悲しみの共有と甘えの話
僕は兄や姉が通っていた空手の習い事について親に聞かれた時に、当時おそらく4、5歳、幼いながら「痛いのいやだ!」と反抗したそうで通わなかったのですが、
未だにこの時に通っていれば、もっともっと強い人間になれたのかなとか思います。
悲しみや苦しみを受け入れる、受け止める能力というのは個人差があります。
ちょっとのことで嫌になってしまう僕のような人間もいれば、嫌になっても圧倒的な根性を発揮する私の姉のような人間もいます。
悲しい、苦しい気持ちというのは、絶え間なく生成され、なおかつ心の中に長く居座るものです。
どうにも僕は空手とかいうのを習っておけばもっとこの気持ちたちとうまくやっていっていたのかもと、空手をやっていないことを嘆いているわけです。
この気持ちをもっとも効率的に解消するのが、「共有すること」だと思います。自分の抱える悲しさを誰かに話す、特定の人でなくてもいいから、「自分は今、こう悲しいのだ」という態度を示す。これらは悲しい気持ちの解消に最も寄与するものだと僕は思います。
しかしながら、簡単にこれは行えない。なぜならば、「共有できるかどうかわからない」という問題があるからです。
例えば、中学まで文化部だった子が高校で運動部に入ったとしましょう。その子が、練習がきついとポロッと他の部員の前でこぼしたとして、それが共感を得られるでしょうか?
共感してくれる人もいれば、当然、中学から運動部だったような人の中には「甘えんな」と言ってくるような人もいるでしょう。そしてその子は大いに傷つく、そういうこともあります。
人間は他人の感覚というものを完全に理解ができませんし、感じ取ることも不可能です。
何年も寄り添った夫婦が喧嘩するように、自分の感覚を基準に物事を考えることしか確実には行えなくて、
他人の感覚を気にして生きるならば、「悲しみの共有」なんてものはリスキーこの上なくて、大人になるにつれて身につける自己防衛の一種として伝えるのが怖くなっていくと思います。
じゃあ、共有できない悲しみを抱えたらどうすればよいのだ!というのが真っ当な疑問です。今日はここに、僕の一つの回答を用意しました。
でもその前に、あなたは「悲しみを共有できる人」でしょうか?
「悲しみの共有」が難しい話をするにあたって、自分も共有先になりうるというのを忘れてはいけません。
なぜ、先の例の子の悲しみは共有されなかったのでしょうか?
僕は「受け取り手の想像力が足りないから」だと考えました。
ここでは「想像力」という言葉を使いましたが、要するに、「相手の悲しみの経路が理解できる、または理解はできないが共感できる範疇におさめることができる能力」のことを指していて、単に「想像力」というとちょっとだけ意味にずれがあるような気もします。
ここまでの流れを考えれば、この「想像力」とかいうのは「他人の悲しみを軽くさせる力」とも言えるわけで、
僕個人としては、自分が他人にできないことを、他人に求めるのは気がひけるので、じゃあこれを伸ばすにはどうしたらええんじゃとなるわけです。
いろいろ考えました。「優しい人になる」優しい人って?優しい人ってなんで優しいのかな、なんで他人の悲しみに大丈夫だよって態度が示せるのかな等々、たくさん考えた結果、僕の出した結論は、
「自分が経験した悲しみ、またはそれに類似する他人の悲しみには、理解や承認する態度を示せる。」というものでした。
要するに、「自分が悲しんだ分、他人に悲しみを共有してもらえる人間になれる。」ということです。
ZARDが「涙の数だけ強くなれる」とか歌ってたのがどうにも使い古された常套句に感じられて受け取れなかった僕ですが、なんだかやっとその根拠に辿り着けた気がしています。
これは気休めだと言われれば、言い返しようがありません。きっとそれであなたの悲しみが軽くなるわけではないし、根本的な解決とは言えない。
ですが、あなたの悲しみは、必ずあなたの「想像力」を豊かにして、あなたに似た苦しみ、悲しみを持つ人間を救えるようになっているはずなのです。
これは、誇りに思うべき事実です。悲しむあなたは素晴らしい、そう僕には思われてなりません。
僕のひとりの最強の友人は悲しみのプロです。さまざまな悲しみを背負って、おぼつかない、今にも転んでしまいそうな足取りで毎日を生きている。しかしその人は僕に「もっといろんな人、物に甘えていい」と伝えてくれます。
「甘えるな」という世の中のさまざまに対して、「甘えていいんだよ」と言ってのける力をあなたは蓄えている。これはたくさん悲しんだ人にしかできないことです。
そう思うことで、少しでもあなたの悲しみが楽になることと、そういったお互いの悲しみが理解できる人たちと生活を共にしていきたいなと願うばかりです。
また、僕はそこそこ悲しみに自信があります。よかったら共有してくれたら嬉しいです。
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