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キミに贈る朗読会『春とみどり』開幕によせて

今朝ひとりトースターでパンを焼いていたら、ふと、自分の前からもういなくなってしまった人が、フレンチトーストを作ってくれたのを思い出して。すっと涙が流れました。

その涙は単純じゃなくて。悲しみも愛しさも入り混じったもので。ただただ、心が動いてしまう瞬間でした。



今週末4月28日・29日にキミに贈る朗読会『春とみどり』が上演されます。限られた時間の中で、キャストもスタッフもギリギリまで真摯に作品と向き合ってくれて、準備を続けて参りました。稽古も終わり、これから会場での調整を経て、皆様に朗読版の『春とみどり』をお届けすることになります。

すこしばかり、個人的な想いを書かせて頂ければと思います。

本公演は、今回主催するM-SMILEさんの「キミに贈る朗読会」というシリーズで昨年2023年の春頃から1、2ヶ月に1回程度自分が脚本・演出を担当しており、そのご縁で企画をプロデューサーにご提案させていただき、関係各所の協力があって実現した公演となります。

『春とみどり』はWebコミック「COMICメテオ」(フレックスコミックス)にて2018年から2020年まで連載されていた深海紺先生による作品です。最終巻の3巻が発売されたのは2020年7月でコロナ禍の時期でした。

あれから4年。当時漂っていたムードはなくなり、マスクを外し始め、こうして大きな公演を開催することもできるようになりました。それでもあの頃の日常が帰ってきたわけではなく、月日は流れて世界は変わり。現在私たちは新しい世界の、新しい日常生きています。

コロナ禍を境目に、世界の変化のスピードが早くなった気がしていました。それは目まぐるしく、追いつくことに必死になって、すぐに変われない自分を責めたりして。その過程でできた痛みや傷を見ないフリしていたら、ふと立ち止まった時、身体中傷だらけになっていた、ということが個人的にありました。

自分と同じように無意識のうちに傷だらけになっている人、泣いている人、悲しんでいる人、無気力になっている人もたくさんいるはずで。喪失や傷、痛みに寄り添う存在・やさしさが今、必要なんじゃないかと思った時、好きだった『春とみどり』という作品を思い出しました。

深海紺先生が描くセンシティブな心の機微は、静かでやさしく浸透して、閉ざしていた部屋に心地よい風を通してくれる窓であり。「今、この瞬間に『春とみどり』の魅力をより多くの人に知って貰いたい」という気持ちが芽生えた瞬間、企画書を作り始めていました。

深海紺先生、出版の皆様には今回ご協力頂き感謝しかございません。「朗読」という「声と言葉と音」の表現によって、また新しい『春とみどり』の魅力と出会える機会を作れたら、という想いです。

2024年春。キミに贈る朗読会『春とみどり』

朗読では作品の中に流れる静けさや情緒的な部分にフォーカスし、やさしさと祈りを声と音と言葉で紡いで、東京FMホールの空間に『春とみどり』の世界を立ち上げたいと思います。

それでは皆様、会場で。春の日に。


2024年4月27日 脚本・演出:淡乃晶





会場で深海紺先生の描き下ろしグッズが買えるみたいです!!
ぜんぶ欲しい…!(みんなも買おう…!)

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