見出し画像

AWSENインタビュー ~カンボジアの環境に配慮したレストラン経営者 Srun~

今回のAWSENインタビューは、カンボジアに38人にいるAWSENメンバーの一人、Srunです。コロナ禍のカンボジアでも明るく奮闘している姿がみられました。また、母としての悩みも!



0.Soklim Srun プロフィール

画像3

レストランEleven One kitchenのオーナー。健康や衛生面、そして何よりも環境にフォーカスを当てたレストラン運営をしている。お持ち帰りの際も含め、プラスチックを使わず包装し、できるだけプラスチックを再利用する努力をしている。2014年に一店舗、2017年にもう一店舗BKKにオープンし、計二店舗を経営している。

1. コロナ禍のカンボジアの状況

渡邊)コロナになって、Srunのビジネスには、どんな変化があったかしら?
Srun)
私のレストランは、お客様の80%が海外からの観光客で、15%が海外に住んでいるカンボジア人です。トリップアドバイザーを含め世界中によく知られていますが、コロナが始まってから客足がストップし、収入はコロナ禍以前よりも70%も減っています。世界からの観光客は見込めないため、国内の消費者にターゲットを変えなければならない。でも、カンボジア人と西洋人の好きな味は違うから、日々、解決策を模索しています。
渡邊)カンボジアのコロナの状況は?
Srun)
コロナが始まったのは2020年の3、4月。最初はそこまで深刻ではなく、2、3ヶ月経つと街は普通に戻っていました。学校も始まっていて、国内の客に焦点を当てたサービスをしているビジネスはそのままビジネスを続けていました。コロナウイルスを忘れているかのようにも見えました。でも、観光で来る欧米の客をターゲットにしている私のレストランは違いました。第二波はブラックフライデーの後にきました。人々はモールに行ったり、ショッピングに夢中。その一ヶ月半後ぐらいには収まっていました。それほど、市内の状況に変化はなかったようだけど、私たちのビジネスはずっと苦しかった…。
 去年の11月から状況が悪化し続け、現在は全ての学校が閉まっており、店もほとんど営業を停止しています。毎日違う店でコロナ感染者が出て、店を閉めなければならなくなっています。歳をとったカンボジア人はウイルスを恐れ、子どもたちも親から外に遊びに行くのを止められるため、客が来ないので店を閉めざるを得ない状況になっています。一方、外国人は自分の身を守ことができれば、外出してもいいと思う人が多く、私たちのビジネスは第一波の時からさほど変わっていません。
渡邉)この悪化している状況でも経営している二つのレストランはオープンしているのですか?
Srun)
はい。先週、すべてのスタッフと会議をもち、彼らが恐れていることがわかりました。私も、役人が来てこのレストランのお客さんにコロナ感染者が出たと言う知らせを聞くのが怖い。また、去年から彼らに100%の給料をあげられていません。最初は75%で、状況が悪化し、50%に減り、その後少し良くなって、70〜100%となっていました。100%あげることができたのはたった一ヶ月で、その後はとても状況が悪くなり、現在ではまた50 %しかあげられていません。レストランを閉めてしまうとスタッフが困ってしまうといいます。スタッフの中には、私たちのレストランと他の仕事をかけもちしている人もいて、他の仕事で給料を得られなくなった人もいるので、閉めるよりも減給の方が良いのだといいます。たとえ状況が戻ったとしても、毎月1000〜5,6000ドルお金を失い続けることになります。
渡邉)いつ終わるか分からないからとても大変ですよね。
Srun)
スタッフも取引先もお金をあまり持ってないし、場所のレンタル料も払わないといけない…。
渡邉)今どれくらいのスタッフが働いているのですか?
Srun)
両店舗で25名ぐらいです。

