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『最果てのピロートーク』

「この前ね、告白された」

「は、誰に?」

「泰一郎くんに」

「あんにゃろ……。絶対無理に決まってるでしょ。響子と釣り合うわけないじゃん」

「OKした」

「は!?なんで?」

「だって、可哀想だったんだもん。泣きそうで、必死だったし。捨てられた子犬の目ってこういうことを言うんだろうなって」

「だめだめだめ!付き合っちゃだめ!」

「えーなんで。あたしと麻耶だって、付き合ってないでしょう?麻耶に止める権利はないよ」

「うう……」

「それに、きっと、彼にとっては最後の願いだと思ったから。『世界の終わりに好きな人に告白する』そんなロマンチックな夢、壊したくないなー」

「世界が終わっちゃうっていうのに、善業してる暇ある?」

「終わるからだよ。あたしという人間をたしかめておきたいの。人の気持ちにちゃんと同情できる女の子でしたって」

「……私の気持ちは? 響子に捨てられそうになってる私の気持ちは?」

「え、なにそれ(笑)捨ててないじゃん。今、麻耶と一緒にいるでしょー? 世界の終わりを過ごす相手に、ちゃんと麻耶を選んでるじゃん」

「じゃあ、付き合ってよ。私と。恋人って証が欲しい」

「……んー、それはねー、むずかしいかなー。あたし、付き合う人って人生で一人って決めてるから」

「なら泰一郎も無理じゃん」

「まあ、そうだね。だから、明日生きてたらデートしようねって言った」

「嘘つき」

「でも、いい嘘でしょ。彼の後悔をすこしでもなくせるもん」

「それなら、私も嘘でいいから。私と付き合ってよ」

「麻耶とはねえー。ちょっと関係を深めちゃったからねえー。嘘にしづらいから、だめ」

「なにそれ」

「麻耶は特別ってこと」

「……もういいじゃん。どうせ終わっちゃうんだよ? だったら最後に、私も響子も両思いで、幸せになって終わりたくない?」

「それは麻耶の幸せでしょう? 麻耶の視点なら、好きな人と結ばれてハッピーでした!になると思うけどさ」

「響子はならないの?こんなに身体を重ねても?」

「うん。言ったでしょう。付き合う人は一人って。あたし裏切れないんだ。あの人のこと。もう、この世にいない人だけどね。あたしだって、これから死んであっちにいくわけじゃない? で、死後の世界で再会した時に、別の恋人がいて幸せそうな顔してたら、あの人、嫌がるかなって」

「そんなことないよ。村田さんだってきっと、響子の幸せを願ってる」

「それはそう思う。だからあたし、既にね、幸せなの。あの人と一緒に生きれた、結婚できたってだけで十分幸せ。だからあとは、あの人を裏切らないで、麻耶や泰一郎くんみたいなお世話になった人に、その幸せを分けられればいいと思うの」

「村田さんと響子のお零れなんていらない。私は、私と響子の幸せが欲しい」

「んー、困ったなあ。……もし、あたしが二人いたら、麻耶と幸せになってあげるんだけどな」

「二人いたら、二人とも、私のものにするよ」

「あら欲張り」

「……もう一回戦する」

「……いいよ。好きにして。まだ、終わるまで時間あるし。たぶん」

「……響子。私と出会えてよかった?」

「うん、もちろん」

「……好きだよ。愛してる」

「うん、ありがと」

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