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”技術vs筋肉”グループF#1 クロアチアvsモロッコ マッチレビュー

Dobar dan!(ドーバルダン!) مَرحَبًا!(マルハバン!)
さて今回はカタールW杯グループF第1節、クロアチアvsモロッコのレビューを行っていきたいと思いやす。

分析試合のドラフト抽選会では無事(?)エスポワール号行きが決定しましたが、なんとか黒服たちを振り切ってレビューしていきましょう!

両軍の状態について

 まずは前回W杯準優勝のクロアチアについて!欧州予選グループHを首位通過し、3大会連続6回目の出場。首位通過とはいえ、予選序盤はなかなか成績が安定せず試行錯誤、最終節の勝利により順位逆転での首位奪取となったとのこと。
前回大会からマンジュキッチやヴルサリコらが代表から退いたものの、黄金の中盤は未だ健在(ちなみにマンジュキッチはコーチとして代表帯同中)。個人的に気になるところではFWアンテ・レビッチ(ACミラン)が現在代表から追放されており、原因はEURO 2020敗退後自身のインスタグラムで監督批判を行ったためとか。なんか・・・どこもこういうのあるんすね・・・

 対するモロッコ!アフリカ予選を7勝1分 25得点3失点と駆け抜け2大会連続6回目の出場。モロッコはなんといっても、日本でも話題になった8月の監督解任騒動!!なんと予選を指揮していたのはあのヴァイド・ハリルホジッチ!
素晴らしい成績を収めて予選を突破したものの、モロッコのスター選手であるMFハキム・シエシュ(チェルシー)、DFヌサイル・マズラウィ(バイエルン・ミュンヘン)らと戦術や起用方法で対立(ん?)。対立した選手は使わない!と明言したことで、本大会前になって協会やメディアとも対立(んん?)。一時は協会が間に立って選手らと和解し、写真がSNSに投稿されるなどあったものの結局解任となったようですネ(既視感しかない)
そんな状況で指揮を託されたのが現ワリド・レグラギ監督であり、無事シエシュとマズラウィも選出。今節の試合にも先発してますとさ。
なお、11月16日にMFアミーヌ・アリの負傷を発表、代わりにMFアナス・ザルリ(バーンリー)を追加招集しています。

クロアチア 0 ー 0 モロッコ

〇前半

 立ち上がりからクロアチアがボール保持、モロッコがそれを受けるような恰好で試合が進んでいく。モロッコはミドルプレスで中盤圧力を高め、クロアチアの誇る黄金のトライアングル(モドリッチ、ブロゾビッチ、コヴァチッチ)の封殺を図った。それによりクロアチアは最後方でのボール保持は確率できたものの、なんとかプレスを掻い潜りアタッキングサードへの侵入口を模索していく状態となった。

クロアチアの攻撃 / モロッコの守備

 モドリッチとブロゾビッチが頻繁にポジション移動を繰り返してプレスをいなし、前目にポジションを取るコヴァチッチを経由地点としてアタッキングサードへの侵入を狙う形がクロアチアにはあった。モロッコが比較的ハイラインを敷いてきたこともあって、両WGが飛び出すシーンも。CBグヴァルディオルも長距離パスを蹴っ飛ばせるだけのパワーを感じたものの、あくまでそれはオプションなのか使用は限定的。あくまで中盤経由で試合を作るんじゃ!!という意志を感じた。

DFライン付近ではボールを保持して落ち着けるものの、中盤から前線エリアにボールを差し込むとモロッコの迎撃に遭って攻勢は頓挫。特に最前線にタメを作れる選手がおらず、一度前線にボールを入れるとフィニッシュまでノンストップで持ち込む必要アリでしんどい。一度ギアを入れるとすぐには止まれず、攻勢が失敗すると最終ラインまで下げて再構築する必要が生じてしまっていた。3トップを務めたヴラシッチ、クラマリッチ、ペリシッチはいずれも機動力と技術に長けたキャラクターであり、ポストプレーは望めそうもなく…なかなかモロッコを敵陣深くまで押し込むのは苦労した印象だ。

モロッコの攻撃 / クロアチアの守備

 モロッコはというと、守備の時間が多かったためカウンターを打てそうな機会は多かった。ブファルやアマラーといった運び手も揃ってはいたが、そもそも奪う位置も深い場合が多い。モロッコの攻めが活きる局面はトランジションからというよりも、むしろクロアチア陣内深くに押し込んで包囲した状態だった。一度クロアチアを押し込んでしまえば、両SBやシエシュなど攻撃を彩れるリソースをフルBETでき得点の匂いを感じさせた。

モロッコの攻撃において中心的な役割を担うのが右サイド。独力で局面を打開できるハキミを大外レーン中心に動かしつつ、創造性豊かな左足を持つシエシュをハーフスペースに置いて攻撃を構築。とにかくハキミとシエシュの補完性は抜群。彼らを攻撃に集中できる状態に持ち込むためにもまずは、相手を押し込み、包囲状態に持ち込むまでが目下攻撃の大筋だった。

 ウナヒ、アムラバトら中盤センターがもたらすフィルターは強固。コヴァチッチですら簡単には運ばせてくれないほどの強烈なコンタクト、苦しい状況でも決して諦めないタフなメンタリティはモロッコにとって大黒柱となっていたはず。中盤を制すか、制されるかでゲームが大きく左右される状況だった。

