”死中に活を求め”J1第6節 鹿島(H)vs清水(A)マッチレビュー
鹿島 2 ー 1 清水
前節湘南戦を逆転で制しリーグ3連勝中の鹿島。消化試合数で差があるにも関わらず3位の位置につけ、スタートダッシュは完璧といったところでしょう(鹿島らしくない)。対する清水は昨季執念の残留を決めながらも、今季もまだ本調子ではなさげ。14位と降格圏も見える位置から、4試合ぶりのリーグ戦勝利を目指します。
代表ウィークが明けたことで鹿島は上田綺世、荒木遼太郎、松村優太がチームに合流。全員今節はベンチからのスタートになりました。スカッド構成で気になったのはレネ監督がアタッカーを多く揃えたこと。湘南戦で活躍を見せたアラーノの起用は予想できましたが、サブにも前線の選手盛り盛りで驚きました(笑)。絶対に勝ってやる感がすごい・・・
序盤からロングボール合戦
立ち上がりから両軍ロングボール主体で攻撃。鹿島は最前線の鈴木優磨をターゲットに、清水は右SHの片山をターゲットとして前進を狙った。どちらのチームもハイボールに対して競り勝つよりもセカンドを拾って敵陣でのプレーを続けることが主な目的だったと思われる。
地上での前進ルートとなると、清水のベンジャミン・コロリのポストプレーが光った。相手を背負って簡単には失わないボディバランスは強さを感じたし、プレスバックも厭わない姿勢はチームを勝たせようとする意志が受け取れた。コロリはアタッキングサードでの潰れ役になることも多く、特にクロスが入ってきた際には常にゴール方向へのデコイとして機能。彼に引き付けられ空いたマイナスにクロスが送られるシーンも多く、仕込み済の攻撃パターンか。とはいえそれを決めきれず、死に損ばかりのコロリとしてはフラストレーションを溜めているのも見て取れた。
ロングボールのセカンド争いから始まり、お互い即時奪回からのカウンターを狙うだけに中盤の主導権争いが激化。アラーノの自由奔放なポジショニングが清水陣内に良い意味のカオスを生み出す一方で、鹿島ボランチの背後で起点作りを狙う鈴木唯人も強か。鈴木唯人、神谷、片山とエスパルスの前線は攻撃を彩れる選手はそろっていたので、鹿島としては自陣に押し込まれる状況だけは避けたかった。中盤の主導権自体は鹿島が取れたものの、自陣に籠る清水を攻める鹿島は、その背後に広大なスペースを抱えるリスクも生じていた。
鬼プレスを剥がされピンチが続く鹿島
レネ監督はハイプレスによる即時奪回をチームに厳命しているのは間違いない。その点ではザーゴも同じだったが、その精度という点ではまだまだ改善は必要そう。16分、和泉のプレスを剥がされ、後続の常本も剥がされ、空けた大外広大なスペースへ展開されるとCBの関川が釣りだされ・・・生じさせてしまったギャップに翻弄されてしまう状況だけは陥りたくない。清水は自陣での守備に耐え、奪ったボールを広大なスペースに送り出すスタイルに活路を見出していたはずだ。23分には原がCKから決定機を迎え、これを決めてさえいれば満足の出来だっただろう。
後半も趨勢変わらず、刺さる清水のカウンター
後半開始直後、鹿島はまたもロングボールから敵陣に侵入。常本のロングボールから敵陣PA付近まで侵入し、ボールを拾った和泉が樋口に落としてクロス。アラーノが競ってこぼれたボールに詰めた優磨が得点したかに見えたが・・・VARでオフサイド判定を受けゴール取り消し。ぐぬぬ。
それでも鹿島は前半同様に攻め続け、清水が粘ってカウンターを狙う状況が続く。チャンスを決めきれずに焦れったい時間が始まりはじめたのも束の間、53分ごろにコロリとピトゥカの子競り合いから試合が不穏な空気へ。コロリのファウルを発端にピトゥカが激昂、両者にイエローカードが出た場が収められたものの、ピトゥカからすれば手を出されたのは自身であり警告に不満げ。最後は両者に笑顔が見られたものの、結果としてこの警告が後にトラブルを引き起こした。
58分には竹内が鹿島の縦パスをカットして即、左大外フリーの神谷へ展開。フィニッシュまで時間はかかったものの、簡単にゴール前まで侵入できたので手応えを感じたはずだ。直後の62分に樋口のミドルを食らったものの、清水としてはこのまま継続が無難であり、勝つために変化を求められたのは鹿島だったと思う。その変化とリスク管理を達成するためレネ・ヴァイラー監督は63分に選手交代を決断するも、そこで事件が起きた。
交代を告げられピッチを退いたピトゥカがベンチ前のボトルを蹴り上げ観客席へ。幸いけが人などはいなかったそうだが、危険な行為であり許されざるものに変わりはない。退場処分を受けベンチからも退くピトゥカの行為には心底残念であったし、試合に水を差してしまった。警告を受けていた為のリスク管理による交代だったと思うし(実際レネ監督も試合後そう話したらしい)、本人からすれば納得できない警告が理由で交代させらて我を失ってしまったか。いずれにせよ、直前まで主将の腕章を巻く者としてもあってはならない行動だったと思うし、擁護の余地はない。けが人が出なくて本当によかった。
失点により火の玉攻勢、鹿島反撃へ
ピトゥカの一件によって騒然としてしまったピッチ。正直、この時間帯から鹿島はかなり統制を欠いてしまった気がする。上田、松村を交代していれたのはいいが、その意味をピッチに落とし込めたかは微妙だ。綺世がフィニッシャーとして、優磨がそのサポートとして本来の形にはなったものの、火力向上以外に主な変化は感じず。そして耐えに耐えた清水が70分、その想いを結びつける先制点が生まれてしまった。こぼれを拾った竹内がサイドへ冷静に展開し、山原が送ったクロスがファーサイドでフリーのコロリへ。冷静に決められてしまったものの、マークを見失い背後を取られた安西もしかり、簡単にクロスを上げさせてしまった松村しかり悔しさもあった。
77分、レネ監督は更にアタッカー陣をピッチに投入(サブの顔ぶれがフラグだった?)。カイキをアラーノに代えて入れ、樋口をアンカーに据えた超攻撃的布陣を敷いていく。その直後、松村の右サイドからのクロスに優磨が合わせて同点。綺世がニアで囮になりつつ、打点の高いヘディングで制した。
イケイケムードがスタジアムに流れはじめたものの、前掛かりな鹿島にとって清水のカウンターだけはどうにかしないといけない。樋口も懸命にネガトラで走っていたが、単独では出来ることも限られる。樋口も剥がされると完全にCBが晒されるので、ディレイすらも難しいピンチにしばしば陥った。そのリスクをなんとか凌ぎ、後半ATに上田綺世が殊勲の逆転弾。右HSを根城に起点を作り続けていた優磨から贈られたクロスは見事であったし、彼のクロスをお膳立てした関川の縦パス、荒木のトラップ、松村と常本のデコイランもまた見事。即興にして最高の攻撃だったと思う。
リーグ4連勝達成
色々なことが起きた試合だったが、勝ててホッとするような内容でもあった。攻めに攻めてカウンターから失点は昨季まで幾度となく経験したことでもあったし、その苦い経験が思い起こされた。それでも、終盤の攻撃は逆転を感じさせるのに充分なほど魅力的であったし鮮烈だった。松村は相変わらずドバイ杯で更にアプデ入ったようだし。次の福岡には昨季惨敗した記憶も新しい。ヒヤヒヤする内容ではなく、手堅く勝ってほしいっす。