見出し画像

Nameless future

白夜港を終えて

2019年12月28日、令和元年最後の旅が終わった。この港に立ち寄れて本当によかったと思う。三年間ともに作品をつくってきた北さんとPortowal birch。三人が並んでいる姿は、おだやかな光そのもので。光を浴びて、涙が滲んだ。あの場所にprayを捧げる北さんの言葉と音の誠実さは、言葉や音の形状を超えた先にある何かに手を触れていた。真心の鼓動を聴いたような気がする。

 白夜港の本番を見ていた時、初めての経験をした。

「人は死ぬ時、自然に還る」なんて言うけれど、僕はそれを身を以て体感したような気がする。ある種の臨死体験。でも、恐ろしいものではなく、優しい気持ち包まれていた。「自分が消えるから死は怖い」という考えだったのだが、消えるのではなく、同化していくんだと思った。言葉では形容できない程の大きなものと一緒になり、自然に還る。

あの時のことを思い出すと、数日たった今でも、心が軽くなる。常に自分より大きなものが傍にいると考えると背筋が伸びる。どんなに人間社会で生きていても、自分もまた自然の一部であること。自然に還る前に、もっと自分の中に恵みを蓄えていきたいな。栄養のない身体で最後を迎えるなんて美しくないもの。

信頼できる仲間たちと過ごしたあの夜を忘れないように。前を見つめていくね。

今年の総括

 今年は『Lagos』で始まって『白夜港』にたどり着いた。思えば、闇の中にずっといた気がする。闇は何も否定しない。はじまりの色。何も見えないほうが、よく見えることを知った。目に見えるようなものは、人の判断を固定しかねない。思考を停止させてはいけない。鈍感であってはいけない。そんなものは自分の憧れた世界じゃない。もっともっと、超えるようなものを作りたいんだと強く意識したのは今年だった。

殻を破りたくて踠いていた。今までやってきた事、積み重ね来てたものから少しはみ出した。

Lagos vol.1『ハイドアウト・オアシス』

Reading Story『Stray Sheep Pradise』〜EGO/IDO〜

『Stray Sheep Paradise:em』

fragment edge No.9『禽獣のクルパ -Avalon-』

Potowal birch と fragment edge『白夜港』

数はあまり多くなかったけど、 それでも、僕にとっては貴重な時間だった事は言うまでもない。

誰かに言われた「また淡乃くんは傷ついたんだね」って言葉。頭を離れなかった。自分のしていることは間違っているんだろうか。何度も何度も考えた。考えても仕方ないくらい考えた。書き留めても仕方ないのに、行き場のない感情をまとめたメモは、ひとつの芝居分くらい膨らんだ。傷口がキリキリと開いていく様を他人事のように対岸から眺めている冷静さと、孤独を抱きしめて慰める情念が混在して、自分の形が液状化した。

液体となった僕は、どこまでも素直になるしかないって悟ったんだ。

資本や誓約はまぼろしだから。持ち帰れない。嘘は味がしない。現世が無味乾燥な世界だとしたら、僕は水を与えられる存在になりたいな。寂しさや悲しみに寄り添いたい。猫の背中を撫でるように。

傷口を触っても痛いだけなのに、どうにもならないことに嘆く癖がついて。

どこか、言葉を書くことに怯えていた。

いまは少し、自分の言葉を取り戻した気がする。

また描いていける。まだ描いていける。

心しか愛せない。心から愛したい。その気持ちに嘘はない。

花を愛でるように、来年も物語を作っていきます。

どうぞ、よろしくね。

淡乃晶

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?