画像13

2.環境への配慮型ビジネスへの変換

渡邊)なぜ環境、健康に焦点を当てたビジネスを開始しようと思いましたか?
Srun)
私は、レストランのオフィスで11年間働いていました。社長は環境をいつも気にしていて、20年前、生物分解が可能な弁当箱を彼女が使っているのをみてとても誇らしく思いました。そのレストランでしか働いた経験がないので、私が学んだことは全て彼女から。
その後、レストランを辞めて、小さい店を起業しました。最初は弁当箱を届けてくれる人や、近くのオフィスで働いている人にしか商品が売れなかったけど、徐々にお客さんが買いに来てくれるようになりました。ただ、それと同時に美味しいけど値段が高価であることを理由に、売れ行きが厳しくなってきたのです。その後レストランを始めました。そこで、多くの人々が生物分解性のランチボックスに共感してくれました。お客さんと環境について話すなど、徐々に増えてきました。お客さんが取引先を紹介してくれて、生物分解性のナイフやフォークやバッグのような環境にやさしい製品を提供してくれました。
 そうしているとき、Plastic Free Cambodiaで働いている女性に会い、彼女と一緒に研修を受け、彼女からプラスチックや環境に関することをたくさん聞くことができました。オーナーとしてビジネスをどう運営していくか決めることができたので、プラスチックを使わないようにすることにし、スタッフにもそう伝えました。どこにいくときも、自分でパッケージングしていくよう促し、それに従わない従業員から5〜10ドル罰金したりしています。スタッフは、最初はあまりありがたくは思っていなかったけれども、プラスチックが環境に及ぼす影響を研修で学んだ後は理解していました。

画像2

 去年、100%、生物分解性のパッケージングをしていたとは言えないけど、スタッフが独創的に考え、配達するときにパッションフルーツでソースをパッケージングして提供することもできるようになり、今はほぼ100%プラスチックを使っていません。プラスチックは環境に悪い。ビジネスオーナーは責任をもって社会を助けていく必要がある。人々もこの行動に感心していくと、マーケットが変わっていく。私は引き続き、この活動をしていきたいと思います。

3.カンボジアの人々の環境への変化

渡邉)2014もしくは2015年に初めてあったと思うのですが、そのとき、竹でできたストローを見せてくれましたね。日本で竹のストローを見たことがなかったので、それが私にとって初めて見た竹のストローでした。今は、世界中の人々はエコに気にかけるようになり日本の社会も変わりました。カンボジアでもエコに関して社会的な変化は見られるようになりましたか?

画像8

Srun)
2014年にビジネスを始めたとき、私たちだけが生物分解性の弁当箱を使っていました。ここ2、3年で私たちの周りで変化が見え、環境にやさしいものへの理解が深まったように思えます。研修などもあり、また、プラスチックを使わないという理由からNGOや大使館も私たちをサポートしてくれました。昔は、人々は全く知リませんでしたが、最近ではエコバッグをスーパーやレストランに持っていく人も多くなってきました。また、どこに行ったときも、水筒を持ち歩く人が多く見られるようになったかな。

画像4

渡邊)カンボジアの社会が環境に対してより意識を持つようになったのですね。Srunのレストランは、ほとんどのお客様が外国人だと言っていましたが、地方のお客様も含め、彼らの環境や健康に対する意識も変わるようになりましたか?
Srun)
カンボジアの人と外国人を同時にターゲット化するのはとても難しいです。カンボジア人にターゲットを移し替えるとすると、別の場所で始めなければならないし、テーブルや椅子一つとっても違います。エアコンもあまり気にしませんし、木の下で食事したりもします。屋台がある道は、食べ物を買う人々で埋め尽くされていることもあったり、中間層の人々は、鍋料理などを提供する店に行きます。私のレストランも中間層の人が多く来るのですが、彼らを引きつけるのはとても難しいです。カンボジア人は、そういった店に外国人が多くいれば来ないし、カンボジア人がいっぱいいるなら外国人は来ません。彼らのコミュニケーションの仕方はとても違うのです。カンボジア人は飲み屋に行くと、うるさくても平気で気にしませんが、外国人はそうではありません。

