見出し画像

"粉骨砕身"J1第8節 鹿島(H)vs横浜FM(A)マッチレビュー

画像1

鹿島 0 ー 3 横浜FM

 ミッドウィーク開催の第7節福岡戦に勝利し、首位に立った鹿島アントラーズ。リーグ5連勝も達成して勢いに乗るチームだが、今節対戦するのは4位横浜F・マリノスとの上位対決。ここ数年の対決では相性が良く、昨季のホーム対戦では土居聖真のハットトリックも記憶に新しい。レネ監督はミッドウィークからメンバーを変えずに臨み、監督の中では現状ベストというスカッドなのだろう。

 対するマリノス、なんとミッドウィークのアウェイ広島戦では0-2で敗戦。来週にはACLが控えていることもあってか、今節は広島戦から8人も先発メンバーを交代。このケヴィン・マスカット監督の判断が、結果としてスコアに大きく左右したような気もする。

ロングカウンター&ハイプレスで勝負!!

 鹿島は立ち上がりから明確に狙いを見せる。お得意のロングボール前進をベースに、ボールの落としどころをターゲットではなくマリノスCBの裏に設定。セカンドを拾って攻撃!というよりも、より直線的にゴールを目指すような手段を取った。守備においては前線からハイプレスを発動してショートカウンターを目指したものの、マリノスのビルドアップにまんまとやられてしまった・・・・。

画像2

 鹿島としては非常に辛かったのが前線のプレスをうまくハメられずに突破を許し、帰陣にもエネルギーを使わなければならなかったこと。DF陣はともかく、中盤から最前線までの選手らは前半から相当な消耗を強いられてしまったと思う。それでも前半のうちは高いインテンシティを保ち、多くのチャンスも創出。それを1つでも決めていれば、試合の話は変わっていたのだが。

 マリノスも先発メンバーを大幅に入れ替えているとはいえビルドアップの質、速さ、正確さは強烈。正直、フロンターレ戦以上にビルドアップを阻めそうな感触は無かったと思う。特にボランチへのコースを消しきれず(優磨、上田のカバーシャドウはほぼ効かず)、彼ら経由で前進も許せばサイドチェンジも許してしまったので厄介極まりなかった。特に喜田の気配りというか、周囲へのサポート意識は流石というか。

 前半は両軍共に決定機を創出。チャンスの数だけで言えば鹿島も負けてはなかったはず。25分カイキのクロスバー直撃のヘディングや、41分綺世の抜け出しが決まっていれば・・・と何度も思い返す。そもそもこの試合のプラン設計としては前半からフルスロットルなので、早いうちにリードを奪っておくべきだったか。

両軍後半もほぼ同プラン

 マリノスはハーフタイムで仲川→エウベルへ交代。とはいえ両軍は大きくプランを変えたわけではなく継続路線。印象的なレベルで言えば、マリノスは後方でのビルドアップに拘らずより直線的なアタックを仕掛けてくるようになったかも。ボランチや西村を使って段階的に前進していくというよりは、前掛かりに詰めてくる鹿島の間隙を狙って縦パスを通し、手薄な鹿島後方を直接叩こうとしてきたというか。

消耗からか徐々にプランが狂う鹿島

 後半の立ち上がりこそ前半の焼き直しのようなものだったが、50分を過ぎると鹿島のハイプレスが顕著に剥がされはじめてくる。明らかに反応が遅れ、足が止まり始めてきた。48分にはアンデルソン・ロペスがポケット攻略から決定機を、52分に三竿がCKのチャンスから決定機を迎えるなど打ち合いになるかと思いきや、ここからはほぼマリノスのワンサイドゲーム化していく・・・

前線のプレスがハマらずに鹿島は自陣に押し込まれ、ボールを奪っても最前線に蹴っ飛ばしてワンチャンスを狙う。消耗を強いに強いられた優磨はへろへろで、蹴っ飛ばされたボールは悉く相手ボールに。そもそも守備でハマってない以上、攻撃の時間を増やせず守備の時間ばかりが増えるこの戦術プランは状況の悪化に拍車をかけるようなもの。体力的に低下した状態でどう戦うかまではさすがに準備できなかったか。それでも、72分にロングボールから畠中と優磨が1on1に持ち込むものの勝者は畠中。畠中(と角田)は試合通してリスク管理を完璧にこなしていたし、マンツーマンでまず負けないという最低にして最高のタスクを全うしていたと思う。

 あまりにインテンシティが低下してチームが瓦解。63分に松村・土居を、77分にはミンテ、染野を投入するも趨勢を変えるには至らず。ゲームプランとして優磨・上田の2トップありきだった気もするし、そもそも守備がハマらなすぎてどうにもならない感もあった気も。特にミンテのボランチ起用は何度目かにしてもフィットしていたとは言い難く、ポジショニングに混乱が生じていたように見えた。

多くの決定機を凌ぐも失点。反撃を窺うも・・・

 マリノスにほとんど押し込まれ続けた後半、多くのピンチをなんとか凌ぎつつも82分にCKからとうとう失点。セットプレーでチャンスを作っていた鹿島だったが、相手にセットプレーでしてやられるとは誤算だった。

85分には常本に代えて荒木を投入するという勝負手にレネ監督が出るも、右サイドを松村1人に任せる(ぶっちゃけ右SBのポジションを完全に空ける)という危険極まりない布陣を採用(Wow!!)。しかし悲しいかな荒木が生きるような攻撃手段、つまりは地上からの前進ルートはほとんど起こらずに彼の頭上をボールが行き来するばかり。マリノスにボールを回収されては、完全フリーとなったエウベルに預ける簡単なお仕事化。89分にそのエウベルのクロスから西村に追加点を奪われ、94分にはポケットを攻略したレオ・セアラのクロスを三竿がオウンゴールしてしまい0-3。惨敗となった。

王者までの道のりは険しく

 「まだまだこんなんで勝てると思うなよ」とわからせられたような気分というか、やっぱりそう簡単にはいかんよなと。結果として惨敗したものの、なりふり構わず攻めようとしたチームの姿勢には拍手を送りたい。とにかくマリノスはチームとしてのディテールがかなり洗練されているし、完成度の高さはやはりリーグ随一だなと。いやはや難しい。

フロンターレ、マリノスと王座を争うライバルクラブに負けてしまった事実は残念ではあるが、まだまだレネ・ヴァイラーの鹿島も建設途中だと改めて理解。とにかくガス欠になる前にリードして、試合をコントロールするプランだったんでしょうな。それが狂ったから、すべてが狂ったと。

今後もこの2トップの強みを生かしたロングボール戦術を磨いていくのか、仕込む時間をかけて地上進軍ルートを開拓していくのかは気になるところ。でないと荒木遼太郎は活きないと思う。確実に。試合出場の条件が、まずレネ監督がそのポジションに義務付けているタスクを果たせるかどうかが重要だのだろうし、だからこそ本職を差し置いた人選が行われているんでしょう。ミンテの起用は・・・なんでじゃろかの・・・(゜-゜)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?