映像を観ることもできるカフェ。
🔴素敵な人たちが集うカフェ。
🔴ワタシが長年通い続けている天河や熊野やホピや…ここに書ききれないほどの素晴らしい場に、意識だけでもトリップしているような、そんな感覚になれるカフェ。🔴身体の細胞まで美しく健康になれるような、安心して口に入れてもらえる食材を使い、それでいてお洒落で美味しいカフェ。

そんなカフェ運営が、いよいよ実現していきそうな風が突然吹いてきているが、その話はもう少し先に書くことにして、今は話をコーヒー豆に戻そう。

十数年前、たまたまボリビアにご縁ある方が「お土産です」と言って持って来て下さったボリビアのスペシャルティ珈琲。一口飲んだ瞬間、私がいつかカフェ出だすのはこの珈琲だ❗️と思ったのだ。
それから、その珈琲豆を取り扱っているところを調べ、信頼おける焙煎士を見つけ、この一種のみではあるが、ネット上で「天の珈琲」と命名して、販売し続けている。そして販売10年目にして、ようやくボリビアの農園主の方やそのファミリーのもとを訪問することも出来、

素晴らしい考え方、健やかな笑顔、そして深い精神性に触れて、この珈琲豆の美味しい秘密がわかった気がする。

店では他にも素晴らしい珈琲豆を何種類か取り扱い、セレクトしたチョコレートと珈琲豆の専門店を開こう!と決めた。

そして、店の名前は『ハミングバード』と名付けることにした。

ハミングバードはアメリカ大陸に生息する、世界一小さな鳥である。日本には残念ながら生息していないが、和名もありハチドリと呼ばれている。

ネイティブの人々の間では、ハミングバードは幸せを運ぶ鳥として知られており、アメリカや南米に行った時には何度か目にしている。実際に、私もこの鳥を見ることが出来た日は、幸せいっぱいの気持ちになる。

そんな思いもあり、私たちの会社のロゴマークも何年か前からハミングバードにしている。

だから新たに開く店の名前は、この名前以外考えられなかった。

ワタシはその場に立ちながら次々とアイデアが湧き、ワクワクした。事務所に戻り、不動産屋さんに「ギャラリーからセレクトチョコレートと珈琲豆の店に変更したいが可能ですか?」と伝えたところ、建物のオーナーさんも快く承諾してくださった、とすぐに連絡がきた。

しかし、その日の夕方、ワタシはハタと気がついた。

あれ?言っていたギャラリーはどうしよう…。表現者たちの作品を表に出せる場を提供しようという話は、あさい享子の個展はどうなる?

普通なら、借りた場のギャラリー案はやめたのだから、更に新たな場をつくることも、とりあえずは止めるのかもしれない。でも、ワタシは言葉に出したことは、可能な限り実行したいタイプなのだ。

そんな訳でギャラリーに出来そうな場を、再度ネットで探しはじめ、それなりに良い条件の物件も見つけたが、既に夕方だったこともあり、連絡した不動産屋さんは閉まる寸前だった。

ただ「自分で外観だけでも今日、確かめに行ってみては?」ということでそのネットに上がっていた物件と、更にもう一枚。近隣に新たに出たという物件の案内もファックスで送ってもらえた。私たちは、その送られてきた物件案内を頼りに歩いてみた。最初の物件は直ぐに場所はわかった。しかし想像以上に立地も悪く、そして狭くてお世辞にも良い物件とは言えないものだった。

せっかくだからと、もう一枚送ってくれた物件も探そうとしたのだが、それがなかなか見つからず…ぐるぐる巡ることになった。何故かというと、あまりにも好立地過ぎて目の前の物件が、その物件だととても思えず、周囲の場所をウロウロ探していたのだ。

そこは、東京の人気観光地、谷中のそれも商店街のど真ん中。コロナ禍になるまでツーリストセンターをしていた場所の隣の一軒家の一階。


それも新しくて綺麗な物件だった。奇跡の様な素晴らしい立地にあり、更に家賃もその場としては考えられない手軽に借りることができる料金だ。とにかくこんな場所は二度と借りることはできない。多分迷っている合間にすぐに借り手が現れてしまうだろうと思った。

取り敢えずまずは借りて、2020年の間は、当初の予定通りギャラリーとして運営し、そのあと何をするかは後から決めたら良い。そんなアバウトな心境になっていた。

結局、こうして私たちは、あっと言う間に2つの場所と出合い、2日連続で別々の物件の契約をしていた。

…つづく







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