どちらが優勢とも言えないシーソーゲーム

 17分にはペリシッチが相手のミスからボールを拾い、惜しいミドルを放つ。クロアチアとしては決してオープンな展開は望んでおらず(中盤の消耗がマッハになるため)、ボールを保持しつつ慎重な攻めが多いため決定機をなかなか作れない。対するモロッコも、相手を押し込めさえできれば自慢のパワーと右サイドで攻められるもののボールを保持できないので再現性が低い。お互いに睨み合いの時間帯が前半は多かった。前半ATには左SBソサとペリシッチでサイドを打開しクロス、中のヴラシッチが決定機を迎えるもゴールとは至らず折り返しとなった。

〇後半

モロッコ、全軍突撃
 

 クロアチアがハーフタイムで選手交代。右WGヴラシッチに代えてパシャリッチを投入した。ヴラシッチは42分ごろに接触で負傷していたようなので、その影響があったのかもしれない(プレーはしていたし、決定機もあったけれど)。

 前半との大きな違いで言えば、モロッコがより前線でのプレッシングを意識して行っていたこと。中盤底でフィルターに徹していたアムラバト然り、積極的にクロアチア中盤に対して食いついてボール奪取を狙っていく。53分にはクロアチアがCKから決定機を迎えるもモロッコがこれを凌ぐと、クロアチアは前半以上に前進の目途が立たなくなり効果的な攻撃を紡ぐことができない。

モロッコとしては、前半の戦いぶりを見るにクロアチアが前線で時間を作れないと踏んで全軍突撃を仕掛けたのではなかろうか。勿論クロアチアも一発のあるメンツが揃ってはいるものの、あくまで中盤経由での攻撃にこだわっていたのも事実。そこを潰せば戦場を握れる、そう判断したのだろう。

 後半はモロッコの時間か!?と思ったのも束の間、54分マズラウィにアクシデント。相手ゴール前まで攻め込んでチャンスを迎えるも、相手選手との接触で負傷。一度はピッチに戻ったものの、結局60分アラーとの交代を余儀なくされてしまった。サイドを攻め込んで中央で仕上げるモロッコの攻撃においては痛すぎる交代となっただろう。

それでも中盤経由にこだわるクロアチア

 明らかにモロッコはクロアチアの中盤を潰しにきたのだが、意外だったのはそれでもクロアチアは中盤3人を中心とした攻撃にこだわったこと。ボール保持の位置を下げてでもモドリッチやブロゾビッチらがボールを受け、捌き、動かしていく。モロッコは当然ハイラインを敷いているので、広大なスペースが相手陣には広がっていた。個人的にはクラマリッチ然りがモロッコCBと駆け引きしてライン裏を強襲してもよかった気はするのだけれど、クロアチアCBは蹴っ飛ばすようなことはせずとにかくCH陣にボールを繋いでいた。こだわりが本当に強い。

もしかしたら、少しでもオープンな展開には持ち込みたくなくてロングボールを避けていたのかなとも。結局中盤は79分にコヴァチッチに代えてマイェルを投入したのみで、モドリッチとブロゾビッチはフル出場している。監督の信頼感なのか、出来の差が大きすぎるゆえの継続策なのかはわからないものの、とにかく中盤3枚の消耗(走行距離)を抑えるのが必要だったんでしょうな・・・

モロッコ、終盤4-3-3シフトで再攻勢も及ばず

 お互いチャンスはあるけど決めきれない中、終盤81分にモロッコは陣形変更。FWエン=ネシリ(→FWハムダラー)、MFウナヒ(→MFサビリ)を投入して4-3-3へチェンジ。アムラバトをアンカーに据え、アマラーとサビリがインサイドハーフを務める。アムラバトはスタート位置こそアンカーなものの、積極的に迎撃に出ていくためポジションはあくまで目安程度。とにかくボールを奪ってぶん殴れ!!!

 最後まで両軍譲らずスコアレスで試合終了。モロッコとしては後半良い内容で修正できていたので勝ち切りたかった・・・。前回準優勝したクロアチアとしては最低限の結果と言えるでしょう。

第2戦へ向けて

 スコアレスドローに終わったわけだが、モロッコとしては結構手応えを感じたはず。懸念は主力マズラウィの負傷状態くらいで、アムラバトを中心とした守備組織は堅くてパワー満点。ドリブラー自体は揃っているので、奪える位置をより前に置ければ攻撃の目途も立ちそうだ。ただシエシュとハキミ含めた主力の消耗も激しいはずなので、連戦を重ねてクオリティ低下は防ぎようがない気もする。

 クロアチアはちょっと暗雲とまではいかないまでも、この試合だけを見ればさすがに前回大会ほど楽には勝てなそうだなと(ロシア大会も決して楽ではなかったが)。ただ、今回の試合で足りなかった前線の起点役を担えそうな人材がいないわけではない。
今回出番のなかったFWブディミル、ペトコビッチらはサイズも火力も申し分ない存在。途中出場したFWリヴァヤも得点感覚に優れたストライカーであり、次節この3人が先発する可能性は高そうだ。そもそもスタートからモロッコが前プレをしてくるが故の、機動力重視でクラマリッチ先発チョイスだったりして。

同組のベルギー、カナダらの試合はベルギーが1-0で勝利。ただ内容ではカナダがかなりチャンスを作っていたので、モロッコもクロアチアも油断できない2試合になりそうだ。個人的にはモロッコの躍進に期待したいものの、クロアチアもしぶとく勝ち点を拾って通過を決めそう。もしかすると、F組は大会屈指の激戦になるかも?

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