4.コロナで変わったビジネススタイル

Srun) 去年ターゲットを変えようとしたとき、とても頭が痛くなり、精神的に疲れました。どうしたらよりよくできるのか考えましたが、徐々に、自分のことを変えるのはできないと気づきました。シーフードひとつとっても、シンプルに炒めるだけの安いもの、中価格帯のもの、そして高級なものもあります。人々は私たちの提供しているものをより安いものと比べます。デリバリーサービスで商品を多く提供したときは、安く提供してみましたが、原価計算したとき利益がありませんでした。
 私たちは良い材料にこだわっています。そこを気にしないお客さんには対応できないと気づきました。なので、そのとき、私たちの料理の質を維持できるような運営をしようと思いました。利益がなければ運営できません。11月20日までは私たちのビジネスよくなっていました。ケータリングサービスや、カンボジア人客も来ていたのですが、コロナウイルスがまたやってきて、混乱しました。レストランでの利益とケータリングサービスでビジネスを賄っており、N G Oや大使館がミーティングをもつとき、私たちに食事を注文してくれましたが、感染症のせいで、彼らはミーティングを開かなくなったので、私たちのビジネスは落ち込んでいます。
渡邊)ほとんどの日本のレストランも厳しい時間を過ごしていて、テイクアウトシステムを導入する店も多くなっています。Srunのレストランも行っていると思いますが、ほかにケータリングサービスをしていますか?
Srun)
私たちはケータリングサービスをオープン当初から行ってきています。人々は私たちの質の良さをわかるようになってきて、成長してきています。今本当に人気があるのは配達サービスで、私たちの収入も大きくそこに頼っています。

画像5

渡邊)政府や財団からの援助はないのですか?
Srun)
ありません。政府は私達から税金を取らずにいていますが…
渡邊)一年間ですか?
Srun)
そうですね、税金の支払いを免除してくれています。地主が少し値引きしてくれればとても助かるのですが… 。二箇所でレストランを経営していますが、一つの場所では、地主が土地を30%オフで貸してくれています。とてもやさしいです。もう一つの場所B K Kでは、裕福な人が多いので、払う余裕がなければやめればいいと冷たいです。
渡邊)B K Kは外国人にも人気の場所ですよね?
Srun)
はい。とても土地の値段が高いです。今辞めてしまえばスタッフや取引先をサポートできないので、安くして欲しいです。一度状況がとても悪化した時、30%オフで貸してくれていましたが、その後生活がある程度戻ったら正規の値段でまた貸し始めました。また、契約期間を3年〜5年すぎると賃貸料金が5%上がってしまうので、とても大変です。他の地主も、政府があまり援助をしてくれないので状況が同じです。日本ではわかりませんが、カンボジアでは、家を買ったりするときに銀行からお金を借ります。しかし、銀行もあまり気を遣ってくれません。

画像8

今まで人々や社会を助けるため全力を尽くしてきましたが、何も見返りをもらえません。今、デリバリーサービスがとても人気で、パッケージングを環境にやさしい材料で行っているので、その会社に支払う料金を安くして欲しいとも思いますが、彼らは全く気にしません。ビジネスのことしか考えていないのです。
渡邊)日本の政府は収入が20%以上減った中小企業に対して最高20,000ドル給付してくれました。
Srum) とても助けになりますね。
渡邊)とはいっても、レストラン等はまだまだ厳しい状況が続いていますけど… カンボジアでもレストランやホテル等をはじめとした観光産業は大きな産業ですよね?日本も今年オリンピックで収容人数を大きくするための投資をするつもりでしたが、それも叶わずまだまだ大変な状況が続いています。
JICAのような援助機関からのサポートはどうですか?
Srun)
私の友人の何名かは応募したと聞きましたけど、情報はあまり伝わってきません。私みたいな状況にいる友人はたくさんいますが、そういう情報は全く入ってこないです。私は夫から少し援助を受けています。彼の収入は安定していて、私たちが他に運営しているビジネスからの投資もあるのでかろうじてレストランを運営し続けられています。今は少し良くなっているのですが、前は、地元民に料理を提供するレストランのそばを通ると、自分はなぜそういうふうにできないのだとよく思ったときがあり、とてもストレスが溜まりました。フランス大使館に出向いたり、友達やコンサルタントの人と話したりし、自分を落ち着かせました。今は、しっかり生き残って、自分たちの価値を売り続け、私たちができることをすることをしっかりやろうと思っています。

