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見えない果実(2)

果実。このシンボルをいちばん深いところまで追えば、物事の核心に迫ってしまう。
(果実についてはnoteでも過去いくつか書いているので良かったら検索してください)。

果実を貪るということのいちばん極まった風景は、人が人を喰らうということだ。これは昔から神話や民話、地域伝承や宗教儀式などでたびたびでてくる風景である。アメリカで公開されたばかりのサウンド・オブ・フリーダムという映画も、このテーマと切っても切り離せないだろう。

では、そのまったく反対の風景はどんなものだろう?

そのヒントはやはり、東洋の文化にひっそりと今も息づいているように思う。

私の大好きなお二方、養老先生と名越先生が対談しているニホンという病、やっと手に取ることができた。
お二人はいつも単独でも話がおもしろいのだが、視点に実は結構緊張感があって、それが本としてとてもおもしろいバランスになっている。

(星の視点からすると、このお二方、太陽はトラインだが月がスクエアなので、ただのなあなあの会話には絶対なりえない。そして、月の欠損的な視点から読み解くと、名越先生(たぶんおうし座月)が、月を反転させるとさそり座になるわけなんだけど、養老先生はまさに太陽がさそり座なので、この組み合わせによるスパークは、宇宙的な意味でとてもバランスが取れるのは当然、な組み合わせすぎる。そして月の欠損という意味では、名越先生が心の世界をお仕事のメインに据えてらっしゃるあたりが、完全に対岸の蠍座に軸があり、おうし座に乗っ取られていないところが、おそらく生きていることに嘘がない充実感につながっているのだろうと思う)。

ネタバレは避けておきたいのだが、帯に「読んでも治りませんが、大量のヒントはあります」と書かれているように、お二方の豊かな体験と、それも裏打ちされた、決して机上の空論になりえない知恵の片鱗がたくさん散らばっている。私がこのお二人の考え方が好きなのは、人工世界の限界を知り、自然への畏怖、を持っているところ。なおかつ、ヒッピー的に社会から降りてしまっていないところがいい。

素敵かつスリリングな対談よりちょこっとだけ引用。

ーまさに内発的な動きが必要だということですね。

養老 組織に勤めているストレスみたいなものをね、自分のエネルギーに変えることができればいいんですよね。こんな不合理な、コンチクショウと思っているのを相手のせいにしないで、自分が頑張れるように変えていくことですね。そうすれば全然違った展開になるはずです。

名越 そのストレスのエネルギーって、今は計測できないのですが、実は途方もない甚大なものだと思うんです。だって毎日、瞬間瞬間に蓄積されているものでしょう。これが転換するとそれはすごい。
組織が変わらないから俺はダメなんだとか、不幸だと思わないことですね。そういうことを洗脳してくる人がいるんですよ。そこに同調しないことですね。

ニホンという病 養老孟司×名越康文 発行・日刊現代 発売・講談社 P148

不本意ながら、企業のスケジュールに合わせて生活する、というのを「一時的にだけ」やろうと思っていたのにもう4年以上たっていて危機感を感じている。ついつい、大きな渦に巻き込まれて依存しがちになってしまう。踏ん張って、自分の時間軸を大事にしなくちゃと気合を入れなおしている。

どなたのツイートだったかもう忘れてしまったが、アメリカ人は、個人でみているとそんなに働き者じゃないのに、組織になったらなぜかキラリと光る仕事ぶりをみせつけて、日本はそれに叶わないので負けやすい、みたいな話をみかけたことがある。

今日読んでいたホックシールドの本もそうで、目の付け所は確かに冴えている。感情労働というラベリング及び、ライフ・ワーク・バランスというまやかしを喝破するのも鋭い視点だ。だけど、その解決法となったとき、西洋文化は答えを持たない。

東洋文化はとっくの昔に、その答えを暮らしで体現していた。だけど、現代はその文化を、どちらかというと恥ずかしくみすぼらしく価値がないものと教育によって思い込まされ、誰も見向きもしなくなってしまった。

日本とアメリカが決定的に違うのは、風土だと思う。(そういう意味で、ヨーロッパも森が深いので、日本と似ている面も多い)。自然の多いところで暮らすと、勝手に自然から語りかけてくるなにか、が体にしみこんでくる。

山に暮らしていた時のその体感がずっと恋しかったのだが、引っ越したことでまた、自然につながれる日々に戻れて、ほっとしている。
都会の風景は、一見派手で刺激的だが、すぐ見飽きる。都会は実は単調で退屈。
対して自然は毎日、何度繰り返しても、飽きない。いつも同じなようで違っている。

そういう精妙さに目を凝らし、耳を傾ける。速度を落とすようで、実は内的には高速になっている。そういう時間の使い方のシフトって、本質的に幸せな事だと思っている。

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