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”先手必勝”J1第34節 鹿島(H)vs広島(A)マッチレビュー

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鹿島 4 - 1 広島

 前節・FC東京戦は2-1で勝利したものの、ミッドウィークに行われた天皇杯・準々決勝川崎フロンターレ戦で1-3敗戦。クラブ30周年を祝うためタイトル奪取が今季の目標だっただけに、タイトル獲得の可能性がなくなった事は非常に残念で仕方がありません。

 とはいえリーグ順位ではまだACL出場権を狙える位置にいます。来季を見据えるにはまだ早く、我々鹿島はどれだけ1試合ごとに戦っていけるかが問われることでしょう。そんな状況もあってか、相馬監督は先発GKにクゥン・スンテをチョイス。スンテのリーグ戦出場はおよそ1年ぶりくらいでしょうか...。更にベンチ外が続いていた永木も戻ってきており、頼れるベテランで難局を乗り切ろうという意図があったことでしょう。

 対するサンフレッチェ広島。順位は10位と降格もACL圏争いとも無縁の位置となりました。その為かクラブは先日、城福監督の退任を発表。リーグ戦数試合を今季残すなか、ヘッドコーチを務めていた沢田さんの監督就任となりました。今節は沢田体制の初陣。来季も続投かどうかはさておき、積み上げと改善を試合前インタビューで答えた沢田監督がどう戦ってくるか気になるところでした。

ボール保持の苦しんだ序盤の広島

 試合は望外の立ち上がりを見せた。3分、敵陣深くでロングボールのセカンドを拾った上田がエリア内に侵入。中央へ折り返したボールをカイキが押し込んで早々と先制に成功した。ほぼマイボールにしながらも、背後からのチャージで奪われてしまったDF荒木。綺世が内側からプレッシングしたことで逃げ場と選択肢を奪われてしまったのだろう。

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 出鼻を挫かれてしまった広島だが、その後のボール保持でも苦戦。3-4-2-1の陣形であまり選手の動きが乏しく、鹿島のプレスに足を取られる。前線に蹴っ飛ばしても、着弾点が読みやすい状況だったので関川・町田の跳ね返しに成功。鹿島はさほど4-4-2ブロックを崩さずにボール奪回に成功したため、奪取後も落ち着いてショートパスを繋ぎカウンタープレスに対応することができていた。

 そんな広島の苦境を打開したのが若くして背番号10番を背負う森島司。持前の機動力と技術を活かし、中盤ボランチ付近まで下りてビルドアップ参加。下りてからも幅広く動き、鹿島2トップの背後を脅かしつつ鹿島ボランチの釣り出しにも貢献。更に青山がその動きに合わせて前方に進出する流動性が生まれた事で、鹿島は中盤での主導権を徐々に喪失してしまった。森島は敵陣への前進に成功すれば、今度はアタッカー役としてスペース強襲とアイディア提供も兼任。オフザボールでも、オンザボールでも高いプレゼンスを発揮する森島は90分通して厄介極まりない存在だっと思う。少なくとも、関川は彼とのマッチアップにおける駆け引きで何度も先手を取られた。

 幸いだったのが、広島のWBを経由した場合のライン裏スルーパスをうまく処理できたこと。藤井、東からCFヴィエイラへ幾度となくスルーパスが送られたが、タイミングであったり駆け引きでの失敗からロストに繋がっていた。スルーパスまでの流れ自体は再現性高く作られていた為、広島の基本戦術のレパートリーだとは思う。流れの中におけるエゼキエウの活かし方含め、まだ手探りというか発展途上なのかもしれない。

 相手ボール時、鹿島2トップとSHはサイドに相手を追い込むと猛追したことから「蹴らせて回収」が相馬監督の基本プランだったか。それも森島が中盤に顔を出したことでバランスを崩し、中途半端化してしまった感はある。前で制限できないので高精度のタッチダウンパスを最終ラインが受けざるを得ない状況。というかやはり土居・上田の2トップで制限をかけるのは難しいと言わざるを得ないというか・・・

 28分に常本がCKのこぼれを拾ってゴラッソ一閃。SBらしからぬファーストタッチからの迷いないシュートだったので驚いたが、この追加点が本当に大きかったと思う。全体守備に一抹の不安を抱えていただけに、2点リードなら多少の不具合があろうと許容できる状況が整った。

広島の攻撃における2シャドーの重要性

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 前線守備がハマらないことで自陣守備に追いやられていく鹿島。2点リードを奪えていたことが本当に大きかったと思う。スコアレスなら間違いなく広島の攻勢に膝を屈していた前半になった気がしてならない(笑)

