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”今はただ研ぎ澄ますのみ”J1第33節 鹿島(A)vs清水(H)マッチレビュー


鹿島 1 ー 0 清水

 前節より3週間が空き、リーグ戦最終盤を6位で迎えている鹿島アントラーズ。前節磐田戦では3-3ドローで終え、これで岩政体制では7試合リーグ戦勝ち星なし。勝利は8月14日福岡戦まで遡ります。負傷明けだった常本が本格的に戦列へ復帰したものの、樋口と広瀬が出場停止で欠場。この2人は岩政体制でも気を吐いていた存在だっただけに、不在の影響は大きく感じましたね。

準備期間を多く取れたことで新コーチ陣からの落とし込みにも期待したいところ。そういった意味でも、今節4-1-4-1を採用してきた岩政監督の采配には期待が高まりますね。幅広いロールで貢献してきた優磨を1トップに据えたのはタスクの整理なのか、それとも半ば強制的に動きの幅を制限して稼働時間の延長を図ったのかは気になるところです。

 対する清水エルパルスは現在残留争いの真っただ中。16位と昇格プレーオフ圏に沈む彼らは、今節敗戦を喫すると他会場の結果次第では16位以下確定と非常にタフな状況。ロスタイム弾に泣く試合が多いエルパルスですが、それだけリードを取れているチームということの裏返しでもある為油断はできません。何より、残留を懸けて戦うチームの力強さを我々は磐田戦でも身に染みて感じています。

〇前半

気合十分の清水。鹿島を押し込み攻勢へ

 立ち上がりからホームの声援を後押しに清水エスパルスが躍動。ソリッドな球際、高い集中力を保ったスライド守備をベースに鹿島の攻撃を受け止めていく。ボールへの反応が素早い反面、清水ペナルティエリア手前は空きがちだったものの、鹿島にミドルシューターがいなかったが非常に悔しい。樋口!樋口を今すぐここへ!!!(累積警告による出場停止)

 鹿島は清水陣内にまでボールを運べたらある程度落ち着いて保持できるものの、そこまで持ち込むことに課題が。優磨の1トップ+インテリオールの片方(舩橋prピトゥカ)を上げて2トップを疑似的に形成→前線プレスを狙うも不発に近く、ズルズルと押し下げられて自陣深くでの守備対応を迫られてしまった。そうなってしまうと、前線は優磨しかいないので起点を作るにはあまりにも厳しい。清水が簡単にボールを回収して二次、三次攻撃へつなげる時間帯を与えてしまったのは反省点だろう。

 13分にはホナウドの弾丸ミドルが鹿島ゴールを襲うも早川がファインセーブ。ブラインドで見えにくかったはずだが、本当に良く反応してくれた・・・ここで試合の世界線が変わった気がする。そのセーブから生じたCKからチアゴ・サンタナにドンピシャヘッドを決められるもこれもまたセーブ。早川もリーグ戦デビューから4試合連続で先発を飾っているものの未勝利。彼もまた気合は十分だったことでしょうよ。

 決定機にこそ繋げることは難しかったが、鹿島のアタッキングサードでの連動性には成長とアイディアが感じ取れた。大外で瞬間的な3on lineを作ってブロック攻略を目指したり、敵陣深くの狭いエリアでのロンドを動的に行うなど明らかにこれまでとは違ったテイストが匂う。ただ、やっぱり崩しのシークエンスで優磨が関わるor関わらないで大きくクオリティに差がでてしまうのは悩ましいところ。お膳立てと仕上げの質、どちらかを選択しなければならないジレンマは未だ続いている。

戦術兵器として申し分ない松村の成長

 公式動画でも語っていたように、松村は今季大きく飛躍を遂げるであろうと期待された選手の1人だった。チャンスを掴みかけていたときに負傷離脱を繰り返し、このシーズン終盤にまたチャンスが巡ってきている。今の鹿島では希少な単独突破を仕掛けられるアタッカーであり、カットインからバイタルエリアを強襲していくパターンも型としてハマってきた。対清水においても、カットインから相手守備ブロックをかき乱す等確かな存在感を発揮。後半にはそのスピードからラインブレイクも見せ、いよいよその才能が花開きそうな予感が漂っている。いや漂う自体は夏前くらいからあったんだけどもね。ケガがね・・・

清水が崩し切れなかったのは日差し?攻め筋ゆえ?

 こと前半においては清水の時間帯が多かった印象だったが、なんとか鹿島はスコアレスに抑えることができた。この要因としては、清水があまり鹿島CBを揺さぶるような攻めはしてこなかったことかなと。少なくとも関川とミンテが中央からサイドに引き出されたり、前後に分断されてギャップを使われるシーンはほとんどなかった。解説の佐藤さんも仰られていたが、清水の攻撃に対して前向きにプレーできていたことで、持ち前の強さを発揮できていたような印象だ。特に裏には滅法弱いんでね・・・うちのCBは・・・

25分には安西が肩の脱臼で負傷交代(和泉IN)、37分には北川が負傷交代(23分三竿との接触が原因?)と思わぬ形で交代カードも切られる。特に清水としては北川の交代は大きかったんじゃなかろうかと。彼のタスクとしては1.5列目~2列目を動き回り、崩しの過程に関わってサンタナのフィニッシュまでのお膳立てがメイン。綺世・優磨コンビで言うところの優磨ロールであり、彼の負傷は結構話を変えたんじゃなかろうか。代わりに入った乾もキャラクターは異なるし、北川に代わってタスクを任されたカルリーニョスも完全な代替案ではなさそう。