5.コロナ禍で受けた刺激

渡邊)そうですね。Srunはエコフレンドリーを目標に掲げた活発なリーダーに思えます。フランス大使館には、なぜいきましたか?
Srun)
セミナーを開き、リーダーがどうあるべきかについてや、リーダーとマネージャーの違いといったことを教えてくれました。また、女性起業家を集め、彼女らと会う機会を与えてくれました。そこに行ったとき、私以外にも似たような状況にいる人がたくさんいました。その中に、ホテルを運営している方がいて、その人の話を聞いたとき、「私はそこまで悪くないな」と思い、気分が楽になりました。問題を共有し、思っていることを話してみることはとても良いことで、危機に直面しているのは私だけではないことを知るだけでも一人じゃないと思えて、よかったです。
渡邊)それはいつでしたか?
Srun)
コロナが初めてやってきて収まった時に一回、2回目にきて収まった時に一回参加しました。ウイルス対策を行いました。もうコロナは来ないと思ってしまうぐらい普通に戻っていたので、できたのだと思います。

画像11


渡邊)今抱えている問題について聞くつもりでしたが、もうすでにいくつか話してくれましたね。人と繋がることがいいことであることや、ビジネスをやっていく上で一番重要であるものはお金であるとおっしゃっていましたが、今あなたにとってのニーズはなんですか?
Srun)
支え、助けてくれる人だと思います。ここまでどうやって生き抜いてきましたかと聞かれると、真っ先にお金と答えます。お金がなければ今までやってこられませんでした。それよりも大きなものは気持ちだと思います。去年、なぜ私にそういう困難が押し寄せてくるのかと、ほとんど死にたいと思うぐらい追い込まれていました。今レストランを閉めてしまうと、七年間続けてきたものが全てなくなってしまいます。しかし、それは自分の子どものようでそれを殺してしまうことはできません。夫が一つ閉めたらどうかと提案してきたとき、私は一つでも店を閉めるのは嫌だと拒みました。スタッフのことを考え始め、彼らに50%の給料しかあげられていないのに、彼らは全てを捧げ一日中働いています。もらっている金額に満足し、「3名のスタッフしかいなかった頃から始めたのですよ」、「あなたは大丈夫です」と言ってくれます。
たくさんの人と会い、励まされました。それはお金よりも価値があります。ネットワーキングは重要で、私の話を聞いてくれ、問題を共有できる人が大切です。先ほど言ったように今月最低でも4000ドル失いました。SHE (Support Her Enterprise)という組織がカンボジアにはあって、女性をつなげることをしています。タイで加わりました。SHEにはプログラムがあり、私のような起業家で、自分のことを知り、将来どうしたほうがいいかというようなことを学びたい人、ビジネス以外に学んだほうがいいかなど教えてくれます。毎月Zoomでのミーティングを開催しており、全てのメンバーの会話を促進してくれます。先週もミーティングがあり、私たちが抱えている問題を話し合いました。その中に、農家を助ける女性がいて、コロナ禍でマーケットを確保できない農家がいると聞きました。農家はとても低い収入しか得られておらず、彼女も毎月3、4000ドル失っていると言っていたので、一人ではないと思いました。私は他のところからの投資があるので彼女ほど酷くはないのだと気づくことができました。

画像3

渡邊) SHEにはどれくらいのメンバーがいるのですか?
Srun)
たくさんいますよ。私があなたをそこに繋げることもできますよ。そのグループに入るまでは、私は環境のことを考えている唯一の女性だと思っていました。しかし、中に入ってみると、たくさんの女性が社会のことについて考えていて、そこで私みたいな女性に会うことができます。
渡邊)全てカンボジア人なのですか?
Srun) そうです。
渡邊)                                                なるほど。他の企業家のストーリーを聞いたりしてつながることであなた自身を励ましているのですね。このインタビューも日本語と英語に書き起こされてブログの記事になるので、他の企業家を励ますことになりますね。それが、私たちがインタビューを始めた一つの理由でもあります。
Srun)
他の女性社会起業家さんも社会問題についてとても気にかけていてすごいです。