森島、エゼキエウがバイタルエリアとニアゾーンへの飛び出しを重ねることで相手を動かし、作った狭いスペースからゴール前で勝負するのが広島の攻め。大外WBの縦突破を塞いでくれたアラーノ、カイキ(or土居)の奮闘も大きかった。34分、ニアゾーンに青山が飛び出して折り返したボールをエゼキエウが決めて1点を返す。隙を見逃さなかった青山の慧眼は流石としか言いようがない・・・

 鹿島が2点奪いながらも、残りの時間を上手くコントロールできなかった点は明白な課題として受け止めなければならないだろう。自陣に押し込まれ、たとえ奪っても位置が低くて即カウンターは望み薄。ボランチとSHを滅茶苦茶に動かされた状態で奪っても、流石にカウンターの有効打を打つこむのは非常に難しい。

 鹿島は前線の上田に預けて起点作りを試みるも、彼のファーストタッチのズレから相手に回収される場面が多かった。上田綺世がもう1ステージ上のFWに成長する為には、やはり相手を背負った状態のプレー品質を上げる必要はありそうだ。背負った相手を気にするあまり無理な態勢でボールに触ったり、意図しない場所へボールを落としてしまうシーンが目立ってしまった。少なくとも、今の鹿島におけるFWでは求めたい資質でもある。

 1点リードで折り返そうかという前半終了間際、両軍ヒートアップして子競り合いが頻発。ポジトラ時の運び屋として機能していた安西を藤井が後ろから手をかけて引き倒したファウルを1つの切っ掛けに、両軍ボディコンタクトやファウルが増加。上田を倒した野上のファウルに対して抗議する三竿に対し、野上が手を上げて倒れたことでボルテージMAX。両軍入り乱れてあわや乱闘となった(てか乱闘してた?)。で、ここで問題が発生。野上だけでなく、過剰な抗議として関川まで警告を喰らったのである。関川なにしてんねん!!!(笑)

 関川さんあんた・・・ただでさえ森島に背後突かれて苦しんでたのに・・・・関係ないとこでイエローもらうとか・・・(笑)鹿島は安西の推進力を頼りに攻めていたので、藤井に野上と広島右サイドを守る2人に警告が出たのは相当恩恵があったのである。しかし関川が警告をくらったら怖さのが勝るじゃないのよ!!なお、56分関川は無事警告クラスのファウルをしでかし、不安げに西村主審を見つめお咎めなしにホッとしていた。いやでもぶっちゃけ退場したほうが自然だった気も・・・・?

後半も二次攻撃から追加点の鹿島

 後半開始から鹿島はまたも先手を取る。49分、敵陣PA内でこぼれ球を拾ったアラーノが美しいタッチで抜け出し(ファッ!?)折り返してカイキが本日2点目の追加弾。前半の流れを払拭する素晴らしい立ち上がりを見せた。今日のカイキも相当ハイパフォーマンスだったけれど、アラーノも見事でしたな。テクマシマシver.のアラーノだった。でも、カイキへのアシストが決まってガッツポーズしながらコケていたのを俺は見逃さなかったゾ。

またも2点差を追うことになった広島は攻勢を強める。割り切ったリトリート守備を執る鹿島は、66分に土居→荒木、カイキ→和泉を代えてエネルギー補填。69分にはその和泉を広島DF荒木隼人が自陣PAで蹴ってしまい、OFRでPKが認められて4失点目を献上してしまう。荒木遼太郎がPKを沈めてリーグ戦二桁ゴールを達成、歓喜に沸く中....荒木隼人は涙を浮かべながら塩谷司との交代を行った。

 その後広島は青山や森島、また途中交代で入ったサントスらを中心に攻めあがるも得点を奪うには至らず。試合終了となった。

次節、ACL出場権争い相手でもある浦和戦へ

 天皇杯での敗戦を引きずらず快勝できたことは幸い。次節は共にACL出場権を争う浦和であれば尚更だ。

最後に、試合終了後も涙を堪え切れない姿を見せていた荒木隼人に関して。確かに、この試合におけるパフォーマンスは良くなかった。CBとして2失点に直接かかわってしまった点、本来持ち味である安定感を失っていたことは事実だと思う。ただ、彼がこれまで素晴らしいパフォーマンスを発揮して広島の堅守を支えていたことはサンフレッチェ広島サポーターでない私でさえ知っていること。あの涙がまた彼を更なる高みに連れていくと信じているし、ゆくゆくは森島と共に広島を牽引するバンディエラにさえなれるはず。


移籍するときは、ぜひ鹿島に。

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