〇後半

鹿島反撃開始。キックオフから魅せる。

 準備してきましたよ!!!と言わんばかりに後半キックオフからデザインプレーを鹿島が見せる。流麗なパス交換からピトゥカを発射台に、一気に相手DFライン裏へロングパス。走りこんでいた仲間には一歩及ばず届かなかったが、まるでレアル・マドリードのような流れにワクワクしていた人はいたはず(これベネッセで観たやつだ!!的な)。決まっていれば最高にキモチヨカッタネ・・・・

前半との違いで言えば、清水の攻めを中盤で受けられるようになったこと。無理に前プレを仕掛けることもなく、中盤の数的優位を活かしてミドルゾーンでのボール回収からショートカウンターを打てる局面が増えた。ズルズルと後ろ重心になると良さが消える布陣なのは確かだったので、ここにテコ入れできたのは相当大きい。それでも不用意なロストからカウンターを受ける場面はあったので、とにかく繋ぎのミスだけは避けたいっすね。

56分に待望の先制点をCKから三竿が奪う。自らが打ったこぼれに足を伸ばすと、相手のクリアが当たってゴールイン。三竿はこの試合MOM級にパーフェクトな出来でアンカーを完遂していたので、ゴールで報われてくれて嬉しい。アウェイに駆けつけたサポ―ターにガッツポーズしているのも可愛い。いやほんとこの試合の健斗は凄かった・・・・。最終的には思惑と違った形からゴールが生まれたものの、ショートコーナーを織り交ぜるなどセットプレーの入念な準備も印象的だった鹿島。キッカー樋口の不在が確定だったからこそのアイディアだったんすかね~

気持ちが生命線の清水。しかし消耗は激しく…

 何が何でも勝ちが欲しいだけに、清水は前半からかなり高い集中力を見せていた。守備でも消耗上等で走り回っていたし、特にサイドラインを守るSB・SHの貢献度は絶大。守ったあとにはスプリントでカウンターの先陣を切るのだから流石に疲労も当たり前か。後半の時間が経つにつれ、そのエネルギーは徐々に失われつつあり、2トップが動的なタイプではないだけにチームとしての致命傷になり得るものだったと思う。であるからこそ、ゼ・リカルド監督も78分にピカチュウ&西澤を両翼SHに投入。83分には更に片山に代えて岸本を入れるなど、生命線であるサイド攻撃を最後までなんとか形に留めようとしていた。1点リードによる精神的なプレッシャーも疲労に拍車をかけたかもしれないっすね。

鹿島も運動量テコ入れして終盤まで奮闘、勝利!

 岩政監督も流れが変わり切る前に選手交代でリソースにテコ入れ。走り回っていた舩橋に代えて名古を、仲間に代えてカイキをIN。リードを守り切るために自陣へ引き籠ることもなく、あくまで野戦で決着をつけようと奮戦。70分を過ぎても優磨+IH(orSH)で清水DFラインに圧力をかけ続けるなど(優磨死んじゃう!とヒヤヒヤしていたけど)集中力も健在。絶対に勝ちたい、という意志が最後までチームを後押ししてくれたんじゃなかろうか。試合終了まで時間をうまくやりくりしつつ、待望の勝ち点3を持ち帰ることができた。

次戦、最終節ガンバ大阪戦へ

 ひっさびさの勝利に浮かれて踊り狂いたいところだが、まだシーズンは終わってねぇんすわ。最終節はホームで開幕を戦ったガンバ大阪を迎え、またもや残留争い真っただ中の相手と戦うと。ガンバは今節ジュビロ磐田と対戦、快勝した模様(そしてジュビロ磐田の降格が決定)。リーグ、天皇杯と勝利している相手だけに、ここもキッチリホームで勝ち切りたいっすね。

準備していきたことを試合でチャレンジし、失敗と成功を繰り返すことでチームの土台作りをしているのが今の岩政鹿島。勿論、得点力はまだまだ物足りないし優磨頼りなアタッキングサード、脆さがぬぐい切れない最終ラインなど課題はある。ただ、そんな中でも現実的にできることだけやるのではなく、できることを広げていくチャレンジ精神は褒め称えたいし応援のし甲斐もあるというものッス。

やっぱり三竿は中盤(それもアンカー)ならJ屈指の存在だとつくづく思うし、来季はそこで勝負させてあげられる状況になるといいなぁなんて。それとスクランブルに強い和泉スゴい。牧田依存症になっちゃうこんなの(知らない人は”牧田 依存症”で検索)。和泉としてはそりゃ先発でやりたいんだろうけど、困ったときに和泉がいると大体の問題に対して効果見込めるからなぁ・・・・「運動量が欲しい」「ドリブルで仕掛けられる人が欲しい」「欠場者の関係でユーティリティのある選手がほしい」「敵陣で時間の作れるボールキープに長けた選手が…」「イケメン要素が…」そういった症状でお悩みの場合、”和泉竜司”がきっと処方されます。次のオフには是非”ジェネリック和泉”の開発に期待して・・・


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