6.コロナ禍での家庭の変化

渡邊)お子さんもいらっしゃいますよね?
Srun) 3人います。
渡邊)                                  彼らは何歳ですか?そして母親業とビジネスとどのようにマネージしていますか?私も2歳の息子がいて、保育園がコロナで閉鎖してしまったりしているので、子どもを世話しながらビジネスやレストランのことを考えるのは女性にとって難しいと思います。
Srun)
12歳の娘がいて、6歳と10歳の息子がいます。すべて、マネージしているかといえば、嘘になります。もうティーンネイジャーになりつつあるので大人に近づいています。日本の文化についてはわからないのですが、アジアの典型的な文化では、「何をしているの?」、「それしないで!」、「それやって!」、「怠けないで!」といった注意をよくします。また、私はビジネスのオーナーでもあるので、怠けてしまうとあまり良くない将来を迎えてしまいます。うまくやらないといけませんが、彼女はそうはいきません。12歳なので良く喧嘩するし、私がして欲しいといったことをしてくれないです。彼女のせいでよく泣いたりもします。ビジネスと同時に彼女のことも同時に考えるのはとても大変です。彼女との会話に時間を費やしますが怒鳴ることはできません。そうしても理解してくれないからです。私の世代では、公立学校ではとても厳しく、私たちの親が言ったことは必ずやらなければならなりませんでした。しかし、私は彼らをインターナショナルスクールに通わせており、文化もとても異なっていて、彼らはたくさんのことをできてしまうので、私たちが言うことはあまり意味がない、もしくは間違っていると感じてしまうのかもしれません。
今は、他のスタッフがやってくれるおかげで、ビジネスでの負担が減っているので良くなっています。彼らと会うのは1週間に1、2回ぐらいで、ほとんどの時間は子どもたちと過ごしています。しかし携帯電話があり、SNSに没頭してしまったりしてしまうので実質的にはあまり一緒に時間を過ごせていません。ビジネスオーナーとしてSNSは欠かせず、中毒性もあるので、彼らの時間とSNSに費やす時間のバランスを取るのがとても難しいです。娘との時間を費やすことが必要と気づきよく会話をしますが、ケンカがとても多いです。「いい親になるためには」と言った本を読みましたが、その本通りにはうまくいきませんでした。「それしないで!」といったようなことは嫌われる原因になるため、してはいけないと本には書かれていました。それに従い、彼女に好きなことをさせるためにここ数日間彼女と話していません。これについて彼女と話すべきかどうかわかりません。「それやらないで!」や「あまり携帯電話を使わないで!」と言ったとき、彼女は不機嫌なので、何を言ったらいいのかわからないですが、母であるので無視はできないので困っています。手でナイフを握り自殺したいと言ってきたりして、今の10代の子どもとの接し方はとても難しいです。
渡邊)彼女はあなたがビジネスのオーナーであることは知っているのですよね?
Srun)
はい。ビジネスオーナーとして要求が高くなってしまっているのかもしれませんね。また、私はレストランで子育てプログラムを始めようかなと思っています。カンボジアの文化では、家の問題を共有するのは簡単ではありません。いいものは見せたがりますが悪いものはそうではありません。子どもたちを喜ばせたくて、彼らに好きなことをさせるのは子育てではないと思っています。母としての毎日はとても大変です。また息子が2人いて、他の人から10代の男の子はその女の子よりひどいと聞きました。

画像10

渡邊)                                  レストランを運営しながら三人の子どもを育てるのはとても尊敬します。私は子どもが1人しかいませんがとても大変です。
Srun)
息子が1人なら、自由時間の全てを彼との時間に当てることができますが、3人ならそうはいきません。自由時間を平等に分配しなければなりませんが、バランスを取ることは不可能です。一番下の子と過ごす時間が多くなったり、一番上の子と過ごす時間が多くなったりします。毎日彼らは喧嘩するので、大きな問題です。スタッフの管理はそこまで難しくないですが、子どもはそうではありません。スタッフとは違って、子どもは喧嘩する権限があるのでとても難しいです。ビジネスのネットワークは多く存在しますが、人々は家族の問題のような私的な事柄について話そうとしません。私も子どもや夫の話はあまりしません。私の友人たちは夫があまり協力的でないと言ったりもするので、たくさんの問題やプレッシャーを抱えているのだと思います。もし家庭で起きている問題を共有することができれば、女性はより幸せになると思います。しかしビジネスでは、どう成功したのか、なぜ停滞しているのか、というようなことしか話の話題になりません。ときどき、他の家族の良さに嫉妬してしまいます。しかし、それはおそらく、表面的な良さで、どの女性も家庭に問題を抱えていると思います。ビジネスのようにそういった問題を話そうとはしません。
渡邊)                                                                       それはよくわかります。女性にとって家族や子どもにとってのことはビジネスと全く変わりありません。家庭で問題があると、ビジネスにも響きます。アジアの人々は特に、私的なことを話しませんよね。
Srun)
全く話しません。私の仲のいい友達でさえ、良いことしか共有してくれません。家庭の悪いことを話してくれなければ、その問題がより悪化し、もっと憂うつになってしまうかもしれません。私はそういう話をすることも好きです。そうすることによって、地位の高い人でもそういう問題を抱えていると知ってもらい、全てがいつも良いわけではないということを認識させることができます。なので、人々は、良いことだけでなく、悪いことも話せるようになるべきです。私の抱える問題は娘絡みが多く、そしてまもなくその問題が息子に移ると思います。YouTubeやFacebookでよく情報を見ますが、多くの人々は、日本の教育はとても優れているといいます。カンボジアでは、親はソーシャルメディアに没頭し、子どもにも携帯電話を使うことを許しています。彼らはそれが子どもに何をもたらすのかを理解していません。一人のスタッフが親としてソーシャルメディアをあまりわかっておらず、最終的にその子が彼氏とどこかに行ってしまったということもありました。たくさんの人はとても似ていて、テクノロジーのせいで、とてもおかしくなっています。オンラインラーニングでも彼らはじっとして勉強することができません。携帯電話ひとつでも大変ですが、私のように、3人も子どもがいれば、彼らが何をしているかを把握するのは到底できません。とても危ないです。
渡邊)日本でも同じ問題が起こっています。10代の子ども達はスマートフォンを持っていて、知らない人と繋がることができてしまいます。ときどき、不運な事故に巻き込まれることもあるぐらいです。子どもや青年たちがどうスマートフォンと向き合っていくべきか考えるのはとても難しいことであると思います。
Srun) 最近ではYouTuberのようなインフルエンサーがいて、彼らは教育のために何か良いことをするべきなのに、そうは行きません。学校に行くことは馬鹿馬鹿しいと考える人もいるので、今の若い世代は、テクノロジーによって悪い影響を受けていると思います。

7. Srunへの質問

渡邊)なるほど。他のメンバーに質問をさせてもらってもいいですか?
Srun) はい、大丈夫です。
渡口)おもしろい話をしてくださってありがとうございます。カンボジアのビジネスに関しての基本的な質問なのですが、カンボジア人のビジネスパーソンとそれ以外のビジネスパーソンの違いは何だと思いますか?
Srun)
あなたも知っている通り、各国はそれぞれの文化があります。カンボジアの女性企業家は大企業ではなく、ほとんど中小企業で活躍しています。女性としてたくさんのやるべきことがあります。一般の専業主婦はそうではないのですが、ある場所のオーナーや管理者は、ビジネスでも、家庭内でも責任が問われます。決定権も男性の方がよりもっているので、女性がビジネスを始めようとしても、完全なサポートを得られません。他の国々がどうかはわかりませんが、アジアの国はそうだと思います。
渡邊)渡口さんの質問に追加して聞きたいのですが、あなたの夫や家族はあなたのビジネスに協力的でしたか?
Srun)
私はラッキーだったといえると思います。私がレストランを始める前に、夫とクリーニングのビジネスを開始させました。2年が経つとそのビジネスはとてもよくなっていました。そこで私は、私もレストランを経営できると思いました。レストランを始めたとき、夫は協力的でした。彼は私に、「長く働いているし、いろいろなことを知っているのだからなぜ始めないの?クリーニング会社を設立したときは何もなかったけど、今はしっかり経営できているから、なぜ恐れているかわからないよ」と言ってくれました。最初から今まで、彼は私をずっと支えてきてくれています。二店舗目をオープンしたときも、毎月お金を失い続ける私に、「ビジネスで失っているお金は、ギャンブルで失うお金よりは良い」と言ってくれています。財産やビジネスもあり、失敗したら一つの資産を売ればいいから恐れる必要はないと教えてくれました。なので、彼は私に強さを与えてくれた人です。ビジネスのことを共有し合う友達の一人は、彼女の夫からサポートを得られていないようです。ビジネスをやっていますが、あまり収入が得られないので、その夫は彼女が他のビジネスをするならサポートすると言っているそうです。しかし、彼女は今やっているビジネスは貧しい人々を助けられるので、そういう仕事が好きだといいます。また、ローン申請する際には、夫の同意が必要で、それがなければ承認してくれません。それもまた女性にとっての困難であります。

画像9

渡邊)妻がビジネスを始めるとき、銀行は夫がサインするのを要求するのですか?
Srun) はい。
渡邊)それは驚きです。
Srun)先ほども言った SHEはプログラムを提供していて、そのプログラムでは、メンバーに機械を買うのに必要なお金を貸してくれたりします。しかしそれはビジネスを運営する資金ではありません。工場に機械を導入するとき、その支援を得ることができます。
黒崎)とても興味深いお話ありがとうございました。私的な質問なのですが、コロナ禍ではモチベーションの維持がとても重要なものになると思っていて、あなたにとって、次のステップへのいくためのポジティブな考えを持ち続けるモチベーションはなんですか?
Srun)
最初は、私はビジネスが好きだとは思いませんでした。エコフレンドリーなものを提供しながら人々に承認し、支援してもらうことで、それが誇りになりました。ビジネスはお金に限ったものではありません。コロナ禍の前は50名のスタッフを抱え、環境に良いものを売ることで彼らに影響を与え始め、理解し、今では家に帰っても話してくれるそうです。自分の企業理念や目標を設定し、プラスチックは使ってはいけないと理解させ、情熱を持ってやり続け、それが影響を与えているのがわかります。それが私のモチベーションになっています。情熱をもたずにお金にしか眼がいかないのであれば、おそらくそのビジネスに価値を見出せないと思います。たくさんの外国人客が私のレストランを訪れると、私のことを誇りに思うと言ってくれます。「レストランは小さいが、あなたがやっていることは社会にとてもいい影響を与える」といったことを聞き、自分のことを誇りに思い、今の状況のようなことが起こっただけで諦められないです。最初は3名で始めたビジネスでお金を失うなか、人員を50名まで伸ばすことができ、利益を得られるようになりました。多くの人に知ってもらっているので、こんなところで諦められるわけがなく、やめてしまえば将来何もできなってしまうと思います。辞めるのではなく、地方の人々に商品を買ってもらうために、商品の販売促進や、新しい商品の提供、ケータリングや配達など、あらゆる策を講じています。今辞めてしまえば、私の知っている人に対してとても恥ずかしく思うと思いますし、マーケットも知らずに0からビジネスを始めることができたのに、マーケットを知りながら0からビジネスを始められないわけがありません。今ではお客さんもいて、支援もあるのでそれが強みになっています。また、私をここまで強く居続けさせてくれた要因はスタッフです。彼らが私を支えてくれなければ、もうすでに辞めていたと思います。50%給料をカットしたのにも関わらず、彼らはフルタイムで働き、ビジネスを続けるために一日12時間以上も働いたりしています。彼らはこのビジネスがオープン当社から好きで、レストランを閉めてしまえば、将来私のことを信じてくれないでしょう。それゆえに、私は今までレストランを閉めずに続けています。

画像10

渡邊)あなたのスタッフはあなたのことをとても信頼しているのでしょうね。
Srun) 私たちのロイヤルカスタマーと会話したりすることもあるのですが、その時も「他の店はもう閉めたりしているのにあなたのレストランはまだ営業を続けているから頑張って!今生き残れば、将来失敗することはなくなりますよ」そういったことを聞くと励ましになります。

渡邊)最後に、日本や英語を読むことのできる人々に何かメッセージをお願いできますか。
Srun) 最初に、あなたは一人ではないということを伝えたいです。他にも似たような問題に直面している人がいっぱいいます。また、お金のことばかり気にしない方がよいと思います。何をしたいのか、将来何を助けることができるのかを気にかけてほしいです。あなたが死んだ後、彼らにあなたの何について話してほしいかを考え、社会に何かしてあげてほしいです。次の世代によいメッセージを残せるビジネスをし、あなたが死んだ後に誇れる人になってほしいです。
渡邊)時間をとってくださってありがとうございました。5、6年前に会ってそれ以降会えなかったので、今日オンラインで話せてよかったです。記事を楽しみにしてくださいね。

画像12

記事執筆:渡口翔平、曽根原千夏
インタビュー・編集:渡邉さやか
写真:Eleven One Kitchen提供のものに加えて、FacebookでシェアOKになっているものから引用させて頂いています。なお、Facebookの引用元については状況を鑑みて、詳細は掲載しないこととしました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?